NOMO!  1995 | Get Up And Go !

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より高く! より深く! けれど優雅に・・・ 冗談も好きなんですけどね (*゚.゚)ゞ





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現在では珍しい事ではなくなった日本人大リーガー。野球シーズンの始まりが近づくと思い出すのが、1995年の野茂のことです。今回は、日本人大リーガーのパイオニアとしてその道を切り開いた野球選手、野茂英雄について。

1990年、大物新人として近鉄バファローズに入団した野茂は、最初の年から投手部門のタイトルを総ナメにし、以後も近鉄のエースとして活躍を続けます。1994年、故障もあって不振の年となった野茂は、近鉄球団への不信や当時の監督との確執もあり近鉄球団を退団。そして憧れであったメジャーへの道を探ることになるのですが、これが日本球界で「契約協定違反がある」 として大きな問題となり、それに乗ったマスコミによる激しいバッシングに晒されたことをもう忘れてしまった方もいるかも知れません。妻も子もいるひとりの野球選手を、「権力」 が袋叩きにする。あれは酷い出来事でした。

当時の記事には「球界永久追放」 などと言う見出しもありましたが、そこは流石にマスコミ。野茂がアメリカで活躍し始めると手の平返しで「日本の誇り」 と称賛し、恥知らずも極まった感がありました。都合の悪いことは無かったことにするのが、今も昔もマスコミの体質であるのは間違いないでしょう。

1995年、ロサジェルス・ドジャースでの野茂の活躍。これは単に野球ファンの中だけでの話題などではなく、日本中そして全米でも沸騰し「ノモマニア」なる過熱した現象を起こすことになりましたが、それももう18年も前のことなのですね。僕は小学生の頃 地元の少年野球チームに所属し、ライパチ君(ライトで8番、へたくその代名詞)をやっていた野球少年でしたが、日本人が大リーガーをなで斬りにするなんて、星飛雄馬以来の出来事。これには痺れました。


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* トルネード投法はアメリカで無駄なく洗練されたものとなり「優雅」とも形容された



浮き上がるような伸びのある速球と鋭く落ちるフォークボール。あのバリー・ボンズでさえまったく打てず、ノイローゼ状態になったといいます。当時の大リーグ中継で忘れられないのが、ボンズをきりきり舞いさせSF・ジャイアンツを1安打完封した試合で、生中継のラジオのアナウンサーがファンと共に「野茂!野茂!」 と連呼し、職務を忘れたかのように絶叫していたことです。あの凄さを音楽の世界で例えるなら、日本人アーチストがビルボードのポップ・チャートで1位を獲得し、何週間も独走したような・・・そんな感じでしょうか。

95年のアメリカでのノモ・フィーバーのピークは、7月にテキサス州で行われたオール・スター・ゲームでした。前半戦を2つの完封を含む6勝1敗の好成績で終えた野茂はオールスター・ゲームのメンバーに選出され、さらに先発投手の大役を任されました。このときの場面は一生忘れられないものです。

力と力の対決に勝って見事に大役を果たした野茂は、ベンチでメジャーの仲間たちに笑顔とハイタッチで迎えられます。日本での四面楚歌の苦しい状況の中、野球が好きだという気持ちと己の力を信じて渡ったアメリカ。ベンチの中での同僚のキッチャー、マイク・ピアザとの抱擁を見た瞬間、「野茂、良かったな」 と目頭が熱くなってしまいました。


アメリカのファンはなぜノモに熱狂したのか。もちろん投手として凄かったからであり、またあのトルネードと言われる独特の投法の魅力もその一因にあったのでしょう。僕が印象に残っているは、当時新聞に載っていたチームメートの言葉です。「彼は私たちにアメリカン・ドリームを思い起こさせる。ノモは何もかも捨ててこの国に渡ってきた。この国をつくりあげた人たちと同じように」。

実際、野茂は日本でのスター選手としての地位を捨てて、メジャーでは最低年俸からスタートしたのです。アメリカ人は、こういったチャレンジ精神には拍手をおくります。








佐野元春 / WILD HEARTS - 冒険者たち -
野茂が近鉄時代から、コンサートに行くほど佐野元春のファンであったことはよく知られています。佐野も渡米時、野茂を球場に訪ねたことがあるそうです。タイプが違うように思えるふたりですが、共通点もあります。自分の仕事に対してとてもピュアであるという点。そして後続への道を切り開いたという点 です。
野茂出演のTV-CMでは、野茂自らの希望で佐野の 「経験の唄」 が使われましたが、野茂はメジャーでの入場曲として 「WILD HEARTS」 を使用していたこともあります。寡黙な野茂と簡潔で独特な表現をする佐野。ふたりの会話は想像しにくいのですが、互いにとっては心の奥底でつながるソウル・メイトのような存在なのかも知れません。