Theater Brook&荒吐Super Session

 

横浜アリーナで配られたチラシに入っていた1枚の紙、「荒吐宵祭」なんていうなんとなく男っぽい荒っぽさも感じる字面の、お祭り気分のロックフェス、あっちゃんがそこに参加するという。バンドとしてイベントに出るんじゃなく、一人だけ単独でなんて、昔ならばそういう場に出ていくことはなかっただろうが、それはやっぱりソロでの自信か、武者修行かと思わせる。
それが佐藤タイジさん率いるTheater Brookと一緒にっていうんだから、それだけでも見たい!と思わせる。NHKホールでのゲストのツーショットの親しげな様子が思い出される。もちろんあの「胎児」、それが作曲者自身の演奏で聴けるなんてのは、これを逃したらもうないことかもしれない。
当日は台風の予報で雨や風の強く吹きすさぶ中でお出かけを決行、辿り着けるのか、無事に行けるのか、それだけが心配だった…。
ステージの中自体は、少し大きめのライブハウスといった感じ、3時過ぎから様子を見がてら入ったのだけれど、1時間くらいでセッティングと5.6曲やってバンドが入れ替わるの繰り返しでした。
他のバンドについての一言感想は下に…。

 

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シアターさんへの機材の入れ替えがすさまじかった。キーボードとか、アンプ類、ドラムセットなど総入れ替え…。マイクチェックやら音出しやら、そういうセッティングって初めて見たから、スタッフって大変だなぁとまじまじ思った。一番前のブロックの正面3列目くらいで、見えるところに立って待つ。やがて左からシアターさん登場。
タイジさんは軍服風の飾りの付いた短めの青の上着に白の革パン、爆発頭を紐みたいなもので額を縛って止めている。ベース中條氏はジャージっぽい帽子、髭面なのに白のフリルのシャツと茶の革パン、ベースをすごく高い位置で持たれていて、ウクレレか牧伸二かと失礼なことを考えてしまいました。ハンチングに白シャツのキーボードはエマーソン北村さん、ドラムは沼袋さんという、茶髪なオジサン(失礼)、3曲ほどやって、インストみたいなのをやって(これがシンセみたいな音で、ボトルネック奏法で、トランスするくらい気持ちよい音でした)、ゲストの登場、ここからセッションタイム。
まずピンクのつなぎを着た、小柄な細身のお姉さんLeyona、こちらにもタイジさんは曲提供しているらしく、調子を合わせ、「気持ちいいー」といいながらタンバリンを振り2曲を熱唱、可愛らしい感じの方でした。
そして「ものすごい男を紹介しよう、格好いい男だ」とかいって、グレイプバインのボーカル、この日はFTK&Kというバンドで出ていた田中さんという方とギターを持ち、田中さんがボーカルもとりつつセッション。洋楽のカバーらしく曲名はわかりませんが、ギターの弾き合いみたいになっちゃってて、大の男二人が子供みたいな顔して、ギターを弾きまくってました。セッションて、音楽って凄いなーと思いつつ、こんなにまともなギターを山ほど聴いたのはすんごく久しぶりな気もして、楽しかったです。反面、次に出てくるであろう、あの方はどうするのだろうと心配にも…。ギターは弾けないし、何かカバーでも歌うのかなーなんて。
あと関心は服装、シアターさんは衣装らしきものを来ていましたが、その前に出ていたほとんどのバンドが、TシャツにGパンみたいなあまりにラフなスタイルで、しかもボーカルが全部楽器持ち…。ギター弾きつつ歌うスタイルで、世の中にはこんなにギターを弾きながらガンガン歌える人がいるんだよなーと、感心しながら見てました。

「すさまじい男を紹介しよう、いいのか?」などと派手な前振りがあって、あっちゃん登場。どんな服を着ているかと思いきや、黒っぽいスーツ上下に黒Yシャツに、黒っぽい紫の小さい柄の付いたネクタイ。…ここまでのイベントの流れから言ったら、あんまりに異質な服装、そして何というのか、出てきた瞬間に、そのステージにいるのにどこか現実離れしたような、彼だけ存在している空間が違うような気がするほどでした。久しぶりにマジマジと顔を見て、やっぱりこの人って恐ろしいほど、精巧なマネキンのように整った容貌なんだなーと、その白い顔の造作に見惚れました。あんまり化粧もしてなくて、結婚指輪はしてました。
マイクの前に立って、「今日はシアターブルックと一緒にやれて光栄です」みたいな事を言って、はにかみつつ演奏が始まる。
「愛してるって言え!」と叫んで「胎児」へ、その瞬間顔つきが変わりました。場の雰囲気や色を、その声が出た瞬間一瞬にして染め変えるような圧倒的な存在感。ファンでないとしてもそっちに目が向いてしまうだろうまばゆさ。豊かな声量と言葉の聞き取れるはっきりとした発声…。それまでのバンドでは、歌っていても全部の歌詞を聴き取れるような歌い方をする人はいなかった。それは洋楽寄りだからなのか、単に歌い方の問題なのかもしれないし、ギターを弾きながらだから歌だけに集中出来ないのかもしれないけれど、それでもステージの前の方へ、モニターの前まで出てきて、左右に動き、来いというように煽る仕草をするあっちゃんの何と圧倒的なこと。見慣れている私たちには当たり前でも、今日のイベントでこんなにステージの端まで来たアーチストはあっちゃんだけだし、初めて見た方はどう思ったんでしょうね。
一部、高いところの声を落として歌っていたところもありましたが気にならず、最後に「シアターブルック!」と叫び、「ありがとうございました」とタイジさんと握手をして抱き合い、あっちゃんは去っていきました。
シアターさんと合わせてセッションするというよりは、良くも悪くもステージに落とされた一発の爆弾、一瞬の嵐のような、そんな感触しかなかった。もうその曲の時には失礼ながら、シアターブルックはただあっちゃんの伴奏をするバックバンドでしかなかった。今まで延々、このステージの上で行われていた和気藹々なバンドのライブとは異次元みたいな世界に、いきなり全てを巻き込んで去ったような…。十何年もバクチクとしてのライブを見ている私にも、この人がこれほど爆弾のような存在だとはつゆ思いませんでした。
 
そのあとはまたシアターさんが何曲かやって、Leyonaさんが出てきて2曲ほどやって、それで本編を終え、アンコールまでやって終了。タイジさんは、「『荒吐』は、素朴な感じで、なんかフジロックとかそういうのとも違うから続けていけるといいね、ずっと続けましょう」みたいなことを言ってました。いやもう、こういうのはすごく面白いと思います。群馬でもロックイベントあったらなぁ…なんて、思わせてくれました。9時半近くにイベントは終了、心配していた台風もそんなにひどくはなく、翌日も無事に帰りつけてホッとしました。

 

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その他の出演バンド等一言感想

Theピーズ
 ベースの人がボーカルなスリーピースバンド。若い子らしく「日帰りなんですけど新幹線止まりそうで…」とか、「肉を買いだめして帰ります」みたいな事を言ってました。ギターの人がTシャツを脱いだら、ボディービルダーみたいに鍛えた筋肉モリモリな人だった。曲はあんまり良く覚えてない。

FTK&K
 白のつなぎに胸に一文字ずつ赤いアルファベットがついてて、それがメンバーの頭文字らしいのだが、Tがグレイプバインというバンドのボーカルの田中さんという人だというのしかよくわからない。実は私、だいたいにおいてグレイプバインというバンドの実態もよく知らないのだが。4人編成、ボーカルもギターを弾くので2ギター。「一応外タレです」と言ってたけど関西弁だった。歌っていたのは英語の歌みたい。何かのカバーなのか、よくわからない。曲のシメのたびにマイクを縄跳びのように両手でもって、飛び上がってジャーンとしめていたのが印象に残っている。ボーカルの田中さんて方、最後のセッションにも出たけれど確かに歌がうまかった。

ストレイテナー
 セットチェンジの時にドラムチューナーの人がやけにガンガン叩いていたと思ったら、やっぱりガンガンドラムを叩くバンドだった。ギターがボーカルのスリーピース。ドラムは長髪で、なんとなくkiyoshiさんみたいな体格のお兄ちゃんだったが凄い叩きまくり、連打の嵐。ベースは体格のいい太めのお兄ちゃんで、やっぱりバンバンベースを鳴らす。リズム隊の音が凄い気持ちよかった。おかげでボーカル兼ギターの人の印象がイマイチ薄いかも。

the pillows
 ここもギターがボーカルの2ギター4人編成。ボーカル氏はさらさらのマッシュルームカットだった。そして一人だけ青の長袖ポロシャツにGパンで、痩せ体型なので何となく貧相に見えてしまった(スマン)。平均年齢が39歳とか、目覚ましテレビで言われていたとか言ってました。ノリが良くて曲と歌の一体感はなかなか面白かったけれど、ボーカルさんの歌い方がねっとりした感じ、歌詞はあんまり聴き取れなかった。

THEATRE BROOK
 タイジさんてギター小僧だなぁと思った。楽しそうに嬉しそうに、ギターを弾きまくっていた。
 グレイプバインの田中さんとギターを弾きながら洋楽を歌っていて、ギターを向かい合わせて、ギター弾きまくりセッションだったのが、すごい楽しそうで面白かった。ある意味こういうのってイベントでのバンドの醍醐味なんでしょうね。気持ちよかった。

 

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とにかく、「普通のギターの音」をこんなに聴いたのは久しぶりだったかも。今の流行りがこういうバンドなのか、そういうバンドばかり集めたのかよくわからないけれど、Tシャツでギターを弾きまくるこんなバンドの中では、あっちゃんは浮くだろうと思っていた。

大丈夫か?なんて心配もしたけれど、「浮く」どころではなかった。その存在自体が異質な感じなのだ。一緒にいる人を全部霞ませてしまうくらいのまばゆい存在感。それゆえに他のバンドの人とイベントで合わせて楽しくセッションしましょうなんて事はできないのだろうと思った。出たバンドのほとんどが、近所のバンドやってる貧乏くさいお兄さんて感じのイメージだったのだけれど、あっちゃん一人だけ黒スーツで、出た途端に雰囲気がもうイベントじゃない(笑)。場違いというより異世界、「掃き溜めに鶴」って感じでした。