昨年11月に2024年のPCTパーミット(許可書)が発行になったが、申し込み者が多すぎてあっという間に締め切られてしまい、パーミットをもらうことができなかった。500マイル以上歩くハイカーはパーミットが必要となり、出発日が指定される。一日につき50人が限度だったと思うが、11月の一時応募では35人で締め切られた。そののち1月10日に残り15人の二次募集があり、なんと私は許可書を手にしてしまった!出発日も希望通り4月17日となった。これは奇しくも2021年に初めてPCTスルーハイキングを敢行した時と同日だ。年々申込者が激増しているので、パーミットを取るのも争奪戦となるため、発行日当日はちょっとしたエキサイトメントが味わえる。パーミットは無料(今のところ)。出発時にメキシコ国境でチェックされるという話もないので、出発日は何が何でも指定された日に絶対出なくてはならないということはないが、規則には従った方が縁起がいい、と思う人も多い。

 

実際2021年には出発時にPCTA(Pacific Crest Trail Association)のメンバーが、メキシコ国境の巨大な鉄壁の前にブースを設置していたが、楽しんでねって小さなパワーストーンをくれたきりパーミットには触れなかった。その後ヨセミテ国立公園でレンジャーに一度だけ見せろと言われたが、その後は誰にもチェックされなかった。

 

ここ2年半、PCTに戻るか戻らないか迷いのただ中にいた。私は67歳だがまだフルタイムで働いているので、その仕事を辞めるか否かでぐちゃぐちゃ迷っていた。3年前みたいに無給休暇を申請する手もあるが、正直、会社が二度もPCTに理解を示してくれるとは思えない。やりたいことがあるならさっさと辞めろ、という声も聞こえてくる。

 

昨年は辞職して行くつもりで、食料なども準備していたのだが、出発直前の3月にトレーニング中足を負傷してしまい、行けなかった。治るのに半年以上かかり、悶々とした苦しい年だった。でもシエラ山脈が記録的な大雪だったので、シエラを飛ばしてカナダから南下するなど、ルート変更を余儀なくされただろうと思う。

 

そして今年。体力は100%回復には程遠いが、これ以上良くなることもないので、行くなら今しかないだろうという気持ちが徐々に固まってきた。幸いなことに今のところシエラの積雪量は例年をはるかに下回っている。これがラストチャンスかもしれない。

 

私の住むシアトルの冬は長い。気温はそれほど低くはならないが、毎日氷雨が降る。ここ何十年も住んでいる地ではあるがそろそろ嫌になってきた。加齢とともに体の芯から冷える雨は精神を落ち込ませる。メンタルヘルスを良好に保つためにも、暖かい場所へ旅行したいと思い、先週は5日間ラスベガスに行ってきた。

 

ラスベガスはネバダ州南部に位置し、数時間ドライブすればデスバリーやグランドキャニオンにも行ける。今回私が行ったのは、ラスベガスストリップから30分~1時間以内で行ける場所。ラスベガス自体は人工的な幻の世界以外のなにものでもなく、市街地を一歩出れば、そこは気が遠くなるほど殺伐とした砂漠だ。一見モンゴルにでも来たようなSagebrush(山ヨモギ)とサボテンだらけの不毛の地を一日中歩き続けた。陽の光をサンサンと浴びて、冬の間のしめった体を虫干しした。快いスイートな微風はサザンカリフォルニアのそれに似ている。

 

PCTのメキシコ国境付近の数週間を思い出して嬉しさに浸っていたら、突然目の前に野生のロバが現れてぎょっとした。

 

 

下はValley of Fireという州立公園。砂漠は過酷な環境ではあるが、その美しさは強烈だ。

 

 

サザンカリフォルニアが心から恋しい。