名作の書き出しを読む の2回目
さいつころ雲林院(うりんゐん)の菩提講(ぼだいかう)に詣でて侍りしかば、例の人よりはこよなう年老い、うたてげなる翁二人、媼(おうな)といき合いて、同じ所に居ぬめり。
大鏡 作者不詳(歴史物語 平安時代)
意味
先日、雲林院の菩提講に参詣したところ、いつも見かける語り手の老人よりも、ずっと年老いて、何とも見苦しい感じの翁が二人、老女(媼)と口論しながら、同じ場所に座っているようであった。
この場面のエピソードと役割
①枠物語の導入部
『大鏡』は、
・作者は聞き手
・雲林院で出会った非常に年老いた翁たち
・その翁たちが語る藤原氏の栄華
という枠物語の設定
(枠物語とは、導入部の物語を外枠として、その内側に複数の短い物語を埋め込んでいく入れ子構造の物語形式。この形式は、物語の登場人物が別の物語の語り手となることで、物語の中に物語が展開されるのが特徴)
②翁二人と媼とは誰か
・翁二人
→大鏡の語り手となる超高齢の老人
(190歳、180歳とも言われる。誇張された存在。)
・媼
→彼らと行動
最初は、
・口論していて
・みすぼらしく
・近寄りがたい存在
として描かれているが、やがて彼らが驚異的な記憶力を持つ「歴史の生き証人」であることが明らかになる。
③なぜ「うたてげなる(見苦しい)と描くのか
ここが「大鏡」の重要なポイント
・見た目は
→みすぼらしい、怪しげな、取るに足らない老人
→しかし中身は
→平安王朝の栄華と政治の裏側を語れる存在
つまり作者は
外見や第一印象では、人の価値は分からない
という逆転を、物語の冒頭で示した。
④雲林院菩薩講という場の意味
・菩薩講=先祖供養の仏事
・過去を偲ぶ場で、過去を語る老人に出会う
・歴史を語る物語としての『大鏡』
・無常観を背景にした
を象徴する舞台設定となっている。
まとめ
・『大鏡』の冒頭の枠物語
・語り手となる翁たちの登場場面
・見かけは卑しくとも、歴史を語る資格を持つ存在
という、非常に重要なエピソード。
「枠物語」「老人の語り」「歴史の正統性の演出」が大事なキーワード(試験に出ますよ😅)
ちなみに「大鏡」は「四鏡」のひとつ。
「四鏡」とは平安時代後期から室町時代前期にかけて成立した「鏡物」と呼ばれる4つの歴史物語、『大鏡』『今鏡』『水鏡』『増鏡』の総称。これらの作品は、高齢の語り手が昔の出来事を話す形式をとっている。
やす地蔵には難しすぎた😅
それでは、また。感謝。
