ナンバーワンの表彰をされ

入店した時に感じた

自分には遠い出来事が

自分の現実に起きて

私はお店で

自分の居場所ができたことに

ホッとした

 

 

だけど同時に

私が入店した時に

ナンバーワンだった姉さんが

あからさまにママから

冷たい対応を受けているのを見て

一瞬私は複雑な心境になった

 

勝った!!という誇らしい感情と

この前までナンバーワンだった人が?!

という、えもいわれぬ気持ち

 

輝かしくナンバーワンの

表彰をされていたその女性は

お店でも覇気がない状態になっていった

 

 

同時に私はママから

「うちのナンバーワンよ〜」と

お客さんに紹介されはじめ

いい意味でのプレッシャーと

やる気に満ち始めていた

 

 

そんなある日

23歳の若い女の子が入店して来た

 

このお店の雰囲気には到底合わない

色も黒くて見るからにギャル風の彼女

 

 本名の紀子(のりこ)という名前で

お店に入って来た彼女は

とっても明るくて面白くて

私はすぐに興味を持ったが

姉さん達の中には

怪訝な顔をする人もいれば

お客さんの中でも賛否両論だった

 

そんな彼女に興味を持ったのは他でもない

 私と同じ匂いがしたからだった

 

 

「ねえ、ふとした時に死にたくなったりしない?

本当はよく、死にたいって思わない?」


 私は思わず紀子に尋ねた

 

 

「えーーー、なんでわかるんすかー?」

 

 

これは後になって聞いた話だが

紀子は友達に

「今度入ったお店に

紀子のこと何でもお見通しな人がいて

すっげー怖いんだけど」

と話していたらしい笑

 

 

 

いつも明るく笑っているけど

目の奥が寂しいと言ってるような

そんな紀子に

私は自分と重ね合わせていた

 

 

 

その頃には

組長は週4〜5日

お店に来るようになっていた

 

どうやらお店の女の子

3人を気に入ったらしい

 

そして誰を正式に彼女にするか

組長は悩んでいた笑

 

 

ひとりは私

 

もうひとりは

若くて元気でスタイル抜群の紀子

 

もうひとりは

長年ホステスをやっていて

過去にはママもやっていたらしい

ザ・夜の女という感じの姉さん

 

 

毎回3人を指名し

若い衆の誰かを連れて来ては

楽しく飲んでらした

 

 

そんなある日

組長が私の家庭事情を詳しく聞いてきた

 

隠し事や嘘が苦手な私は

子どもが二人いて

旦那さんとは戸籍上は離婚したものの

経済的に別居がまだできていないことなど

正直に話した

 

 

 

「金出してやるから部屋借りろ」

 

組長が私に言った

 

 

「誰を彼女にするかわかんねぇけど

さすがに別れたって言っても

まだ旦那と住んでる奴は

俺も嫌だし口説けねぇからよ」

 

  

即答ができないまま

私は笑顔を返した

 

 

 

そんなある日自宅で

お店に行く支度をしている私を見て

 

「なんか最近綺麗になったね」

 

元旦那さんが言った

 

 

 

私はその時に

えも言えぬ嫌悪感を感じたのだ

 

 

 

 

それまでの7年間

結婚してからというもの

オバサンオバサンと馬鹿にはされても

一度も女性として褒められたことがなかったのに

「急に何?!?!」

という嫌悪感

 

 

 

そしてその数日後には

出かける私に

「いってらっしゃい!

そのTシャツ可愛いね」

と言い出した

 

 

私はもう地震でも来るんじゃないか

というくらいの

衝撃的な嫌悪感を感じた

 

 

 

7年間ずっと褒めてほしくて

気にかけてほしくて

そう願ってきたのに

一向に相手にしてくれなかった

そんな旦那さんから出て来た

衝撃の言葉だった

 

 

 

 

 

そんな矢先

ディズニー好きな子ども達を連れて

家族でディズニーランドに行った時

 

 

アトラクションに並んでいる時に

突然旦那さんが

私の背中に手を回してきたのだ

 

 

本当にそれまでの結婚生活で

お願いしても手すら繋いでくれなかった

そんな旦那さんが

私をエスコートするかのように

背中に手を回された瞬間

私は嫌悪感と同時に

全身に鳥肌がたった

 

 

ずっとずっと喧嘩ばかりで

心の奥で”別れたい”と思いながらも

現実的にできずにいた自分

 

 

だけど同居している分には

何の問題もない旦那さん

 

妻として女性としては一切見てくれないし

何をしてても無関心で会話もロクにないけれど

仕事は頑張ってくれてるし

暴力があるわけでもない

 


ずっと暮らせと言われたら

出来なくもない関係ではあったけれど

だけどその瞬間

”まだ33で、この先何十年も

触れたら鳥肌が立つような人と

一緒にいる人生ってどうなんだろ・・・”

 

そんな想いが私の中に溢れたのだ


 

私の中で完全に離婚を決めた

決定的な出来事だった

 

 

 

そしてふと

組長の言葉を思い出す


「金出してやるから部屋借りろ」



それまで金銭的に実現できなかった

経済的な自立も

今なら出来る

 

 

ただ・・・・・

子ども達を見てもらえる人がいない

帰れる実家もないし

毎晩見てもらうには

さすがにおばあちゃんではキツイ

 

夜の保育園はふたり分だと高いし…

 

 


そんな風に悩んでいた矢先

ふと遊びに来た母が私に言った

 

 

「いいよ、見ててあげるよ!

バイト代くれるならいいよ!」

 

 

普通の人は

"親なのにバイト代?!"

というけれど

結婚式も出産も

そもそも私の人生に全く関わらなかった母

お金は発生しても

子ども達を見ててくれるということが

私にとっては奇跡だったし

救いの神のようにさえ見えた

 

 

 

「毎月7万円くれるなら

泊まり込みで平日見ててあげるよ」

 

 

私は即答した

 

 

「わかった!お願い!!!」

 

 

 

 

家を出て

完全に離婚をするために

私は早速動き始めた