新しく不定期連載として「訪問介護を考える」というシリーズを始めようと思います。
今日はその第一回目として「ヘルパーさん不足」について考えてみようと思います。
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ヘルパーさんがいない
訪問介護を語るとき、この言葉を聞かないことはありません。
しかし意外に思われるかもしれませんが、運営者側の実感としてヘルパーさんが少ないという印象はあまりありません。
確かに人手に困らないということはないのですが、それはどの業界でも同じだと思います。
それよりも一番大きいのは「アンマッチ」という思いです。
仕事と働き手の求めていることのギャップと言いましょうか。
例えば、たまに来る仕事で「週一回1時間の生活援助」という物があります。
これを時給1600円で募集したとしても、どんなに急いでも前後30分は移動や準備にかかりますので、引き受けるヘルパーさんとしては2時間で1600円、実質時給800円という計算になります。
今やコンビニやスーパーでも昼時給1200、深夜1500円なんて募集が少なくないこの東京で、その仕事を受けてくれるヘルパーさんがどれほどいるでしょうか。
そのようなプランを組む方は、生活観察などなんらかの意味を持たせてこのような援助形態にしたのでしょうが、そこに働き手の都合は一切考えられていないと感じます。
今やどんな業界でも労働者不足です。
その貴重な労働者にこの介護業界を選んでもらい、さらに長く働いてもらうためには、ヘルパーさんがこの業界で働きたいと思ってもらえる条件を、私たちが積極的に満たしていく必要があります。
しかし悲しいかな他の業界では決してみられない、大の大人相手に「1時間だけのアルバイト」を平気で募集するのが、この訪問介護業界なのです。
また、長い時間で募集しても、ヘルパーさんが見つからないという話も聞きます。
しかしよくよく聞いてみると、さんざんヘルパーさんを首にした挙句についに見つからなくなったという場合がほとんどで、最初から全く見つからないという話は聞いたことがありません。
もし長時間でも最初から全く見つからないとなると、その地域は介護崩壊していることになりますが、そういう地区が出たという話は、少なくとも近隣では聞いたことがありません。
ということはつまり、事業所もヘルパーさんもその仕事を選んで断っているということになります。
その理由は様々だと思いますが、この場合一言でいえば
「労働環境の悪い所を避けている」
と考えられます。
これは「雇用の安定性がない所」と、言えるかもしれません。
しかしこれは労働者なら当然の選択だと言えます。
だれも今日腰を痛める可能性の高い所、今日いきなり首になるかもしれない所を進んで選ぶ労働者はいないでしょう。皆快適に安心して働きたいのです。
これらが「訪問介護のヘルパーさん不足」の実態だと感じます。
ではこのようなアンマッチはどうすれば解決するでしょうか。
これは単純に「その仕事をしたい」と思ってもらえるようにするしかない、ということになります。
ヘルパーさんは他の仕事も選べますが、介護を必要としている方はヘルパーさんに頼るしかありません。つまり、労働環境をより魅力的にし、より優れた人が沢山ヘルパーになれば、その恩恵はダイレクトに介護を受ける人が享受することになります。
では具体的な案はどういうものが考えられるでしょうか。
例えば1時間の家事援助を2時間にしたり、身体介護を付けたりして、その仕事の報酬が「生活の糧」として機能すると、ヘルパーさんに思ってもらえるようにすることが大切だと思います。
先の話でいうと、週1回1時間、実質時給800円の仕事では
「これを週何件受ければ自分の生活の糧になるかな、5件かな、10件かな、いや、それだと生活の糧になる前に移動が多すぎて大変だし雨の日は危険だから、近所のスーパーのレジ打ちを時給1200円で5時間やったほうがマシだな」
となるのではないでしょうか。
このように、私たちが労働者を奪い合っている他業種のリアルなイメージを持ち、それらに競い負けない条件にすることが必要だと思います。
また長時間でもヘルパーさんが見つからない場合は、介護を必要とする方がご自身の理想とする生活を優先するがあまり、ヘルパーさんの能力や処遇に対して現実離れした要求となっている可能性があります。
いくら「自分の要求は正しい、ヘルパーがダメなんだ」と言ったところで、現状のヘルパー不足からくる生活面、精神面の質の低下問題には、なんの解決にもなりません。
現在いる人的資源でどうやって自分の生活を組み立てるか、安定した介護生活はその現実をいかに早く受け入れるかにかかっていると感じます。
しかし言ってみればその「妥協」が、ヘルパーさんの雇用の安定につながり、その良い評判が新しいより良い人材の呼び水となり、その恩恵は必ず自分に返って来るのです。