こんにちはカネシゲです。
前回は「インクルージョン」として、主に障害児教育の問題点と、その改善の提案をさせていただきました。
今回はその続きとしまして、大人社会のインクルージョンである「障害者雇用」について考えてみたいと思います。
1996年まで存在した優生保護法を筆頭に、障害者の社会参加を拒む非人道的な政策の反省から、障害者を積極的に社会に組み込んでいく「インクルージョン」と「ノーマライゼーション」という思想が広がってきました。
その一つとして障害者雇用があるのですが、それを罰則付きで制定した国自体が雇用者数を水増ししていたことから、その制度に根本的な問題がある事が示唆されました。
障害者雇用水増し問題https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E9%9B%87%E7%94%A8%E6%B0%B4%E5%A2%97%E3%81%97%E5%95%8F%E9%A1%8C
実はこのことが公になる前から、障害者雇用には問題があると言われていました。
それは企業に障害者雇用を強制した為に、軽度障害者の取り合いになっていたということです。
その結果、障害者雇用は不正や重度障害者排除の温床となり、差別解消どころか差別を助長するという事態になってしまいました。
<放り出された障害者 大量解雇の現場から>(1)給付金の規制、引き金に
https://job.chunichi.co.jp/news/detail.php?nid=3255&ts=1536853899
このような事態になった背景は、普通小学校のインクルージョン同様、問題の本質を改善せずに、「差別」という言葉の表面を無理に取り繕おうとした結果だと言わざるを得ません。
では、どうすればこのような事態にならずに済むでしょうか。
障害者全雇用ルール
結論から申し上げますと、
全ての障害者を無条件で雇用する
ということではないでしょうか。
それは義務教育のように、毎年就業年齢になった障害者を公的機関は勿論、一定規模以上の企業で分担して希望者全員を無条件で雇用するのです。
名付けて「障害者全雇用ルール」
作業所のように障害者自体の労働での収益性は問わず、勤務内容も勤務場所も自由。
ただ一つある条件は、障害者と健常者が
共同で「何かのために何かをやる」
だけ
勿論その会社の通常の仕事してもらってもかまいませんが、私たちのようにバリアフリーのためのアイデアを考えていくのでもよいですし、町のゴミ拾いなどのボランティア活動でもいいし、一緒に散歩して街のバリアを探すだけでもいい。
そこは自分たちで自由に考えてもらう。
しかし、必ずそれがどこかの誰かの貢献になることが必要です。
それを障害者と健常者が一緒になって考える。
これが私たちの考える「大人達のインクルージョン」の解答です。
無条件の理由
そもそも何のためのインクルージョンで、何のためのノーマライゼーションなのでしょうか。
それは人間の価値を能力ではなく「命」そのものに置いた結果だということです。
しかしそれを促進させるための施策で能力を問えば問うほど、本来の理念から離れていってしまいます。
そんな本末転倒な状態となったのは、何よりも国の態度が原因だといえます。
国は「能力」に重きを置くのか、「命」に重きを置くのか、はっきりしてくれということです。
どうしても一定の「能力」を条件とするなら、もうインクルージョンとか、ノーマライゼーションとか、カッコいいことは一切言わないでいただきたいのです。
「日本は能力に全振りした差別的な政策でやっていく。障害者だって例外じゃない」
と言い切ってほしい。
そのほうが少なくとも判りやすさはあります。
それを子供達には
どんな状態でも大切な命です。
差別はやめましょう。
インクルージョンです。
文句を言わず受け入れましょう。
と言っておいて、自分達はズルをしてごまかして排除して、能力主義の差別主義。
これでは、子供は混乱して大人を信用せず自殺率が上がってしょうがありません。
日本の子供の自殺、過去最多
https://www.cnn.co.jp/world/35178087.html
そんな自分たちの身勝手なダブルスタンダードで子供たちを混乱させている状況を一刻も早く終わらせるためにも、大人たちは
「障害者雇用に能力は一切問わない」
と言い切る勇気が必要です。
そうすると、国も企業もズルをする必要もない。
子供達に変な言い訳をする必要もない。
すると子供達もインクルージョンを自然に体現できる。
すると必然的に目標も成就する。
世界に対してもインクルージョンNo1の国として売りになる。
世界中からリスペクト!
もしかしたら初の国としてのノーベル平和賞を受賞できるかも?
と、もうメリットしかないのです。
「脱生産性、脱競争」時代の到来
SDGsを持ち出すまでもなく、世界はより優しい形に変化しようとしています。
それは誰のためでもなく「自分たちのため」なのです。
「奢れる者久しからず」
すべての人が必ず加齢とともにその能力を失っていきます。
であるなら、短い人生、競い合うのではなく、誰しもがどんな状態になったとしても、誰からも排除されることのない優しい世界を作ったほうが良いと思うのです。
そうすることによって、子供たちも自分の未来に安心して活き活きと成長できるのだと思います。
原資
企業に無条件に障害者を雇えといっても実効性がなければ意味がありません。
たとえば給料。
企業としてもなんの仕事もしない従業員に対して給料を払うのは容易ではないでしょう。
しかしそれは、現在国が福祉作業所や各種障害者施設に支払っているお金を、代わりに障害者雇用を引き受けた企業に分配するというのはどうでしょうか。
ですので、税金の行き先がNPOや社会福祉法人などから一般企業に代わるだけで、社会の総負担額は変わらないという目論見です。
その一方、障害者も障害者福祉施設という社会から隔離された場所ではなく、一般社会に溶け込めるので、これこそが真のインクルージョンといえるのではないでしょうか。
具体的なメリット
とはいっても、やるほうにも具体的なメリットがある事を示したほうが、その大転換を受け入れられやすくなると思いますので、様々考えられるメリットから一部挙げてみたいと思います。
・まずはこの大転換の法律を作る日本の政治家の方へのアピールとして
「国のブランド力アップ」
を挙げさせていただきます。
日本は障害者差別どころかジェンダーギャップも大きく、世界経済フォーラムの調査では、G7で最下位なのはもちろん、世界153ヶ国中120位でした。
https://sustainablejapan.jp/2021/03/31/global-gender-gap-report-2021/60498
日本で暮らす男としてはあまりピンとこない数字ですが、イギリス議会の映像なんか見ると女性議員の数に驚くことがありますので、日本はかなりギャップがある国だと認めざるを得ないと感じます。
しかしどの国も決定的な解決を見いだせていない障害者雇用に、日本が「全雇用」という回答を示し実践していくことで、国民全体の意識が変わり、成熟した平等意識からジェンダーギャップに対しても違和感が出て、早々に解消できるのではないでしょうか。
そして、劇的な政策により各種差別を解消した日本は、世界から差別解消に対して世界一積極的で先進的な国として認知され、国際的な場面で発言力が高まると思うのです。
・二番目には協力者となっていただく企業の方に対するアピールとして
「会社の総合力アップ」
を挙げさせていただきます。
現在、すべての企業に持続可能な業態への変化が求められています。
環境を犠牲にし、従業員を犠牲にし、顧客を犠牲にする商売はもう許されません。
人類の未来を守るためには、効率一辺倒の経営を卒業する必要があるのです。
その一環として、今までの障害者雇用とは違い、通常業務が不可能と思われる重度の障害者を受け入れ共生していくことによって、健常者社員が頭で膨らませたイメージではない本当の「バリア」が分かります。
そのことを自社のサービスや商品に生かせば、的外れではない現に役立つノーマライゼーションが実現していきます。
それは企業のサービスや商品の魅力アップに直結するだけでなく、SDGsの「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という誓いを必然的に達成することができます。
・最後に障害を持つ仲間たちへ
「精神的安定」
を挙げさせていただきます。
障害者全雇用となれば、我々今まで訴えてきた
「俺たちを受け入れろ!俺たちを差別するな!俺たちは被害者だ!」
と言うことが出来なくなり、自分を取り巻く様々なことを冷静に見ることが出来るのではないでしょうか。
そうしたら、被害妄想を被害妄想だと認識できるようになり、無駄に自分の足を引っ張り続ける劣等感も薄れ、安定的な精神状態で日々過ごすことが出来るのではないでしょうか。
そうなるとそうなったで、今度は私たちの勇気が必要になります。
社会や人々の中に飛び込む勇気です。
しかし、その勇気は次世代の障害者の道を大きく切り開いていくと思うのです。
とはいってみたものの、私も一障害者としてそんな状況に不安がないわけではありません。
次回は私の障害者全雇用に対しての不安と、その理由についてお話ししたいと思います。