
『麻雀放浪記』(1984年 公開)
● 監督 和田誠
● 脚本 和田誠/澤井信一郎
● 原作 阿佐田哲也
○ 出演 真田弘之/大竹しのぶ/加賀まりこ/鹿賀丈史/高品格 他
今年は映画 『麻雀放浪記』 の公開から30年だそうです。 先日6月21日に、池袋の新文芸坐にてその公開30年の記念と、監督である和田誠氏の 『和田誠シネマ画集』の刊行を記念しての上映が行われました。 何度観ても、やはり面白い映画です。上映後には舞台上で、和田誠氏と映画評論家の白井佳夫氏とのトークショーも行われ、興味深い話を聞くこともできました。
この映画は、イラストレーターである和田誠氏の、記念すべき監督第1作目の作品です。1作目でありながら完成度が高いのは、氏がイラストレーターであり、映画を作るさいの絵コンテをきちんと描ける能力が備わっていたことと、そこいらの映画マニアが太刀打ちできないほどの映画狂であったことがあげられると思います。 細部まで丁寧に作られた、とてもよく出来た映画であるとあらためて思いました。
ストーリーを簡単に・・・

舞台は敗戦直後の東京上野あたり。17歳の少年・坊や哲(真田弘之)が、勤労動員時に初めてバクチを教えてもらったという上州虎(名古屋章)と再会するところからドラマは始まる。 その虎に連れられて入ったバラック造りの賭場で、ドサ健(鹿賀丈史)と言う、すでに上野では名の通ったバクチ打ちから指南を受け、勝金を収めることに。
そのドサ健に憧れにも似た感情を持った哲は、オックス・クラブという米兵相手の秘密クラブにふたりで乗り込むも、ドサ健の裏切りにあいプロのギャンブラーの非情さを知ることにもなる。負け金が払えず米兵に殴り倒された哲を介抱してくれたのが、クラブの雇われママ(加賀まりこ)であった。ママのもとで、プロとして生きていくためのイカサマ技まで身に付けた哲ではあったが、ある日バクチのすべてを知り尽くしたような老雀士・出目徳(高品格)と出会うことに。
出目徳とコンビを組んだ哲は、「二の二の天和」 というイカサマ技を仕込まれ、ふたりで東京の雀荘を荒らしまわり、いよいよ上野のカリスマ雀士・ドサ健の営む麻雀倶楽部へと乗り込む。コンビでイカサマ技を駆使したふたりは、店の権利証まで奪うほどの勝ちを収めるのであったが・・・

「オイ やん吉! あんた音楽バカではあるらしいが麻雀できるんか?」。 そんな声が聞こえてきそうですが、一応出来ます。大学時の必修科目でしたからね (*゚ー゚)ゞ。 メンツが足りない時の "要員" みたいなもんで、カモられることが多かったのですが。 でもこの映画は麻雀のルールがわからなくても楽しめる映画であることは保証します。 面白いです。
まず、すべての役者がいい! 坊や哲(真田弘之)、ドサ健(鹿賀丈史)、出目徳(高品格)、上州虎(名古屋章)、女衒の達(加藤健一)、オックス・クラブのママ(加賀まりこ)、まゆみ(大竹しのぶ)・・・。 阿佐田哲也氏の原作にある個性的なキャクターたちを、娯楽映画のキャラクターとして見事に演じていると思います。
この映画は主人公である坊や哲の、ギャンブラーとして、人間としての成長を描いた青春記でもありますが、すべてのキャストが個性豊かで、特に出目徳とドサ健などは凄い存在感です。 実際ドサ健を演じた鹿賀丈史さんは日本アカデミー賞の助演男優賞を受賞し、高品さんに至っては、その年の映画賞の助演男優賞を総ナメにしてしまいました。

眼光鋭くも非情で冷徹なギャンブラーを演じた鹿賀氏は、目で演じたと言えるほどにその目には狂気が宿っているようにも見えます。 高品氏はテレビ・ドラマでは渋い脇役がほとんどでしたが、その演技の集大成と言えるぐらいの、老ギャンブラーの人生そのものを感じさせてくれる演技です。
この日のトークショーでも、和田監督は高品格さんのことを多く語っていました。 体力的な問題もあって、初め高品さんの配役に関しては制作側は反対したそうですが、監督が押し通したのだそうです。 この、主役ではない2人の2度に渡る対決シーンが、この映画を重厚なものにしています。けれど重厚ではあっても、これはトークショーで白井佳夫さんが仰っていたのですが、アメリカ映画のようなカラッとしたテイストを持った映画であると。
それから、これは1984年公開であるのに白黒映画です。このあたりのことを和田監督は、「自分が影響を受けた映画は白黒で撮られた映画なので」 ということで第一作目は白黒で行ったのだそうです。 「光と影による効果を出すには、モノクロのほうが美しい」 ということも仰っていました。 かつて黒澤明監督なども同じことを言ってましたが、昔の映画監督はカラーで苦労された人も多いようです。
ところで和田誠監督は、監督デビュー以前から一流のイラストレーターとして活躍されていました。 また映画に関する文章も多く書かれていた方ですが、その著書に 『お楽しみはこれからだ』 という自身のイラスト付きの映画の名セリフを随想した本があります。昔よく読みました。パート5ぐらいまでは記憶しています。
そんな方なので、『麻雀放浪記』 でも印象に残るセリフがたくさんあります。それは直接映画を観て楽しんでもらうことを薦めますがひとつだけ。
女衒(ぜげん)という、女性を遊女屋に売ることを生業とした血も涙もないような男・女衒の達が、出目徳とドサ健の再対決を粋な計らいをもっておぜん立てする場面があって、そこでのドサ健に言うセリフ。
「あんた極道もんだけど、本物のバクチ打ちだ。本物はいいもんです」
うーん 昭和だなぁ・・・。ラストでのドサ健のセリフなんかも最高ですが、ここには書かないでおきます。
岡 晴夫 / 東京の花売り娘 (昭和21年)
明るいスイング調のこの曲が主題歌として使用されました。