「今世紀最後のライブ」

 

毎日が慌ただしすぎて都内行きの電車に乗ってからやっとライブに行くんだーという実感がわくぐらい。

武道館もずいぶん久しぶりだなーと思ったら、97年12月にSSL・Type零型で行って以来(ビデオ録りのあった98年の5月はチケット取ってたのに行けなかったので)、実に3年ぶり。今日も年末だから行けないかなーと思ってたんだけど、12/29って、東京ドームで復活した日なんだよね。私が初めてファンでもないのに連れられて見に行った東京ドーム…あれからちょうど11年経つのかなぁってそんなこと考えて、何か感慨あってチケットとってしまった。
 

2階席だから、全体を見通して少し冷静になろうと思ってたのに、チケット片手に席を探すと黒い幕がかかっていて席がない。聞くと席を振り替えられてしまったようで、チケットを交換してもらったら北西の1階B列…何のことはない、バックステージの入り際。真横で舞台への出入り口のちょうど真上あたりと思っていただければ…。ただ実質最前列だし、ここって何だかすごくオイシイ席だった。
座ったら下に機材が見えた。今井さんのエフェクターやらギターが全部ずらーっと並んでて、赤まいまいから、フライングV、グレッチの四角いのから金色・銀色のスタビくんまで、全部で七基ぐらいのギターがならんでて、しかも金具もボディーもピカピカに磨かれて光ってる。ちゃんとその脇にメンテスペースらしきものもあり、セットリストがオペラグラスでのぞいたら見えてしまいました。ステージの上がり口は階段。アリーナと1階席のちょうど中間ぐらいが、舞台の高さだからちょっと見下ろしつつ、後ろが丸見え、ステージの上ってこんな風になってるんだぁって思いながら、後ろにいくつも建っているライトの鉄塔やクレーンカメラに目を奪われる。何だかこれではまるで参観日にきた父兄のようではないか。・・てことで、今回は客なんだけど、裏が見えてしまったので、スタッフのような感覚もありでどうも妙な感じでした。隣が5人ぐらいと後ろの列に4人ぐらい全部男の子で、おかげでいろいろと。

 

ライブは7時過ぎ開演。客電が落ちてSEが響く中、下を見ていたら懐中電灯で照らされた階段をメンバーが一人ずつ上がってくる。本当に入ってくるところのシーンから見える。舞台からメンバーが見える瞬間の歓声が、他人の事のように聞こえてしまうほど。

アニィ、ユータ、ヒデ、少し間があって今井さんが入りながらギターを受け取る。今井さん、何か髪が灰色、赤いジャケットにその下が黒っぽい胸フリルのブラウスに、ズボンが赤、白と黄色の混ざったような色に黒のダイヤ柄、すごーく派手。でも似合ってた。そしてそこから少し間があって、出てきたあっちゃんの肩が細い。浅見さんをはじめ,そのあたりにいたスタッフさんが結構体格のいい方ばかりだったので、その間を抜けてステージへ出ていくのを、ひゃーって感じで見てしまいました。髪はストレートで肩に掛かり、真ん中分け(長くなっちゃったね、髪。悪の華の頃みたい)。黒のジャケットにシースルーの袖フリフリブラウス。その上にベストみたいなの着てた?ボタンがあったんだけど判別不明。下は黒の皮パンでした。アニィは青のジャケット、ユータは襟の周りに鋲付きの茶色っぽいジャケットで、髪は後ろへなでつけてあったよう。ヒデは黒系の長めのコート、髪は金髪で赤の皮パンでした。ヒデさんながーい足で何度もスロープに来ては飄々と弾いてました。
今回はもう細かいところ覚えないです。全員がステージに乗って曲が始まって、照明が照り映えたと思ったとたんに武道館が巨大水族館と化してました。客席が全部見渡せるのでメンバーの見る武道館の姿が少しわかったような感じ。球形の天井から客席まで、会場全体が深い青。私がバクチクを思い出すときについてくるのは、深ーい群青がかったこんな青、そして一瞬にしてバクチクの世界。もう何しろ照明、横からだけどすごくきれいでした。それに照らされて泳ぐように歌い、舞う人も。冒頭「グラマラス」その1曲で、ふわーって何か気持ちよくなっちゃって、ノルのも忘れたように見ていました。
 
「前から後ろから来て」、とMC一発目からこれかよっていう。途中どこでだったか「ケツはどうだい」ってのもあって、バックステージ、かなり気にかけていただいてたよう。後ろ向きで歌ってくれたり、ユータに向こうむいてやれよと言うように指を差しててユータも後ろ向いて手を振ってました。
「唄」「CHECK UP」、見てたはずですごーく濃くって格好良かったのになんか文にならないのよ、今回全体的に。今まで以上にあっちゃんしか見てない、目が離せなくなっちゃって。声がよく出ていました、伸びのある晴れやかな、そして表情のある声。何してたっていうのは、この際抜いて印象だけと思ったんだけど、それも書きようが無くて、すごく記録しがたいライブだったかもしれない。記憶力が飛んでいるのか・・。
「サファイア」の声、CDとは違うノリの、だけどCDより好きかもしれない。ジャケットの肩落としてシースルーのシャツの腕まで見えてました。ちょっと色っぽい感じ。このあと上着脱いで何曲か歌ってました。
「DOWN」「ASYLUM~」は歌詞を間違えて2番から歌ってしまい、ちょっと泣くしかない。これビデオになっちゃうのよー、このままっ!好きな曲だけに何か悔しかった。その曲ラストを長く引っ張ってそのまま違う音へ。「キラメキ…」そうそう、この音よっていう、床からあがってくるようなベースの音、アニィの入りのドラム音も好き。そして闇を切り裂くような、あの声。
やっと生で「ミウ」も聞けました。なんて言うのか、すごく、やっぱり良かったーとしか言えないですが、直に聞くと感情とか歌の表情みたいな、CDでは伝わりきらない物が聞こえる感じ。切ないけど、明るさのあるバラード。
「ドリー」は大盛り上がりで、今井さんが巻き舌で声張り上げてて、一部あっちゃんより大きい声に聞こえてきました。今井さんがんばっとるーって感じ。これと「Death wish」はもう会場のりまくりで、聴いても客席見てても楽しかった。

急にわーっと出てきたカメラが一人に一台ずつ付いて、なんか邪魔っけな感じもしたけど「撮られる」ってなんか大変なんだろうなぁって、カメラを気にしてちょっと動きにくそうにしている姿を見て思いました。
ワーッて感じで盛り上がってたのが、次に「カイン」か来たとたんに一気に収束する。あれって頭から語りかけるように歌が来るでしょ、今まで盛り上がってたのが嘘みたいに波が引いて、聞き入る感じになっていくのが見事。何かCDの時はあんまり「カイン」好きじゃなかったんだけど、この間のBLITZの放映と今回のライブで、歌い方など含めてすごく好きになった。そして「女神」、天井から一条の光のようにライト、横からも。その中でもだえるように歌う、狂気の予感をはらんだ静けさ。ここだけは他の誰も定位置を動かず、歌中心になってる。
「FLAME」は今回本当に「誓い」に聞こえるような力強さ、一番高くて声のでにくいところまできれいに出てたような。気持ちよかったです。最後のとこってテープ。歌ってもいたけど、何か聞き難かった。
 「じゃラスト、みんなと」といって、「BLAN-NEW~」おや、これで終わりじゃないのに?

会場内のびっくりした様子が伝わりました。あっちゃんが手を上に上げて手拍子を始めると客席も合わせる。客席からの手拍子が冒頭は結構大きくて、やだなと思ったけど、次第に止まる。声に、音に引きつけられて見入っていく。そうさ、演奏で見せられるバンドには、手拍子なんて不要だ。いい音を自分の手拍子で消してしまう愚を客が知らなくちゃ。そうやってコントロールできるようになって行くんだよね。
ラストなんて言ってたくせにそのあと2曲ありました。「Baby, I want you」と「RHAPSODY」。もうこの辺て、メンバー左右歩き回りで、「Baby~」ではあっちゃんがユータのところへ行って、前に出なよって感じで呼んでた。そしてユータが真ん中に出てきて4人が真ん中に勢揃い、まばゆい。何かねぇ、おおーって感じで、仲良しバンドのグルーブ見せつけられたよう。音の混ざり具合も気持ちよくて、5人で一つの音を作ってるんだなぁって、それが出来る限りこのバンドは安泰だよねって、本当に微笑ましくなっちゃいました。
私初めて気が付いて、CDも確認しちゃったんだけど、「RHAPSODY」で途中今井さんが、「聖なる現実の名の下で」「心から君に誓おう」ってとこ、コーラス入れてたのね、なんか意味深と深読み癖がついつい。「千切れ破れ・・」と本当に千切れてしまいそうな歌い方。
いつもなら最後までいないで戻っちゃうだろうあっちゃんが最後までステージにいて、「ありがとう」などと呟いてステージを下りてくる。ここからが本領というか、この席のオイシイとこで、アリーナ側の舞台から消えたあとも、階段下りるところまで、下のぞくと見えるのだ、しかも超至近距離で。男の子がたくさんいて「あつしさーん」などと騒いでたから、あっちゃん上向いて、すごい晴れやかな顔してました。今井さんとか、ユータ、アニィとかも一瞬上見上げて通るので、すごく得した気分でした。
 
アンコールがまた良かった。1回目「ドレス」と「idol」は、本編の延長みたいな感じに思えてしまった。ドレスって何年ぶりだろうか、当時山ほど聞いたのにあのときのような感触ではなくて、本当に「この愛もこの傷も懐かしい」って、そんな感じな分だけ、過去の古傷っていうのが深いんだなぁと思わせる。「idol」はRedroom2097で、あっちゃんが病気して復活したあのときの武道館を思い出した。あのとき「白い病室縛られてた」がすごくハマリで、もうあれから4年近く?すばらしい破壊と再生。気持ちよかったです。
2回目は「ダンスしよう」といって「Ash-ra」、このときはステージの左右へ走りまくりで踊るように歌ってました。

そして「この曲が20世紀最後になるとは思ってもみませんでした」とお茶目に言って「PHISICAL NEUROSE」。

私も思いませんでしたよ、この曲で自分がこんなに興奮するとは、今聞いてもちっとも恥ずかしくないじゃん。今弾くと軽い音でもないし、テンポが早くって音が重なって詰まった感じになってるから、しかも歌詞完璧だった。中間のヒデの「ハリーアップモード」の一声も利いてます。
最後は曲が終わる前に戻ってしまったあっちゃん、隣近所の席にいた男の子たちが「お疲れさまです」なんて騒ぐんで、やっぱり上見てちょっと笑ってたかも。体育会系なノリ、いいなぁ。

ステージでは残り4人が最後にまだバタバタとシメてから戻ってくる。戻り際、アニィが「良いお年を」、ユータが「また会いましょう」てな事をあっちゃんのマイクを拾って一言ずつ叫んでいきました、お茶目な樋口兄弟。そして20世紀最後のライブは、幕を閉じた。
どこだったか、「21世紀もみんなとやっていきたいんで…」なんてMCもあったよなぁって、いまちょっと思い出した。

 

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全体の印象はシャープでラフなライブ、って感じです。そんなに凝ってないし大仕掛けもないし、特に小道具もなし。

多少ビデオ録りで緊張してるのかなぁとは思えたけど、まとまりもよく結構ビデオが楽しみな感じです(歌詞間違いだけがちょっと悲しいけど…まだ言ってる)。
斜め後ろから見てたせい、ってわけでも無いんだろうけど、なんかメンバー同士、すごい一体感あるなぁってそういう印象ありました。音を介して一体化してるみたいな、それに照明は噂通り斜めからでもすごくきれいでした。バックステージがあるから、セットとかどうなるんだろうって思ってたけど、そんなにステージ上は違和感無く思えました。サービス良かったよ、後ろだの横の方まで結構来てくれたもの。
ステージドリンクも見えて、さすがに酒は飲んでなかったと思うけど、氷水とは別に茶色っぽい液体か何個か運ばれていました。麦茶、ウーロン茶、それともバーポン? 中身は不明ですがそっちを飲んでるのはちょっと見ました。何なのか気になる。
 

これで20世紀が終わり、なんて聞いてると、20世紀で終わっちゃった某バンドとかをちょっと思いだした。最後じゃなくて21世紀もずっと続けていけるってことが誇らしい、そしてとても嬉しい事だと思う。

ツアーの終わりっていつも終わって欲しくないって感じだけど、今回は寂しい感じはしなかった。「次」がわかっているからかもしれないし、それはそれで結構大変な挑戦になるんだろうと思う。復活11年の感慨なんてどっかいっちゃってたけど、今回演奏したのってラストの1曲をのぞいて全部復活以降の曲だよね。あそこで潰されないでいてこうして今まで停滞せず続いてくれて、そして未来へ続いていける。それがもうただ嬉しいことだよね。
良いライブをありがとう、そしてまた来年もこうして楽しい時間を過ごさせてもらえることを祈っています。