これで今ツアーのホールも最後かぁなんて思うと、何か長いような短いような変な気分だ。約5週間で17本ていうのは、多いのか少ないのか…(最近にしたら少ない方か?)。単純に割っても2.3日に一回はライブをしてる計算だし、しかも今回は土日で連続したライブが多いから、その分大変なのかな。
今回は1本だけの筈が気がつくと神戸まで遠征したり、今日みたいに平日に半日早退で東京まで駆けつけてる。本数行けないのはいつのことながら、前回のツアーとのあまりの感触の違いに頭がついていかないようで、何か考える為に確信する為に…何だかそんなふうに理屈をこねながら電車での道々、散り始めた桜を見ていた。

NHKホールは何年ぶりだろうとぼーっと数えたら、たぶん「Redroom2097」の時以来だ。6年ぶりかな、その前はたしか93年ぐらいにソフトバレエを見たんだったか。ライブにでも通わないともう各地のホールもほとんど行くことはないのかもしれない。相変わらずのホール、座席案内嬢が何人も客席についているのが他のホールと違う感じだ。
3階って結構高くて、このホールは座席の配置が面白いなと思った。3階のR9列目だけど、前の方は斜めに張り出しているので、センター席の3列目ぐらいのところなのだ。ややヒデさん側のその席から下を眺めると、オーケストラピットの上にのせた座席と、その前の舞台が見えた。いつもの黒い幕が一番前の舞台下までなくて、舞台の前の方ががらんとあいたまま下りている。そのせいでオープニングの後、落ちた幕を回収するのに4人ほどが舞台上に張りつくようにいて、演奏しているメンバーの前を落ちた幕を持って袖に引き上げる…会場の都合で仕方ないのだろうがちょっと無粋だった。

開演は6時50分ぐらい、いつものようにSE「Continue」から始まった。幕に写された文字が浮かび上がり文字の色が変わるたびに歓声が上がる、何となく昂揚してくるんだろうな、素敵な演出だよ。
そして突き上げるように「ナカユビ」…。光の中に5人がいて紗幕が落ちるまでシルエットだけで、それでもメンバーがいるんだぁって嬉しくなる。ステージはモニターの前が普通のステージよりすごく広かった。
あっちゃんは黒で裏地が赤のコートを羽織って、その下は他の地方と変わらず皮のフレンチスリーブ上着にツアーT、下は革パン、今井さんの髪型は何かオレンジか黄色っていろの頭で、不良少年のリーゼントみたいに突っ立って見えた。黒地に白い花模様のシャツと、黒いジャケット、細身のパンツ(Gパン?)に白いブーツ、ヒデさん黒っぽいコート、黒ズボンに長いブーツインで履いてたか?ユータとアニイはほとんど覚えてない。何せ遠いので、各人の衣装も詳細は確認できず。

「残骸」「MONSTER」と、どうしてもそれほどの印象がなく、最初の一区切りとして迫力に圧倒されたまま終わってしまう。

インパクトが弱いせいではないと思うのだが「ナカユビ」の印象が強すぎるのか。「MONSTER」とか、早いところとサビのメリハリがもっとつくと格好いいのになーって思ったり。全体の音はカシッとしてて、ホール自体の音響のせいかちょっとジャリジャリしている気がしました。
「BUSTER」、ここでハッと我に返って聞き直す感じ。後ろの画面は爆弾投下、爆発…そういえば戦争はどうなったかなーなんてぼーっと思う。
「ようこそ東京ー」とあっちゃんが叫ぶのは神戸の時と同じ。そして「武器を捨て殺し合いをやめ、愛し合おうか」「…できるか!」とMC。この辺でコート脱いでたような覚えが…。何でこんな選曲なんだろう、タイムリーに狙ったみたいに…。

「BUSTER」があるからそこから繋げたんだろうけど、あまりにも皮肉で…。そしてどんどん突き刺すような迫力を増していく。間奏のところでも「LOVE&PEACE」と叫んでいて、そんなのでガーッと来られて、うひゃーっと思いました。
「LION」の前に、今井さんがピロピロとギターを弾いていて、それが何か面白く珍しい感じでした。音の調整なのか、合間に爪弾いてる感じというのか、エフェクトかけながら結構長い時間、何やるんだろうと思って聞き入ってしまった。あっちゃんは闘牛のようにコートの赤い方を掲げて、ひらひらと振りながら歌っていましたが…牛じゃないんだから、とつっこんだのは内緒。最後のところを「この俺」「はぁーーーーっ」って区切って伸ばすように歌っていた。
そしてあっちゃん、コートの赤い方を表向きにして袖を腰に巻き付けると…はい、後ろ半分赤スカートの出来あがりです。裾を引く感じで、変なんだけど…変な筈なんだけど、何でこれがハマっちゃうんだろうか。そのまま「カイン」へ。

「パワーをくれ、もっと」(客の叫び)「足りないもっと…」(更に客の叫び)もうなんか会場中がワーキャーと大騒ぎみたいになってました。「叫んでくれ、限りなく鼠」…って、「~鼠」が始まり、あっちゃんは足元のオレンジ色のライトに照らされて狂うように頭を振ったり、モニターの上にそれを乗せて、自分も上に立って歌いながらそのライトに体を晒す。低い声の、聞き取りがたい歌詞の…「笑え笑え…」「笑うんだー」。
「アサイラム~」も、いい感じの声だったか、あんまり動かない感じだったので、どんなふうだったかあんまり覚えてない。
「Tight rope」の前にも今井さんがギターを爪弾いていた。ステージの上に置いてなかった着物を着た仮面付きのマイクがスタッフに運ばれてきて、何か笑ってしまった。前奏の今井さんのギターに合わせるようにあっちゃんが薄く声をかぶせてました。なんかの歌だったのかな? そんなことをしてから曲が始まりました。今日はずっとマイクを後ろから抱きかかえるようにして、その背後で、ゆっくりした優しい声で歌っていました。「空中ブランコにあなたが…」だったか、後ろから仮面を覗き込むように顔を突き出して、落ちない安定した綱渡りなんだけど、今日のは一人じゃなくて二人綱渡りという感じ。こんな雰囲気になっちゃったんだなぁ…不思議な感じでした。

「FUCKしよう」といって「BLACK CHERRY」、手つきがエロっぽくていい雰囲気だったんだけど、何か歌詞がごっちゃになってて、こっちがあれれって気分になってしまいましたよ。最後のところで「卑しい俺がぁーーーぁ」って、こぶし回して長く伸ばしてた気がする。
「花はいつか咲くでしょう」…と言って「GIRL」。これって「朝日は照らし 花は咲き 愛もある」…のその「花は咲く」だよね。最初のところと間奏で「東京ー」って叫んでしましたが、「神戸」の時と同じタイミングで合いの手を入れるみたいでちょっと苦笑。手を上に上げて手拍子をして、ぴょんぴょん跳びはねる…もうみんなが言うように完全に「エアロビ」だよ。それが何かもう子供みたいに可愛らしくて楽しそうで、つい釣られて手拍子をさせられてしまいます。
そのまま「Baby~」、この曲ってノリが良くて本当にライブ向き。間奏のあたりだったか、あっちゃん前お立ち台にヒデさんが乗り、その前に今井さん、その更に前にユータが出て来て、楽器3人が縦に一列並び…(ユータの小ささが目立つ?)。今井さんが真ん中でちょうど良くギターやらベースを持った手も見事に対称で、すごく格好良かった。(某所で「トーテムポールのよう」なんて記述を見ていたので、思わず吹き出し笑いをしてしまいました)。最後のところで、「Baby, I want you」とお客さんに歌わせようとしてて何だか不発に終わってシンとなり、何か尻切れ?と思ったらあっちゃん、「ベイビー、アイウォンチュウーーーっ、イェーェイ」って感じでこぶしを回してラストを長く伸ばし、拍手喝采でした。こういうところの処理はさすがに上手いなぁって、キャリアのなせる技だろうかと思いました。

「LIMBO」「原罪」は、もうイキオイと照明のものすごさで立ったまま呆然と聞いてました。これもツアー最初の、早いけどノリにくいと思っていたのとは正反対にガンガン攻め入る感じになっていて、ついつい気持ちよく体が動いていく感じ。
「愛ノ歌」の時になって、あっちゃんは後ろにあった仮面のマイクスタンドから着物を取ってきて羽織る。この数曲前からステージの上にはハンディカメラを持った人が数人上がっていて、あっちゃんや今井さんやヒデさんだの動くメンバーを取りまくっている。赤い着物を着たあっちゃんは、モニターの上で半分寝そべるようにして足を広げ、「俺の上で~」と歌っていましたが、そんなのもカメラが取り囲むようにして撮りまくっていました。その様子がなんかエロいシーンでも撮ってるみたいで…なんか妙に恥ずかしかった。その後もラストまでカメラさんたちはステージ上をメンバー撮りまくり。こんなに撮ってて、どっかで映像にしなかったら怒るぞーって感じですね。
最後「Mona Lisa」のときには、ああもう終わっちゃうのかーって気分になりました。何だろう、いろいろ見て聴いて楽しんだはずなのに、もう終わり?ってちょっと寂しくなってしまいました。今井さん、歌の音程ずれてなかったかなー…変な歌いっぷりでした。

最後のところであっちゃんが着物のまま、モニター前を左から右へごろんごろんと転がっていきました。着物が巻き付いて何だかちょっとエロい。それと同時に五体倒地というか、何かステージに自分の全部を捧げてるんだなみたいな感覚が浮かび上がって、ゾクゾクと鳥肌が立ちました。ステージに生き、ステージに死んでいく人なのかな…というような感慨みたいなものが浮かんで消えました。少し長くステージにいて、「どうもありがとう」と言うように消えていったあっちゃん…。そして相変わらず手を振ってニコニコと去っていくユータ。終わっちゃったステージに、ちょっとだけ寂しくて呆然としながらアンコールの手拍子をする。何かいつもよりアンコールの声が大きくて、手拍子の揃うのが早かったような気がする。

アンコール1回目「Sid~」、ハワイアン調のフレーズをピロピロ弾きまくる今井さん。そしてもう、何だか今井さんが歌っているところが何しても可愛らしく思えてしまって、フラダンスみたいにフラフラと手を振ったりする手振りの一つ一つ、そんなのを見ているだけで和んできてしまう。群馬でのあの余裕のなかった歌が、今じゃ手振りも堂々たるソロボーカルだよ…。
「ドリー~」で、出てきたあっちゃんは、ノースリーブのツアーT、今井さんもジャケット脱いでいたかも。前奏が「メリーさんの羊」で始まったドリー、間奏のところであっちゃんが「dolly is dead」(ドリーは死んじゃった)って歌っていましたよね。神戸では聞き取れなかったんだけど、NHKではそう聞こえた。やっぱりそういう理由で、これが入ったんだろうな。「idol」は、やっぱりヒデさんのギターに注目。やっぱりあのシンセのフレーズの音出してるんだよねー?(結局余りよくわからず…)。この曲、ずっとライブ聴いていて「うーん」と思っちゃったんだけど、歌いやすいのかな。声は綺麗に出ていてさすがに聞き惚れます。

2回目のアンコールに出てきた時だったか、アニィがミネラルウォーターのボトルを持って来て、あっちゃんのところの酒瓶(中身は透明だったと思う)を持ち出してきて、プラコップに酒と水を入れて水割り作って、それを客に差し出しかけ止め、ガーッと一気飲みしていました。アニィ…と思わず爆笑。
ピンクの大判花柄の、どっかで見た覚えのあるシャツを羽織って出てきたあっちゃんが「大好きなやつをやらせてもらいます」とかいって「唄」へ。アニィが最後にドラムソロみたいなのをガンガン叩いてました。そして今日はホールラストだからか「もう一発」といって、「ICONOCLASM」もやってくれました。いつもの手振りのところであっちゃんがこぶしを交互に突きだしていて、猫パンチ?とか思いました。いや、シャドーボクシングみたいで格好良かったんだけどさ。あれ、この曲の時はシャツは脱いでたのかな、腕が出てた気がする。
「次の曲は、死者の霊に捧げます。そしてみんなの健康と幸せと…(この辺ききとれず)…を、願いましてー(この辺でそろばんの「ねがいましてはー」みたいになってしまい、場内爆笑…)…愛を込めて送ります」と言う感じのMCがあって、「極東~」。このツアーラストはこの曲なんだなと思うと、反戦がどんなに重いメッセージかと思い知る。9.11からイラクとの戦争まで、ずっと続くメッセージなんだろうな。ラストの方の間奏で「殺し合いはやめろ!愛し合おう!」と、絶叫ともいうような声で叫んでたあっちゃん。ズキンと心が痛くなるような…そんなに私は戦争自体に関心があってニュースなども見ていた訳ではないので、そんな自分が少し恥ずかしくなる感じでした。最後にモニターに腰掛け、少し放心したようになって、それからやっと顔を上げて「ありがとう、愛を込めて…」と言って手を振ってステージから去っていった。その後ユータがジャンピング投げキッス、アニィが二階までスティックを投げて届かず、悔しかったのか戻ってまた投げ直してたりして、そうしてこの日のライブは終わりました。

今回も最後の「continious」まで聴いてから名残惜しく席を立った。帰り支度をする人々のはしゃいだ顔とか声とか、そんなのを見きながら、ちょっと感傷にふけってしまったりして、帰りは誰にも連絡を取らずに渋谷を抜けて、いろいろな事がぐるぐる回る頭を抱えたまま帰路についた。

 

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MCだけちょっとメモってみたので、かなり完璧かな? でもあっちゃんのしゃべる声はぼそぼそしててちょっと聞き取りづらいです。
今日のあっちゃんは声は少し枯れてたようだけど、歌はかなりちゃんと声が出ていました。NHKホール自体の音が固い感じなのかなぁ…Redroomのときもガリガリしてるなぁって思ったんだけど…ステージはモニター前があいていて広くて使いにくそうだった。
跳ね、踊る若々しいあっちゃん。そして戦争に関する発言と、両手を体の横に開くとか、腕を上下して羽を広げて飛ぶような仕草が印象に残りました。手を広げるって言うのは、自分をさらけ出す動作で人を受け入れる動作だよね。前回の時には自分を抱きしめるような脇を締める動作が多かった気がするから、やっぱり計算する部分もあるだろうけど無意識なところで、たぶんそんなふうに動作も違うんだろうなと思ったりする。
反戦をステージの上からあれだけハッキリと唱えたというのはちょっと驚きでした。神戸の時もそうだったけど、今回のは「BUSTER」とか「Sid~」とか、曲がそういうのだったというのもあると思うけれど、政治的なことでこういう事をアーチストみたいな人が公然と言うのは日本ではあまりきかないことだから(政治のことは言わない方がいいみたいな風潮もあったりするし)。だからこそ「極東~」のリアリティのすごさは作ったときの数倍にもなってる感じ。ずっと戦いとか凄惨な世界のことから顔を背けず、「俺に何が出来るか」と自分に問い続けている…そういうのが出てきているのかなと思います。どうしてそれを言わなきゃならなかったのか、どうしても言いたいような心理になっていたのか、雑誌のインタビュアーの方にでも聞いて欲しい気がします。

そして皮肉なことにこの翌日、バクダッドは陥落して…戦争は一応集結したようで、何だか本当にこのバンドって…って、思わずにいられません。ハウスツアーはどんなふうに来るんだろうなぁ、かなり楽しみです。