ツアー初日が大阪、ずっと待ち遠しくてドキドキしっぱなし、ハッキリ言って舞い上がっていた。

前夜から大垣行きの夜行電車で行ったので、ほとんど徹夜同然のまま万博公園の遊園地で遊んで、国立民族博物館なんかを歩き回り、かなりフラフラの状態で見に行った。
何にせよ久しぶりのB-Tだ。しかもシングルすら出てないまんまで、新曲攻勢だったらどうしようかと思うとなかなか怖い。しかしそれ以上に楽しみで仕方がない。

6時半ギリギリに会場到着、ここはまるで横アリの小型版みたい。
場内には尺八か笛みたいな音色が流れ、両側に石膏像、ヒデの側にキーボード。そうかキーボード本当にやるんだーとまじまじ見つめながら開演を待つ。
客電が消えた途端に立ち上がるのも、歓声が上がるのもいつものツアーと同じ、違うのは真っ白に焚かれたスモークの向こうから出てきた今井さんがギターを弾きながらステージを闊歩する。遠くてモヒカン頭の判別は付かない。スモークの向こうから一人ずつ出て来たようで、見えないながら歓声が一段と高くなる。
あっちゃんは紅いショート丈のジャケット、最近赤なんて珍しいなぁと思ったりしたが、脱いだら黒のTシャツだった。ラフになったなぁと何故か感心する。1曲目が赤いライトのカクカクした動きが妙に印象に残っている(例の93曲目D.T.D」)、うわぁーって感じの浮き上がるような気分。
次の曲でいきなりタンバリン片手に歌い出したのには少し焦る。アニィとユータにも以前よりスポットが当たっている。いきなりの語り(神風です)もいつにない饒舌なMCも目新しくて珍しい。あっちゃんがいつになくよくしゃべったし前向きにも見えた。何か吹っ切れたのかなーと思ったんだが、ただ単に居直ったのかもしれない。
しかし「まだCD出てないんですけど」はいいが「まだ歌詞も覚えてないんですけど」って、言わなきゃ誰もわからないのに。

久しぶりのせいと、新曲ばかりで客ものれないでいるせいか、「なんか変だぞ、みんなも」なんてMCも聞けた。客席もバンドも双方がちょっと戸惑っていた感じがした。
珍しいのは今井君のギターがトラブってメンバー紹介から少し間が空いたとき、今までならきっとこんな時何か言うとかはなかっただろうけど、「ちょっと待って」「ギターがトラブってるんだ」とか言ってくれて、そして間をつなげるために「じゃあ、みんなで待とう」とボケをかますと、アニイはドラム台から降りてきて真ん中の階段のところでごろりと肘を枕に寝そべる。ユータも定位置から中央寄りに出てきてしゃがみ込む。なかなか今井君は出てこなくて困ったあっちゃんは「今までみんなと話なんてしたことなかったもんな」と言いながら、「みんな元気か」「元気ー」「楽しいか」「楽しいー」と客席と会話、そして「今は楽しいよな」と確認したあとに「俺も楽しい」と繋げる。この人がステージが楽しいとか言うのは、あんまり聞いたことがない気がする。
後半になると、1つ1つポツリと曲名を紹介しながらの演奏、少しファンもメンバーも緊張が解けてきたようだ。

深夜ラジオのCMでサビだけ聞いていたので、辛うじてわかったのはシングルの「ドレス」、そこでうわーっと思い、そのあとの何曲かで、ため息と共に格好いいよーと呟きまくる。
 全体にドラムがハードにガラガラ、ベースはブンブンといった感じで、今井君もいつもよりちゃんとギターを弾いていると思った。キーボードを弾くヒデはまだなんだか指の動きが固そう、もうすこししたら慣れてくるかな。
 あっちゃんの声はマイクにデジタルっぽい処理がしてあったりして、無機質なのにその中から情念みたいなものが湧き出る感じ、近寄りがたいのに抱きしめたくなる。何だか聞き終わった瞬間にもう一度聞きたいと思ってしまったりして、これ6月の下旬まで新譜お預けっていうのは酷だなぁって凄く思った。
 力強くなった歌声と、音の1つ1つが粒だった感じ、照明も更に綺麗になっているし、ライトの動きもいい。「Climax~」のあのビデオがすごかったので、あれ以上を作るのは結構大変かと思ったりもしたんだが、そんなことはないみたい。
知っている曲が2.3曲しかなくて、他の全ての音が少し凶暴なザラザラした感触に溢れていた。でも格好いい、この音を私の耳と歓声は受け入れられる、大丈夫だとおもえたのは一番嬉しかったかもしれない。


 最後の方には「知ってる曲がないなんて、こんなコンサートあんまりあるもんじゃないから、忘れないでください」なんていう、ちょっとぎこちないMC。うん、忘れない、忘れられない新しい誕生の日だ。新しいB-Tに初めて出会えて、それがとても好きだと思えるのが幸せだった。
 ラストの曲は「die」、私はこれを初めて聞いたときから好きだと思った。今まであっちゃんが悩み苦しんだ答えが少しは出つつあるのかなと思わせるやわらかな曲。絶望の中の希望、諦めのなかの薄暮。明るく向き直ったわけではなく、行き先は「死」なのだけれど、それは生々しく差し迫った衝動的なものではなく、いつか人々が自然に行き着く優しい終焉、美しい終わりへの序章。「人は生まれた瞬間から、日々死に向かっている」なんて言葉を思い出させてくれて、ふわふわとした空間に抱きしめられたよう。ああ…なんて思いながら、不覚にも涙がぽたぽたとこぼれていた。歌詞の全容はわからないながら、聞き取れた限りの歌詞から伝わるものは、決して自滅願望なんかじゃなかった。それよりもっと強く、傷つきながらも向き直り、居直るように「生き続ける」ことだと思った。

 アンコール1回目は「悪の華」「地下室のメロディー」、2回目は「JUPITER」「LOVE ME」。
 何故か音さえ違って聞こえる荒々しい1回目と、静かに歌い上げるグレードアップした2回目という印象。全体的に凄く印象のよいライブで、満足して帰途につきしばらく一人でにまにましていた。大阪まで見に来てよかったーと思い、ほとんど知らない新譜の音が、予想以上に変化に富んでいて格好良かったので、何度目か忘れたがまた惚れ直してしまったよ。