こんにちはカネシゲです。

今回作画を担当してくれるⅠさんが、自分が書いたキャラクターがどうしても昭和の香りが残り今っぽくないということで、絵が得意なⅠさんの娘さんにキャラクターを考えてもらうことになりました。試しに書いてもらったのが上の絵です。

さすがに中学生だけあって、今っぽいですね。
なので、改めて娘さんにすべてのキャラクターを作画してもらい、Ⅰさんにはそのキャラクターを使って本編を作画してもらうことになりました。


さて、この連載も7回目となり、そろそろ「これで絵本をスタートさせる」という第一話を決めていきたいと思っています。


そこでまず何よりも大切なのは、絵本を通して障害を持つ子供たちに「何を伝えたいか」ということだと思うのです。


楽しい物語というのは勿論ですが、それ以上に私が障害を持つ者として、子供の時に知りたかったこと、聞きたかったことを伝えたいのです。

それらは今回の企画を通してみんなで話し合い、物語の試作を続けて行くうちに、何となく見えてきました。

それは人として凸凹していることの肯定であり、
どんな状態でも必ずなにかに貢献出来るということであり、
何かに貢献するということは自分の喜びになることであり、
それには他者と協力したほうがより大きくなるということであり、
協力し合える仲間の存在は素晴らしいものだというこです。


一時代を築いた週刊少年ジャンプが

「友情、努力、勝利」

が標語だったように、この絵本プロジェクトは

「自己肯定・貢献・協力・友情」

ということを標語にしたいとおもいます。


それを踏まえたうえで、第一話試作をNさんに考えてもらいました。

 

ちなみにチーム名はまだ決まっていないので仮に付けています。

 

それではどうぞ。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆

海や山があるすてきな街の片隅にちいさな施設があります。

そこには5人のしょうがいをもった子供たちがなかよくくらしていました。

みんなはそれぞれニックネームで呼び合っています。

身体に麻痺があり車イスの男の子の名前は

亀だ(かめだ) やすたか

亀を意味するトータスくん


生まれつき耳のきこえない女の子の名前は

鷲お(わしお) りな

鷲を意味するイーグルちゃん

生まれつき目の見えない女の子は

水の(みずの) ちはる

プールが大好きなのでドルフィンちゃん(イルカ)


多動傾向のある男の子は

大神(おおがみ) まこと

狼を意味するウルフくん

難病でストレッチャーに乗って呼吸器をつけている男の子は

白馬(はくば) たんざぶろう

想像上の馬であるユニコーンくん


朝起きて朝ごはんをたべて、機能回復訓練をして、

(朝ご飯と訓練の絵)

お昼をたべて

(お昼の絵)

機能回復訓練をして晩ごはんをたべて

(晩ごはんの絵)

自由時間があって、ベッドに入っておやすみ

(おやすみの絵)

そんな毎日を過ごしていました。


ある日の朝、みんなは所長や職員さん達と朝ご飯を食べていました。

ご飯を食べながら所長はいいました。

「みんな、今日は朝ごはんを食べ終わったら訓練だからね。」

トータスは不満そうです。

「所長、なんで訓練なんてつらいことをしなきゃいけないんですか?ぼくは身体がうごかないんだから、無理して動かす必要なんてないんじゃないですか。もし将来、立って歩けるというのだったら頑張りますけど。」

所長はいいます。

「いい質問だねトータス君。なんで訓練をしなきゃいけないのか。これはだれでもぶつかる疑問だとおもう。努力する理由がないと頑張れないよね。」

「一言でいえば人生をいまより楽しくするための訓練なんだ。そうすると今までとは違う世界が見えてくる。」

「ただ、どうするかは君達の自由なんだよ。訓練をしなくても幸せに暮らせる。頑張る必要はないんだよ。ただ・・・」

所長は真面目な顔で話をつづけます。

「君達が厳しい訓練を続けてきたのには理由があるんだ。実は他の施設ではこんな厳しい訓練はしていない。他の子達は毎日自由に好きな事をしてくらしてそれで終わりなんだ。君達は選ばれた人間なんだよ。」

その時、職員さんが色とりどりのツナギのスーツを持って入ってきました。所長はそのスーツをみんなにみせると言いました。

「訓練をしている君達は、これを着る事によってスーパーヒーローになれる。遠くのモノが見えたり聞えたり、車を持ち上げるような凄い力をだせたり、飛んだりもできる。念力でモノを動かせるようになることができるぞ。」

トータス君は言いました。

「僕たちがスーパーヒーローになってどうするんですか?それは博士や職員さんがやったらいいんじゃないですか?なんで障碍者の僕らがやる必要があるんでしょうか?僕らには無理ですよ。」

所長はスーツをもったまま、みんなにむかっていいます。

「このスーツは心と身体が連動することによって力が出る。選ばれた人間である君達しか能力が発揮できないんだ。なんども実験を繰り返したが、我々が着たとしてもなんの能力もでない、ただの服でしかないんだよ。」

所長はさらにつづけます。

「君達はスーパーヒーローになるべくして集められた選ばれし人間なんだ。その力で世の中を救えるのは君達しかいない!」

ドルフィンちゃんは不満げな声で所長に言いました。

「そんなにスゴイものがあるなら、私たちが障碍者として暮らしていかなくてもいいんじゃないですか?私は世の中を助けることなんかじゃなくて、まず私たちを普通に動けるようにしてほしいです。それなら障碍で苦しむことはなくなり、普通の人達と同じようにくらせます。所長もそうおもいませんか?」

所長は難しい顔をしていいました。みんなは食い入るように所長の顔をみています。

「その気持ちはわかる。君達も障碍がなければ今よりも好きなことが出来るだろうし、悲しい思いや悔しい思いもいまより感じなくてすむかもしれない。しかし、それいんはまだまだ研究の時間が必要なんだ。このスーツは発揮できるパワーが大きすぎるために、短時間しか着用できない。日常では使う事ができないんだ。」

「それでも君達がこのスーツをきて活躍することで、世の中の人達が助かる。頼みを聞いてくれ。」

ドルフィンはいいます

「それってなにかのために犠牲になれってことですよね・・・みんな、どうするの??」

みんなは顔を見合わせながら相談しました。

「ぼくらにしか出来ないことなら、やるしかないんじゃない?」
「でも大変だよ。怪我をするかもしれない。」
「今までのように暮らしてはいけないのかな。」
「でも・・・やるしかないよね!!!」
「やりましょう!なにをやればいいか教えてください!!」

みんなは興奮し顔を真っ赤にして所長を見ています。


「まずは自分のレベルを上げてほしい、自分のレベルをあげたいと思った時にするのが訓練だ。そして君達がスーパーヒーローとなる為に必要なのだ。ヒーロースーツを着る事ができるのは君達だけだが、その為には訓練が必要なんだ。」

「そして君達の名前は5人合わせて、ハートアップ バリッチャというチーム名だ。5人の力が合わさらないと持っている力は発揮できない。それは忘れないでくれ。」

みんなはいいました。

「わかりました 訓練がんばります!」

朝ごはんがおわり、それぞれの訓練の時間です。

トータス君は車イスを上手に動かす訓練をしています。

イーグルちゃんは遠くをみたり、ちかくをみたり、素早く動くものを見たりする訓練をしています。

ドルフィンちゃんは目隠しして歩く訓練。音の反射によってなにがあるかをわかるようにするトレーニングです。

ウルフ君はひたすら机の上で計算式に向かい合っています。難しい問題もスラスラとといてしまいます。

ユニコーン君は想像力を高める訓練、頭の中でいろいろなことを考えます。ユニコーン君は空想の世界で大活躍します。


訓練をみていた所長はみんなに向かって言いました。

「みんな、訓練はつねに持っている力より、ちょっと苦しいくらいの状態でやらないと意味がない!しかし、あんまり頑張らなくていいからね!頑張りすぎて訓練自体がイヤになってしまったら、ヒーローにはなれないよ。人生は長いんだ。ヒーローにゴールはないからね。人生は重き荷を背負いて長き道を行くがごとし。」

トータス

「なんですかそれは あははは」


その時、扉がバンと空いて職員さんが慌てて入ってきました。

「所長!!!列車がブレーキ故障で止れなくなっています!スゴイスピードで走っています!このままだと前の列車にぶつかてしまう!!大事故になってしまいます!!!」

所長

「なんだって!!みんな!すぐに現場に駆けつけてくれ!!みんなで協力して問題を解決してほしい。」

みんな

「わかりました!!!よしみんな変身だ!!バリッチャぁ!!チェンジ!!!!スーツ!!!」

5人はヒーロースーツをきて変身!!!

(バーン)

「ハートアップ、バリッチャ!!!心も身体もぐんぐんあがる!!!」

「すごい・・・身体が動くぞ!!!これがスーパーヒーローの力なんだ!!」

「スゴイ力を感じるね!!なんだってできそうだ!」

施設から5人は駆け出すと一斉に空を飛びました。

彼らが飛んだ後には色とりどりの飛行機雲ができ、青空に五色の線を引いています。

あっという間に走っている列車に追いつきました。

イーグル

「空も飛べてる!!音も聞える!これが鳥の気持ちなのね!!!」

トータス

「よし、僕が1人でやる!!!僕だけでもできるよ!!」

トータスは1人で列車の先頭に向かっていってしまいました。

ドルフィン

「だめだよ!所長がみんなで協力してっていったじゃない!!」

トータスが止らない列車の正面に回りこんで押し返そうとします。

「うおおおお!!!とまれー!!!!」

キキキー!レールと車輪がこすれ合って火花をあげています。それでもなかなか減速しない列車、このままだとぶつかってしまいます。

「トータス!!!」

イーグル、ドルフィン、ウルフ、ユニコーンが列車に取りつきました。力をあわせて列車を止めます。

ウルフ

「みんなで力をあわせるんだ!!アートアップ、バリッチャーパワー!!!!」

「ううーー!」
「やぁーーーー!!!」
「はぁぁぁぁ!!!!」

ぎぃぃぃぃー

あと数メートル、数センチのところで列車はとまりました。ギリギリで列車は止ったのです。一瞬の静けさの後

「うわー!!!!」

大歓声が駅のホームを包みました。

列車に乗っていた人、ホームで待っていた人、事の成り行きを見守っていた人が口々にいいます。

「ありがとう!ヒーローたち!!!!君達はヒーローだよ!!」

5人は人々に握手を求められ、拍手で迎えられ、もみくちゃにされながら思いました。

「こんなに人に感謝されたのは初めて・・・」

興奮さめやらぬまま、5人は施設に戻って所長に言いました。

「所長!!トータス君が1人で電車を押そうとして危なかったんですよ。でもギリギリで電車を止めることができました。みんなにすごく感謝されて嬉しかった!」

所長は言いました。

「トータス君、このスーツは同時に君達が力をあわせた時に本当の力がでるのだ。常に協力していかないと、スーツの力を発揮できず、君を危険にさらすことになる。そのことは覚えておいていてくれたまえ。」

トータス

「わかりました所長。僕だけがヒーローになりたかったけれど、みんなの協力が必要だったんですね。」

所長

「そうなんだ。これからも君は困っている人をたすけなければいけない。しかし1人の力では不足なんだ。みんなの力がいる。みんなで協力して問題を解決する。それが世の中の為になるんだよ。」

みんな

「わかりました!!!これからみんなで力をあわせて頑張ります!!」

「それにしても疲れましたー今日はもう晩ごはん食べて寝ていいですかー」
所長

「いいよ!みんな今日はお疲れ様!!晩ごはんはステーキだよー!!」

「やったー!!!わーい!!!」

施設の外では日が暮れようとしていました。

こうして5人のこどもたちはハートアップ バリッチャとして世の中の困りごとを助ける活動を始めたのでした。





ーーーーーーーー表には書かない裏設定ーーーーー

夜、所長室で所長と職員さんが話をしています。所長は窓を少し開けて、空気の入れ替えをすると職員さんに向かって言いました。

所長

「ふぅ・・・なにもしないほうがあの子達にとっては幸せだったかもしれないな」

職員さん

「これからの命運が彼らの肩にかかってしまうというのは、可愛そうな気がしますね。」

所長

「人間はだれも同じではないからな。能力があるものの責務だよ。凡人なら世の中に対して文句をいっていればいいだけだ。しかし上に立つものは責任を背負わなければならない。」

職員さん

「なにもあの子たちがそれを背負わなくても・・・」

所長

「だれかがやらなければならない。そのことは君もわかっているだろう。もう歯車は動き出してしまったんだ。いまさら後戻りはできんさ。スーパーヒーローの役割だよ。」

職員さん

「彼らはこれから命を削っていくことになる・・・命はいつ尽きるかわからない。残酷ですね」

所長

「能力と引き換えに命を差し出しているのだ。平等だよ。それに長く生きていれば良いというわけではないことは君も承知しているだろう。それに現実問題として彼ら以外にスーツを着れるものはいない。仕方ないさ。」

所長は窓に向かって歩いていき、窓を閉めました。

「また明日から忙しくなる。今日はもう休もう。」

閉められた窓の外には、なんとドルフィンちゃんが夜の虫の声を聞きに散歩にでていたのです。所長達の話は全部ドルフィンちゃんには聞えていました。

所長も職員さんもドルフィンちゃんがいることには気付いていませんでした。

リーン、リーン、リーン、草むらからコオロギの鳴き声が聞えてきます。

うつむいていたドルフィンちゃんは一言

「今日は疲れたなぁ・・・早く寝よう・・・」

とつぶやくと白い杖をつきながら、自分の部屋に戻っていきました。