民法第8問 | LAW

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第8問 表見代理

一 小問(1)【判例:事実行為排除説で】

1 CAに対して、保証債務の履行を請求できるか。

BAの代理人として、Cと根保証契約を締結している。

しかし、Bは保証契約の締結ついて代理権をAから付与されたわけではなく、B

Aから与えられた権限は客の勧誘という事実行為であって、法律行為ではない。そこで、

事実行為を他人に代わって行う権限を与えられている者が、その範囲を超えて法律行為を行った場合、当該事実行為の授権をもって110条の基本代理権とし、同条の表権代理の成立を肯定できるか、問題となる。

 思うに、110条は「代理人」の権限外の行為について規定しており、代理とは法律行為を他人が代わって為す制度であることから、基本代理権は法律行為の受権でなければならないと考えるべきである。実質的に考えても、日常安易に多々行われる事実行為の授権が基本代理権となるとするのでは本人の静的安全があまりにも害されることになり妥当ではない。従って、事実行為の授権は基本代理権とはならないものと考える。

 これに対して、事実行為の授権は基本代理権になると解したうえで、本人の静的安全は「正当理由」の判断を合理的に行って図ればよいとする見解もあるが、「正当理由」という不明確な表見代理の要件で本人の静的安全を図るよりも、基本代理権という明確な要件で本人保護を図る方が妥当である。

 判例も、事実行為の授権は基本代理権にあたらないとしている。

 したがって、Aについて110条の表見代理の成立を肯定することはできないので、CAに対して保証債務の履行を請求できない。

二 小問(2)について 【有権代理→表見代理 判例:761条相互代理権認める、で。

             +[]部通説。110条の表見代理の成立につき、判例]

 1 EFに対してマンションの返還及び登記の抹消をすることができるか。

   EFに対して、マンションの返還及び登記の抹消請求をしうるためには、Fがマ

ンションの所有権を取得していないことが前提となる。この点、DEの代理人とし

て行為しているので、そのためには、代理行為が有効ではなく、かつ代理権踰越によ

る表見代理(110条)が成立していないことが重要である。

2 本問において、EからDへの代理権授権行為がない。それでは、法定代理権はどうか。まず、761条が相互代理権を定めたものかどうかが必要である。

   日常火事に関する法律行為から生じる権利関係を明確にすることが出来ること、および夫婦共同生活の実態に適合するから、これを肯定するべきである。

3 次に、妻の処分行為が、日常家事の範囲内か否か問題となる。

   761条は、婚姻共同体の維持をその趣旨とする。とすれば、「日常家事」に関する法律行為とは個々の夫婦が、それぞれの共同生活を営む上において通常必要な行為を言うと解する。

   そして、この具体的な範囲か否かは、個々の夫婦の社会的地位、職業、資産、収入等により個別に判断すべきである。

   また、地方において、同条は夫婦の一方と取引関係に立つ第三者の保護を目的とする規定でもあるから、さらに客観的に当該法律行為の種類、性質等も考慮して判断すべきである。

   とすれば、配偶者の固有財産の処分行為は、その性質上、夫婦が共同の生活を営む上において通常必要な行為ということは出来ず、原則として、日常の家事に関する行為とはいえない。

  [しかし、他方、761条は、日常家事債務を連帯債務とすることで、婚姻共同体の維持

ということを目的としているのであるから、配偶者の固有の財産を処分する行為であっても、それが、夫婦が共同生活を営む上において、必要不可欠な費用を捻出する目的でなされたような場合は、なお日常家事の範囲内というべきである]

※注:[ ] 部分通説。判例はその処分の目的を問わず、日常家事に入らないとする。

   

   本問において、目的はDのアイデアを事業化する資金を得る為のマンションの売買であり、夫婦の共同生活の維持のために必要不可欠な資金調達のためではないから、妻の処分行為は日常家事の範囲内とはいえないことになる。

 4 Dのマンション処分行為が日常家事といえない場合でも、Dの無権代理行為に表見代理の適用がないか。761条の日常家事代理権を基本代理権として、110条の表見代理の成立を肯定することができるか、問題となる。

   110条の要件は、①基本代理権の存在、②基本権限を踰越した事項につき代理行為がなされること、③相手方において代理権があるものと誤信し、その誤信に正当の理由があることであるが、まず、法定代理権も、110条の①基本代理権たりうるかが問題となる。

   思うに、代理権の存在を信頼したものがを保護して取引の安全を図るという同条の趣旨からすれば、任意代理と法定代理とを区別して取り扱う理由はないので、これを肯定すべきである。

 5 では、761条の日常家事代理権を基本代理権として、ただちに110条を適用することが出来るであろうか。

   思うに、代理権があると信ずべき正当の理由を相手方が有していれば、110条の表見代理が成立するとすると、夫婦別産制の建前(7621項)を崩してしまうことになり、妥当ではない。したがって、110条を適用することは出来ない。

   しかし他方、日常家事の範囲を相手方が性格に判断するのは困難であるから、相手方保護の必要性も否定できない。

   そこで、110条の趣旨を類推して、相手方において、当該行為が夫婦の日常会の範囲内に属すると信じるにつき正当の理由がある場合に限り、相手方は保護されると考えるべきである。

   これを本問にみるに、Dが特に生活費に困窮しているという事情もないのであり、マンションの売買が日常家事に入るとはいえないから、Fに正当理由は認められない。

   よって、Fは保護されず、EFに対してマンションの返還及び登記の抹消をすることができる。

                                    以上

・関連条文

(日常の家事に関する債務の連帯責任)

761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

(代理権授与の表示による表見代理)

109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(権限外の行為の表見代理)

110条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

(代理権消滅後の表見代理)

112条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

代理権授与表示における表見代理

(1)代理権授与表示における表見代理(109条)

(2)代理権踰越による表見代理(110条)

(3)代理権消滅における表見代理(112条)

(1)の成立要件

  ①現実の授権行為はないが、本人が第三者に対して、ある人を自分の代理人とする旨の表示をなすこと=代理権授与表示

  ②表示において示された、代理権の範囲内の行為を代理人がすること

  ③相手が善意・無過失であること。

(2)の成立要件

  ①基本代理権の存在。

  ②基本権限を踰越した事項につき代理行為がなされること。

  ③相手方において代理権があるものと誤信し、その誤信に正当の理由があること

(3)の成立要件

  ①代理人として行動したものが、かつて代理権をもっていたこと。

  ②その代理権の範囲内の行為をすること。

  ③相手方が、善意・無過失であること。