三日目の朝が来た。今回の旅は二泊三日である。朝、ホテルの食堂でバイキングを食べていると、近くのおばさま方が今朝の遠野は気温マイナス3℃だと話していたとTさんが教えてくれた。ホテル内は暖かいが外に出ると確かに寒い。しかし、旅も三日目でだんだん体が慣れてきたのか、身が縮むほどの寒さではない。
 遠野から乗るのは快速やまゆり盛岡行き。三両のうち二両は自由席なのでそこに乗る。曇り空の下、ディーゼルカーは快走し、花巻から東北本線に入って盛岡に着く。

 盛岡で列車案内を見ていたら異変に気づいた。これから乗る予定の山田線の宮古行きが上米内行きになっている。そばに立っていた女性駅員に尋ねると、なんと山田線は不通になっていて宮古まで行かないのだという。バスで代行輸送を行なっているそうなので急いでバス乗り場に向かうが、バスは民間の路線バス、東北本線との接続など省みられるはずもなく、少し前に発車したばかりだった。次の便に乗ると宮古に着くのは14時頃になってしまう。
 結局、予定を変更して北三陸は諦めて、東北の内陸部に行くことにした。私が「宮古で食べた寿司は自分が今まで食べた中で日本一の美味しさだった」とTさんに話していたので残念ではあるが、近いうちにまた来ようと話す。
 快速で通ってきた東北本線を戻り、一日目に途中下車して鯉にえさをやった小牛田に着いた。ここから陸羽東線(りくうとうせん)に乗り換える。天気は宮城県に入って晴れてきた。昼食をとりたいが接続が良すぎて時間がない。

 ササニシキの広い田んぼから雪を載せた山々に風景が変わる頃、鳴子温泉に到着。駅からの緩い坂を行くと木造の共同浴場がある。鳴子温泉は千年以上の歴史があるので古湯がよく似合う。入湯料150円。白い湯と硫黄の匂いが風情たっぷりな温泉だった。
 駅までの帰り道、商店の並ぶ道に和菓子屋を見つけたので、車中で食べる用に栗だんごと、駅の足湯に浸かりながら食べる用に温泉まんじゅうを買う。列車の時間まで足湯でのんびり過ごした。