平成14年9月11日朝日新聞より抜粋
たばこを吸う人は腰痛になりやすいことが、日本大学医学部整形外科の
松崎浩巳教授による実験によって明らかになりました。
たばこの中で最も害のあるニコチンによって血流障害が起き、
椎間板が潰れやすくなるためで、臨床では喫煙が腰痛の原因になるという
データーはあったものの、実験によって証明したのは初めてといいます。
実験は、たばこを1日20本吸う人とほぼ同じ血中濃度(120ナノグラム/ml)に
なるようニコチンを生理食塩水に溶かし4週間から8週間、うさぎの体の中に
注入しました。その後解剖して椎間板を調べると、ただの生理食塩水だけを
与えていたうさぎに比べて、長くニコチンを与えたうさぎほど
椎間板の変性(性質の変化)が大きく、8週間与え続けると椎間板に亀裂が
起こったり、中が空洞になったりしたほか、バラバラになっていました。
椎間板には血管がなく、栄養分は椎間板の周囲の血管などから吸収しますが、
血管も正常の半分くらいに潰れて数が減少していました。
血管が収縮を起こして血の巡りが悪くなり、栄養が行き渡らなくなって
椎間板が変性してしまったらしいのです。
椎間板は、髄核という中央の柔らかい塊と、それを取り囲むように
線維軟骨の層が同心円状に重なり合った線維輪と呼ばれる周辺部によって
形成されています。実験によって、髄核の持つタンパク合成能力も、
線維輪のコラーゲン合成能力も約三分の一まで低下していました。
同じ軟骨でも膝の軟骨には、まったく変化が見られなかったことから、
ニコチンの影響は椎間板特有のものといいます。
椎間板は骨と骨との間にあってクッションの役目をしており、
運動による衝撃を和らげています。ニコチン摂取によって
弾力性が半分以下になりますと、日常のいろいろな動きによって
椎間板が壊れやすくなり、中の軟骨が飛び出して周辺の神経を圧迫して
痛みが起きます。
松崎教授は「たばこを吸うと腰痛になる確率が高くなる。腰痛持ちの人は
吸わない方がいい」と話しています。
私たち手技療法家も、このことから患者様に対して、たばこを吸う方に
きっちりとアドバイスをするように心がけが必要だと思います。
これまで、喫煙と腰痛の直接的な関係を示したデータは少なかった。
日本大学駿河台病院と同大板橋病院の椎間板ヘルニア患者のうち、
男性の喫煙率は72%(成人男子の喫煙率52%)、女性は19%(10%以下)と
一般に比べて高い傾向を示しています。
また、元群馬大学医学部公衆衛生学教室の大谷哲也医師が
同県伊勢崎市などで実施した健康状態や生活習慣に関するアンケートでも
喫煙と腰痛の相関関係が浮かび上がっています。
6891人のうち、男性の62.8%、女性の63.1%が「腰がよく痛む」
「ときどき痛む」と回答。腰痛があるとした男性は、非喫煙者の57.1%、
1日20本以下の喫煙者の63.7%、21本以上の66.4%とたばこの本数が
増えるほど、腰痛が増えることがわかった。
さらに職業や運動習慣など喫煙以外の要因を加えて計算すると
男性では、21本以上の喫煙者が腰痛を訴える程度は非喫煙者の
1.36倍、20本以下でも1.29倍となった。
大谷医師は「喫煙は腰痛を起こす様々な原因の一つである
可能性がある」という。
いずれにしても、腰痛に悩む人に限らずたばこは控えた方が
良いでしょう。
私たち、施術家にとって貴重な文献でした。
