一人暮らしをはじめてから16年が過ぎました。
時が経つのは早いと言いますがまさにその通りだと感じます。

今回はその16年の経験から、アドバイスや実際に生活して感じた事をお伝えしたいと思います。

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間取りについて


まず障碍者が1人暮らしをする上で考慮すべき点として、特に車椅子ユーザーならば備え付け家具や移動が困難な大型家具は良し悪しだと思います。

図面ではわからなかった事が実際に住んでみると色々と出てくるからです。

極端な話、図面で寝室にしようと思ってた部屋が、実際に住んでみたら寝室には不向きだった、なんてこともあり得るのです。

そのため、最初はキャスター付きの移動しやすい家具などを最小限使い、実際に生活しながら調整出来るようにしたほうが、後々の思わぬ状況に対応しやすいと思いました。
 


設備について
 

設備にも寿命があるということは案外見落としがちな点です。

奮発して投入したガス床暖房ですが、住み始めて8年ほどで壊れてしまいましたが修理費が高く壊れたままとなっていますし、給湯器も16年間で2回交換しました。

さらには、ガスコンロや換気扇も交換しましたし、水道も修理したことがあります。

その他にも生活家電もちょいちょい壊れ、特に洗濯機は毎日使うので壊れやすいと思いました。


このように住宅設備や家電の修理交換は結構な出費になりますので、最初から5年10年で買い替えることを想定して貯金などで予算を確保しておいたほうが良いと思います。

また公費で設置した福祉機器も、制度上は一生に一回の給付ということになっていますが、実際に使用していると一生どころか年数で壊れることもありますので、その都度ダメ元で行政に相談をしてみると良いと思います。

このように16年間様々な出費に追われながら何とかやってきたました。

 

障碍者の住居探し


以前も書きましたが、私が1人で住居探しをした時にはほとんど相手にされませんでしたし、親と一緒に回ってからは、親に向けて話しをする感じで私は相手にされていなかったと感じました。

コロナ渦が落ち着いたら、40歳の現在の私が1人で賃貸物件探しをしてみたら、どうような対応をされるのか試してみたい気持ちもあります。

最初に不動産屋に行ってから20年以上経っているので、対応は良く変わっていることを願いたいです。

とはいっても現実問題、貸し手側の大家さんや管理側不動産屋さんの立場になって考えると、障碍者に物件を貸すことに対して躊躇する気持ちが分らないでもありません。

「家賃をちゃんと払い続けてくれるだろうか」
「建物に影響が出るような改修をされないだろうか」
「介護器具などによって特殊な生活音を立てられないだろうか」
「退去するときにちゃんと原状回復をしてくれるだろうか」
「何かあったときに『障碍者差別だ!』と責め立てられないだろうか」

などと想像され面倒だと思われる可能性はあるなと感じます。


それは融資行う金融機関も一緒で
 

例えば、お金を借りたい人が2人いて同じ収入だった場合、一方が障碍者、一方が健常者であれば貸すほうとしたら

 

「健常者のほうが雇用が安定してそうだし、保険も確実に入れるだろう。一方、障碍者はなんとなく雇用が不安定そうだし、保険も入れるかどうか・・・」

 

と、どう考えても障碍者のほうが心証が不利になるのではないでしょうか。


このような一人暮らしを目指す障碍者にとってネガティブなことを言うのは、以前のブログの「障碍者こそ一人暮らしすべき」という主張と真逆のこと言っているように感じるかもしれません。

確かに大変なことは多いです。

しかし私はそれでも障碍者が1人暮らしをするということが、障碍者本人は勿論、社会的にも意義のあることだと信じています。

 


一人暮らしから感じた「障碍者の自由」とは


親元にいれば、安心安全で楽かもしれません。
しかしそれは『自由』だと言えるのでしょうか?

私達障碍者は、障碍が在るがゆえに、過度に心配された結果
『自らの責任による選択・決定』をなかなかさせてもらえないと感じています。

しかし私はその『自らの責任による選択・決定』を伴わない『自由』は存在しえないのではないかと思っています。

例えば動物園の動物は幸せなのでしょうか。

確かに野生の状態から比べると確実に「安心安全」で「楽」ではあるでしょう。

でもそれは自己決定がないため『自由』ではありません。

その「自由はないけど安心安全で楽な環境」という動物園のような状態は、はたして大人になった私たちにとって良い環境と言えるのでしょうか。


極論をいうならば、他の生物と同様に成人を過ぎていていつまでも親の庇護に置かれるということは人間本来の姿ではないと思うのです。

もちろん、一人暮らしをするとリスクも増えます。

ですが「人が成長する過程」を思い出していただきたいのです。

親は子が道で転んでも、一人で起き上のを見守ったり、兄妹や友達とケンカしても、当人同士がどのように対処していくか見守りますよね。

子供はそういった経験の中で大小様々な『自己責任による選択・決定』を繰り替えし、その結果に対して時には喜び、時には痛い思いをしながら成長していくのではないでしょうか。

そしてそれこそが人間らしい生き方と言えるのではないでしょうか。

 

「責任」という名の困難の先に得られるもの


私は安心安全が過剰に誇張されている今の世の中に疑問があります。

そもそも他人から与えられた安心安全なんてものは幻想だといっても過言ではないと思うのです。

その幻想に縛り付けられている状態に人間の尊厳はあるのでしょうか。


一人暮らしで覚悟をもって「責任」を受け入れ、自ら悩みながら試行錯誤した経験からのみ真の自由を得られると考えています。

そしてそれこそが新しい時代の『障碍者2.0』を実現するための鍵だと思っています。


とはいっても現実的に障碍者が一人暮らしをする為には様々な壁があります。

その点を少しでもなんとか出来れば良いと考えています。

たとえば障碍者の住宅事情について、自分の経験を活かして福祉的観点から何か具体的な事が出来たら良いなと考えています。

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この「突然障碍者になったあなたへ」シリーズは次回で最終回の予定です。

現在鋭意執筆中!