Get Up And Go !

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音楽を中心に、映画、文芸、スポーツ など・・・。

より高く! より深く! けれど優雅に・・・ 冗談も好きなんですけどね (*゚.゚)ゞ







アニタ 反逆の女神
(原題:Catching Fire : The Story Of Anita Pallenberg)(2024 / アメリカ)

● 監督:アレクシス・ブルーム / スヴェトラーナ・ジル
〇 アニタ・パレンバーグ / キース・リチャーズ / ブライアン・ジョーンズ / ミック・ジャガー / マリアンヌ・フェイスフル / マーロン・リチャーズ / アンジェラ・リチャーズ / ケイト・モス / スカーレット・ヨハンソン
etc.

映画
ローリング・ストーンズのミューズとして知られるアニタ・パレンバーグの激しい生き様を描いたドキュメンタリー映画です。メンバーや関係者たちの証言に加え、アニタが残した回顧録を、アニタの言葉としてスカーレット・ヨハンソンが読み上げる形で構成されています。

アニタとキースの間に生まれた2人の子供、現在のマーロン・リチャーズとアンジェラ・リチャーズも出演。マーロンは、製作総指揮としても名を連ねています。




カチンコ(ネタバレ注意)
先日、新宿の K's cinema にて観てきました。とても興味深く面白い映画でした。映画で語られたこと、語られなかったことも含めて、アニタ・パレンバーグについてを大雑把に記事にしてみました。

「ミューズ」というのは、ギリシャ神話に登場する文芸・学術・音楽をつかさどる女神のこと。映画のコピーには「ローリング・ストーンズの女」とありますが、ストーンズにとってはそんな俗っぽい言い方を超えた存在であったことがわかります。

モデルとしてヨーロッパで活動していたアニタが、ストーンズの世界に足を踏み入れたきっかけは、ブライアン・ジョーンズと恋仲になったことから。ストーンズのメンバーの中では誰よりも美しく知的であったことが、彼女がブライアンに魅かれた理由です。当時の2人の写真を見ると、「ロンドンで最も美しいカップル」と言われていたことがよくわかります。雰囲気も容姿も似ていたことから、双子のようだとも言われていたそうです。アニタ・パレンバーグはファッション面でブライアン・ジョーンズに影響を与え、そのスタイルはストーンズの悪魔的なイメージにもつながっていくこととなります。





ストーンズの中で最も才能があると思われていたブライアンが、曲を書く能力に欠けていたことが、バンドの中で疎外されていった大きな要因だといわれています。その疎外感はドラッグの過剰摂取、さらにアニタへの暴力へと発展しやがて二人は破局。そこに現れたのが、彼女にずっと思いを寄せていたキース・リチャーズというわけです。

自由奔放で反体制的、ファッション・センスにも優れたアニタは、キース・リチャーズにも大きな影響を与えます。多言語を操るアニタは知的な魅力にも溢れ、同じ時期に映画で共演したミック・ジャガーとも関係を持っています。つまりはストーンズの創造力の源泉になっていったということです。女たちの群がる狂乱のストーンズ・ワールドの中にあって、そこに呑まれることのない強さを持ち、むしろメンバーたちに影響を与え続けたのがアニタ・パレンバーグと言う名のミューズです。







ストーンズのメンバーたちの中では、ミック・ジャガーとビル・ワイマンは性豪として知られていますが、意外なのはキース・リチャーズが女性に関しては一途で純粋であったということです。アニタは、キースの手には負えないほどに自由でロックな女性だったんですね。キースとの12年に及ぶ事実婚の後、ふたりは破局に至っています。

しかしながら、彼女の人生には第二幕があります。80年代、ドラッグ中毒から立ち直った彼女は、デザイナーとして蘇っています。ここがアニタ・パレンバーグという女性の凄いところです。映画の中では、ファッションモデルのケイト・モスが、アニタへの憧れと尊敬の気持ちを語っています。

貴重なアーカイブ映像とエピソードで構成されたこの映画は、ストーンズファンには必見の作品。激動の時代を生きたひとりの女性の物語としてもとても興味深い内容です。薦めます。

アニタ・パレンバーグは2017年、波乱に満ちた人生の幕を閉じています。73歳。




Gimme Shelter (1969)
ベトナム戦争を背景にした不穏な雰囲気を持ったこの曲が、当時のキースのアニタへの思いも反映した曲であるとのこと。







Kate Moss & Anita Pallenberg