高校を中退し
途端に暇になってしまった私は
中学の同級生と遊びはじめた。




高校には進学しないで
地元で水商売をしていた友達と再会し
そこで私も働く事にした。





当時15歳。



初めて仕事をした時の
虚しい気持ちは今でも覚えている。




「何でこんなオッサンと話してるんだろ…」
「何でこんな事してるんだろ…」

ただただ虚しくて虚しくてたまらなかった。





時給2500円
4時間で一万円という
当時15歳の私には大きなお金。



そのために見知らぬオジさんに
お酒を作りながら会話をする。

 

 

 


ついこの間まで
青山の高校に通っていた生活とは
まったく別世界の現実に
しばらくついていけない自分が居た気がする。

 

 

もう早く帰りたくて
嫌で嫌で苦痛で仕方なかったことだけ
すごく覚えてる。



結局、最初に働いたそのお店は
ほんの数日で辞めてしまった。





フラフラと過ごしていたそんなある日
特別仲が良かった訳ではないが
高校の同級生で同じく退学をしたという女の子から
電話がきて会う事になった。




その彼女と渋谷で待ち合わせ
ファストフードでお茶をしていたら
声をかけてきた人たちがいる。

 

 


渋谷のチーマーだ。

 

 


当時、チームというものが出来たばかりで
センター街を取り仕切る
知る人ぞ知る〇〇警備隊というチームの
初代メンバーから声をかけられた。





その中に居た5つ上の男性が
私と家が近所で
地元が同じという事で意気投合し

「君も今日から〇〇警備隊の一員だ!」と言われ

その日から私たちもチームの一員となった。

 

 

 

チームと言っても特別何をするわけでもなく
ただ毎日渋谷のセンター街で
たむろしたり
フラフラしているだけ。




109やあちこちを
昼間っからフラフラし
夜は、夜な夜な増える仲間と
朝までセンターでどんちゃん騒ぎ。



時にはチームの男の子たち30人くらいが
突然センター街のど真ん中で
組体操のピラミッドを作り始めたこともあった。

 

 

通り過ぎる大学生や
遊び人風の大人たちは
苦笑いしながら
それを見ている。

 

 

 

またある時には
チームの女の子が
大学生にナンパでもされ
相手が2人でも30人がかりで
ボコボコにしたりする。

 

 

 

そのくせ
関東連がたった2人
センターに見に来ただけで
男子が全員いなくなる。

 

 

 

 

センター街での組体操も
集団リンチも
今の時代なら
きっとすぐにSNSか何かでアップされて
結構な問題やニュースになっただろう。

 

 

 

 

そもそも今の時代
そんなふざけた光景は
渋谷で見たことないし
そんな腐った奴もいない。





夜中はファーストキッチンの前で
大勢で並んで朝まで寝たこともある。

 



学校に通ってて帰る子も居れば
私のようにずっと帰らず
センターに居る子も沢山居た。

 



当時「トゥナイト」という番組がよく取材に来ていて
「あなたたちは何ですか?」と
マイクを向けてきたことが何度かあった。


「チーム~~~~♪」と
手をサーフガールのようにしてポーズをとり
数人で馬鹿丸出しで映る。
 

 

 

そう、そんなことでしか
自分の存在をアピールできなかったから。






1~2週間ぶりに帰って
母と久しぶりに会っても
「あ、さおちゃん元気だった?」
と言われるだけ。

 


渋谷で万引きした物を持って帰っても
「何それ?いいね!ママにも持ってきてよ♪」
と言われるだけ。

 

 


もっと心配してほしかったし
叱っても欲しかった。


寂しさや虚しさは募る一方だった。






そして、ある時
チームの男の子にマリファナを勧められ
手を出したのもこの頃だった。




正直私には合わなかったから
ハマる事はなかったし
そもそもそんなところで
そんなことをしてること自体が
自分がどんどん堕ちていく気がして
心の奥でどこか情けなかった。






そう、結局
ここでも楽しさはフェイクで
どこにもない居場所をただ求めていただけ。

 



チームの子たちも友情なんて実際なくて
地元に居場所のない子たちが集まって
自分という存在をアピールしているだけの
フェイクの世界だった。

 

 

 

 


渋谷の様々なフェイクに
ココは自分の居場所じゃないと
私は2ヶ月ほどでセンターに行くのを辞めた。

 

 




そして、そんな矢先
私は渋谷のセンター街でリンチ未遂に遭う…