私の経験はもちろんのこと、境界性パーソナリティ障害と関わる人達からの悩み相談の内容は大きくわけてこの2つ。
①彼らの言動、行動の意味がわからない
②彼らへの気持ちの揺り戻し
です。
①は「境界性」に関わりだした人に起こる悩み。
「昨日まであれほど情熱的に愛を語っていたのに、なぜ今日になって突然、それも何もトラブルも起こってないのに別れを切り出すの?」
「今笑って会話をしていたくせに、どうして突然怒りだしたの?」
「友達と食事の約束をしているだけなのに、それがダメなの?私を信用できないの?」
「仕事で電話に出られなかっただけ(携帯の充電が切れてしまっていた、着信に気づかなかった etc)なのに、『俺(私)のこと、どうでもいいって思っているでしょ、もういいよ。勝手にすれば?さようなら』って何?」
「『この芸人、俺(私)好きだな。面白いよね。』『そうかなあ。〇〇のほうが好き』『〇〇なんて全くよさがわからない。っていうか、俺(私)達、趣味が全く合わないね。終わりだね』えっ?どうして何事に対してもあなたと全く同意見じゃないとダメなのかしら?」
境界性の人は本当に些細な理由で突然激昂します。
普通の会話が成り立たないくらいの些細さなので、最初は何故怒っているのか、どこに地雷があったのかがこちら側には全くわかりません。
また、勝手に落ち込むこともしょっちゅうです。
夢の内容だったり、前日に会った時の会話をひとりで反芻したり、はたまた、私達には全く関係のないこと(仕事や彼自身の問題)などで、嫌なこと、不安なこと、思い通りにならないことが出てくると、突然ぷっつりと連絡を断ってみたり、拒絶してみたり。
こちらが全く知る由もない状況なので、「何が起こったの?私(俺)何かしたかしら?」ってびっくりします。
私も何回別れ話をされたでしょうか・・・
何回連絡が途絶えたでしょうか・・・
境界性の人はとにかく連絡好きです。
一日何度も連絡をしてきて、それに対応するのがやっと。
そんな状態から突然、ぷつり、なのですから、こちらの気持ちが不安になるのは当然です。ましてや好きな人なのですから。
「どうして?私(俺)何か傷つけることしちゃった?」
こちらもものすごく落ち込みます。悲しくて、理由を彼らに求めます。だって、普通の感覚には全く理解できないことだから。
どうにかして機嫌を直してもらいたくて、自分に非がないのに「そんな気持ちにさせてしまってごめんなさい」なんて謝るようになります。
私(俺)、悪くないのにな、ともやもやしながら。でも必死ですから。
こんなことが繰り返されると、そのうちに自分の意見や主張を彼らにいえなくなってきます。
どこに怒りの地雷があるかわからないので、また関係がおかしくなったら自分が辛くなるだけだと思い、イエスマンにしかなれなくなるのです。
それでもどんどん、彼らのこの「振り回し行為」はエスカレートしてきます。
当たり前なのですけれどね。彼らに従うから余計なのです。
彼らがこんな行為をするのはひとつには(無意識な)理由があり、ここまで酷いことをしても好きでいてくれる?許してくれる?と試しているのですね。
こちらがショックを受けてくれないと、自分のことをそれほど好きではないんだな、と理解をしてしまうのです。
逆にショックを受けている様子がわかると、「やっぱり俺(私)が好きなんだな」と安心するのです。
境界性の人達はコンプレックスの塊です。
自信たっぷりにみえていても心の中は真逆。
だから、好きな人(認めている人)が同じ意見じゃないと不安になったり、悲しくなったりしちゃうのですね。
いつでもそばにいてくれて全てを受け止めてくれることが「愛」だと思っているのですね。
もうひとつの理由は単純に感情が不安定だから。
彼らは自分で自分の感情をコントロールできません。
私達でもすごく不安なことが起こると気持ちがざわついたり、不安で胸が潰されそうになることがありますが、それってそんなに頻繁に起こることではないですよね。
でも、彼らはそれが一日のうちで(私達が思う)些細なことで何度もその状態になり、頭も心も不安定になってしまうのです。
例えば、ドライブの途中で一緒にコンビニで買い物をしていたとします。
店員が彼の言葉の意味がわからず、とんちんかんな対応をしたとします。
「違うよ、こういうことだよ」と2回3回(ややこしい)説明をしたとしたら、、、
普通なら、「もー。なんでわかってくれないのかなー。」くらいは思いますが、お店を出れば忘れちゃう話。
でも、彼らはそれで気持ちが楽しくなくなってしまい、「あーあ。つまらなくなってきちゃった。帰りたくなった」といってみたり、その後も折に触れ、「あの店員さ、やっぱりおかしいよね」などと何度も話に出すのです。それくらいずっと考えているのですね。
(これは「(店員に)自分を否定された、馬鹿にされた」という思いも働くゆえでもあるのですけれど。)
気持ちの切り替えができないのです。
ま、同じくらい、簡単に気分が高揚したりもするのですけれどね。
他人からちょっと褒められるともう嬉しくて。
そう。幼児なのです、彼らは。情緒的に。
そしてパートナーにはママでいてほしい。
なんでも受け止めてくれていつでもどんなときでも無償の愛を与えてくれる人でいてほしい。
小さな子供って、友達とイザコザがあったりと思い通りにいかないと、「もうママなんて嫌いだ」なんて、八つ当たりするときがありますよね。そんな感じです。
ママはそれをみても、「はいはい。嫌いなのね」で終わり。本当に嫌いなわけがないのはわかりきっているから。
子供側もそんな言葉をいってもママがいなくならないことはわかっています。甘えているのです。
境界性の人はまさにそれ。
境界性の人に関わる人達がそこを頭でなく心で理解、納得できるようになると、①の悩みは随分楽になってきます。
パートナーの人達は色々な本やネット情報などをみることによって頭では「そういう理由なのね」って理解してあげられるようにはなるのですが、なんせ振り回し行為が半端じゃないので、パートナー側の心も傷つききっていますし、言葉のDV被害者のようになっているので、「わかっていても心がついていけない」という状態が長くなってしまうのですね。
でもね、彼らは別れる気なんてさらさらないのです。
好きだからこそ、ママだからこその振り回し行為・試し行為なのですから。甘えなのですから。
彼らが本当にいなくなってしまったらどうしよう。私(俺)こんなに好きなのに。
突然いなくなってしまったら、このポッカリ空いた心(も時間も)をどう埋めていけばいいのだろう。
怖いのですよね。
あれだけ情熱的な人がいなくなることも、あれだけ心も体も時間も費やし続けてきちゃったものが忽然といなくなった後の自分の惚け方を想像すると。
でも大丈夫です!
彼らはそんなに簡単にいなくなりませんから。
ママのように「はいはい」って放っておけばいいのです。気持ちが落ち着けば悪びれる事もなく(←これが普通の常識では考えられないのですけれどね 笑)連絡を取って来ますから。
あっ、ホントだ。放っておけば戻ってくるわ。
行動パターンがあることをこちら側が心から納得できれば、境界性の人とのお付き合いは随分と楽になります。
そして、こちら側の心が安定することで彼らの心も安定させることができるのです。
②は次回。