3/20にアメリカのイラク攻撃が始まって少し憂鬱な気分になっていた。ちょうどその日に大阪、そして2日後のこの日のライブ…。
このメニューがなんて皮肉なことになってしまったのだろうか。極東のこの国にいる私には戦火も砲撃もテレビの向こうの光景でしかないけれど、心配してしまうのは松戸初日から戦争に関することを口にしていたあっちゃんのこと…今日はどうなってしまうんだろうと思った。

10年以上ぶりの神戸、ふらふらとそごうを抜けて5時過ぎに会場に行く。ビルの中に会館があるのかきれいな外装とエスカレーターで入口に上がっていく感じが面白い。3階まであるけど、全体としてはこぢんまりした結構可愛いホールという印象、木の温もりが感じられるような内装だ。
今日の席は、何と2階の今井さん側の張り出し、というのかバルコニーのような席だった。まるで鳥の巣のように壁から突きだした丸いバルコニーが左右の中2階、2階、3階と各3個ずつ、そこに椅子が1列、4個ずつしかない。外国のオペラ劇場とか歌舞伎の桟敷席みたいなボックス席という感じだ。チケットを探して売買掲示板に書き込みしたりヤフオクとかもいろいろ見ていたのだけれど結構良い値段がついているし、1階、2階はどこにでもあるけどこんな席で見られることは滅多にないぞと思ってチケを譲っていただいた。
花道が真下になるので今井さん側の花道はちょっとしか見えないが、そこ以外は結構よく見える。前回は2列目で近すぎて確認できなかった幕の文字も、それが色が変わるのもハッキリわかる。幕って2枚重ねなのね…途中で1枚だけはがして、本編でまた1枚落ちる、と。
SEの「Continue」が、ドカドカとしたリズムに変わり「ナカユビ」が始まった。爆音、今日はなんだかリズム隊の音がしゃりしゃりと響く、低音が良く出ている感じだ。光の洪水、曲が始まっても薄い幕1枚で隔てられているのが何ともどかしいことか…。
あっちゃんはポップジャムの時の裏地が赤いコートに、下は群馬と同じレザーの1分丈シャツ、同形パンツ、中はモナリザ・ツアーT、ドクロネックレスは首の高めの位置にあり、手首には黒輪ゴム。今井さんが黒っぽいスーツみたいな奴で、ヒデも黒っぽいコート、ユータとアニィは群馬と同じで、ユータの腋の下がやっぱり開いていました。
 続いて「残骸」「MONSTER」といずれも群馬で見たよりパワーアップして慣れた印象。そしてやっぱりその次に嫌でも注目…「Fucki'n War」って聞こえたのですが、そんなことを言って「BUSTER」。何かやたらとリキ入っていた気がしました。手振りや動きの一つ一つで、どうしてこの人はこうも世界を作っちゃうのか…今井さんの番になるときに、ピッと今井さんを指さすのを今日もやってました。
そして「ふんばれ神戸!」などといったあと、「Love&Peace」と叫び「無知の涙」へ。この辺はもういやでも聞くしかない。

「マシンガン抱いた少女~」とマイクスタンドを抱き、ブリキの兵隊、でカチコチと人形のような動作。この状況で聞くとこの曲けっこう痛いよ、あっちゃん。
「LION」のイントロのギター掛け合いもいい感じになってました。群馬では結構音ボロボロに感じたからここのゾクゾクする感じは嬉しかった。あっちゃんが右から左へ、そしてやたらとジャンプして良く動いていて、いやーとても37には思えない、27の間違えじゃ…って思うくらい若々しい感じでした。「カイン」も今日はいい感じで声が出ていて、ピンクっぽい照明に手を広げた姿が映えました。どこか遠くを見る目で、最後は肩にマイクスタンド担いでました。ラストのとこでハミングみたいなの少し入れてたような気がしました。
「SEXしよう、Fuckしよう」といって「限りなく鼠」…足元のオレンジ色のライトを振り回したり狂った印象。これもやっぱり群馬よりいい感じで、ベースの音がやっぱり好きなんで、間奏のところとかゾクゾクしながら聞いていました。
「Asylum Garden」ではあっちゃん、コートの赤い方を表にして闘牛士みたいに掲げて歌っていて、何かちょっと違うかも…?と。後半では今井さん前あたりで頭からコートの赤い方を向けて被り、「やり続けろ~」と四つんばいで這いながら歌う。黄色い光の中の後ろ姿が、ライトの中に吸い込まれていきそうだった。
「Tightrope」の時に、マイクスタンドが後ろにもう1本あるのに気が付きました。なんか顔が付いている?仮面みたいなので、着物を羽織っているみたいな感じ…。前にそれを持ち出して、なんだか手でごそごそとセッティングしながら歌っているのだけれど、あのー、あっちゃん何がしたいの?って感じで、ごそごそしてて歌に集中できてない感じでした。どうも変な感触…別の表現を模索してるのかな? こっちもその動きが気になって歌を聴く体勢になれないままで、声を頼りない不安定な感じに聞かせたいのかな、と思ったりした。
前回、マイクスタンドと遊んでいた「BLACK CHERRY 」では、スタンドを抱かず、左右に色っぽく歩き回りながら歌ってました。前のモニターに腰かけ、股間あたりを触ったり仰け反って少し膝を内股気味にしていて、座り姿勢が女の子みたいでちょっとセクシーだったです。
「愛し合おう、殺し合おう…」ってちょっとドキッとするMCの後、「GIRL」。最初の一節の後、「神戸!」って叫び、手を上に上げて、あっちゃんは手拍子を強要してました。しかもジャンプしながら手を上で叩いていて、まるで子供番組の体操のお兄さんって感じだった。嬉しそうに飛び跳ねている様がなんだか可愛らしくもあったりして、手拍子は最初、うーんと思ったけど、歌の時はしてないから、こういうのはまぁアリでいいんだろう。ジャンプはアリなのかな?ちょっと笑えたんですけど。
そして聞いてはいましたが、「Baby, I want you」が1曲増えてました。何かこのノリを聞いちゃうと自然と体が動き出す感じで、だから入れたのかな、流れが良くなった気がします。やっぱり間奏辺りでユータが出てきて、あっちゃん前のモニターあたりで弾いていたら、あっちゃんに後ろから羽交い締めみたいに絡まれて弾けなくなっていた。ユータが嬉しそうにニコニコしていて、楽しそうだ。最後は何度か「Baby, I want you」とうたったあと、客にも歌わせて何度かして「ファンタスティック!」と言ってました。
続いて「LIMBO」…群馬ではいまいちノリきれない感じでしたが、2階からのせいか、それとも慣れなのか照明とのマッチングも良くてガツガツときました。そのまま「原罪」、「突き刺す」とこれも早い曲でガーッと来て、気持ちいい~とぼーっとノリながら聞いていました。短いからあっという間に終わるもんだね。
そして「掛け合いをしよう、森のくまさんと同じ要領で…」といって「愛ノ歌」。あ、あっちゃ~ん、その口から森のくまさんですか…。「愛の」「歌を」と、群馬同様掛け合いのようにして歌ってきました。今井さんだかヒデさんだかが、「愛の」ってコーラスしてるのね。モニターの字が流れるのも、今日はあんまり気にならなかった。しかしよく考えると、掛け合いが「森のくまさん」とは違うぞ、あっちゃん…。「俺の上で君が…」と、モニターに寝そべったまま、歌っていましたが、声がやっぱり出しにくいのか、「さぁ愛する人よー」と慌てて起きあがって声を出していました、
そして本編ラストは「Mona Lisa」、どうも今井さんのギターの音が狂っている気がしてどうにも、こういう音でいいのかなーと思うんだけど、まるで「Climax~」バージョンの「Kiss me~」を初めて聞いた時みたいな違和感が…。群馬の時はあんまり気にならなかったんだけど、今回ここの今井さんのギター音が変だーと思いました。トラブルじゃないか?確かフライングV。途中なんか変な機械を操作していたので、ギターがダメになってテルミンのスイッチでも入れたのかと思いましたが、そのあとまたギターを弾き出して、結局謎のままです。

アンコールはやっぱりあっちゃん抜きで、イントロで今井さんがハワイアンぽいフレーズを長めに弾いてから「シド~」へ。今井さんの歌いっぷりも慣れて堂々とした感じになっていました。「アンダーヘアー~」とかって、手の平を上にナカユビ挙げてたし「その角度が…」って。腕をグイっと突き出すように下の角度を作り、どこだったかフラダンスみたいに両手を前でゆらゆらさせたりフリがついていて、あらー、かなり歌い慣れたね今井さんって感じがしました。歌うときはあんまりギター弾いてませんでしたが、それでも前回よりは弾いていたような気がします。
そしてあっちゃんは袖のないモナリザ・ツアーTで出てきました。おーと思ったら、グレーの着物を羽織ってしまい、「メリーさんの羊」の早弾きから「ドリー」へ。
「破壊、そして誕生…」と言って「idol」。どうしてもヒデさんが弾くはずのシンセの音が、ギターから出ているような気がして、ギターシンセかとやっぱり弾いている手元を見てしまいました。どんな音が出ていて、どれがSEなのかわからないこの無能な耳を何とかして下さい…。あっちゃんに去り際「気をつけて」みたいな事を言われてしまったので、これで終わりか…と一瞬思う。

アンコール2回目、あっちゃんは留袖でしたー。下はツアーTだけだったような。あの衣装の上に着物を羽織るという、ちょっと考えるととんちきなんだが、着物やっぱり似合いますね。それで「狂っちまえよ!」って「MAD」やられると…裾を振り回して、回っていました。
そしてそして…「今夜、極東より愛を込めて!」と2回言い、「愛を込めて…」と。もうこれは今日は聞くのが恐かった、そしてまたこんな状況だからこそ聞きたかった「極東より愛を込めて」。赤い光の中で黒い着物で立つあっちゃんは、一体今何を考えてこの歌をうたうんだろうって深読みしたくなるくらい気迫のこもる様子で、しっかりとステージに立っていました。こんな風に心配され、かつ興味本位で見られるのは本人は嫌だろうなと思うけれど、それでも考えてしまうのは、そのことで…。いつにも増して迫力のある歌いっぷりに、嫌でも鳥肌が立ってくるような、たぶん私自身が戦争モードだったから余計に、そんなふうに聞いてしまうのかもしれないけれど、この迫力がもう凄すぎた。間奏の少し前に一番前の人にマイクを取られたのか、差し出したのかして、今井さん前のマイクに飛びついて歌っていたのと、最後の方で黒留袖で今井さんを後ろからくるむようにしていたのを覚えているだけ。もう一緒になって歌ってました。「愛を込め歌おう、極東の地にて…」。なんて皮肉なことに、それが唯一今の私たちに出来ること。
最後にも「Love&Peace」と何度か叫んであっちゃんは去り、アニィが2階までスティックを投げ、ユータがヒデのマイクのところに挟んであったピックを取って投げたりして、そうして神戸のライブは終わりました。

終わってぽーっと椅子に座ったまま帰っていく人々を見下ろして、流れている最後の「Continious」を聴いていた。あまりに静かな終焉。さっきまでそのステージの上にあったことが夢だったみたいな、映画とかを見たあとのような気分。モニターに「MonaLisa OVERDRIVE BUCK-TICK」と黒画面に白抜きの文字が浮かんでいて、それを縁取るリボンのように人が二人いるモニュメントが浮かんでいる。全部終わってしまったステージは静かで、終わりまでそれを聴いてからゆっくり帰り支度をした。

 

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ライブ・パフォーマンスの記憶がぶっ飛んでいて覚えてません…うろ覚えのままです。嘘書いてるかもしれませんがご容赦下さい。
あっちゃんがヒデに水かけるぞって感じでコップ掲げてからんで、ぶつかって水をかけて、ギターとか手に水がかかって、あーあって感じでヒデがぷるぷるしてたのとか、最前の客席から白いものを手渡しで押しつけられたあっちゃんがそれを股間で数回擦って客席に投げちゃったのは最初の方だったと思うけど…どの辺だか覚えない。

ただもう2週間前より音は格段に良かった。ノリになれてきたのか「LIMBO」「原罪」辺りの早い曲がガンガンキましたね。照明と相まって、本当に忘我の境地に連れて行かれました。そしてやっぱり戦争関連の曲が…願い、祈り、そして怒りとか、言いようのない感情の置き場を求めるように吹き出した感じで…。そして不思議なことにそっちが強調されていくと、反対に「BLACK CHERRY」とか「愛ノ歌」みたいな、愛に縋りつく感じの曲が対極で同じように際だつんですよ。
そして「極東~」はもうノルどころじゃなかった、ただ棒立ち…。「見つめろ、目の前を 顔背けるな」と、歌う本人はしっかり前を見て、逃げも隠れもせず、着物を羽織ってモニターの上に立ち、怒りと悲しみを叩きつけるように…今の私の象徴、みたいな気がしてきた。何も出来ずにただ「戦争は嫌だ」と思っているだけで、何も出来ないふがいなさにただ唇噛むみたいな。だけどそれでもいいのだと思わせてくれた。嫌だと思っているだけでも、狂った世界でもまだここ極東から「愛ノ歌」を歌うことは出来る。この極東から何をすればいいのかと考えることだけでもする価値はあるとかそんなことを思ってしまった神戸でした。
 

日々空爆だとか侵攻だとか、いろいろなニュースを聞く。他人事だと思えば全て、テレビの向こうのことは作り事みたいだ。だけど…ガソリンはここ2週間で7円も上がってるし、印刷屋だから紙もまた値上げなんて話が来たりして…対岸の火事じゃないよ、本当に。
目の前を見つめよう、顔を背けず、そこに立って行く末を見届ける目だけは持ちたいなと、そんなことだけ思った。