松岡圭祐『瑕疵借り』 | キムチの備忘録♪

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大変久しぶりになりますが(一年以上ぶりあせる)読み終わった本の感想です本
 
松岡圭祐『瑕疵借り』

訳あり物件に住み込む藤崎は不動産業者やオーナーたちの最後の頼みの綱。

原発関連死、賃借人失踪、謎の自殺、家族の不審死……

どうすれば瑕疵を洗い流せるのか。男は類い稀なる嗅覚で賃借人の人生をあぶり出し、瑕疵の原因を突き止める。

誰にでも明日起こりうるドラマに思わず涙する“賃借ミステリ”短編集。

(文庫本裏表紙より)

 
 
松岡圭祐さんの著書は今回が初めてです。
あらすじで気になって買ってみました。
 
皆さまは「瑕疵(かし)」という言葉をご存知でしょうか?
辞書によれば「欠点」「傷」、または法概念として「通常あるべき品質を欠いていること」とあります。
賃貸物件においては、前の賃借人に事故や事件などが起こり不審死や孤独死などが発生した場合にその部屋や建物は何かしらの心理的瑕疵を伴う状態になります。
この物件は「瑕疵物件」と呼ばれます。いわゆる事故物件、訳あり物件ですね。
瑕疵には「心理的瑕疵」の他にも「物理的瑕疵」「環境瑕疵」「法的瑕疵」があるそうですが、本作は心理的瑕疵物件をテーマにした4つの短編集となっています。
 
4編のタイトルは、
「土曜日のアパート」…原発関連死物件
「保証人のスネップ」…賃借人失踪物件
「百尺竿頭にあり」…自殺物件
「転機のテンキー」…不審死物件
 
そしていずれの話にも登場するのが、藤崎という男。
瑕疵物件になってすぐに、一般人を装いその物件に住み瑕疵の内容を調べ精査するのです。
実際は不動産業者や建物のオーナーに依頼されて住んでいるという設定で、そこがこの話の面白いところなんですね。
じゃあ藤崎は一体何者なのか?それは最後までよく分からない。
しかし赤の他人から見れば「何か恐ろしい」「薄気味悪い」だけの事故物件でも、その歴史を紐解けばそこに生きていた人の生前の想いや愛が詰まった部屋だったということが明らかになるのです。
 
どのお話も幽霊が出るとかホラーな話ではなく、読後に心が温かくなるようなストーリーになっています。
個人的には「土曜日のアパート」が好きです。
シリーズ2作目もあるらしいけれど次は長編らしい。また気が向いたら読んでみようかな。