中野駅北口を降りて、サンモールのアーケード街を歩いていると、ユーミンのダンデライオンが流れている。 
 「中野サンプラザも閉館か」 
 大学生の想い出の一頁に浸りながら、安未果は見るとはなしに流れゆく店頭の品々を観ながらそぞろ歩いている。
 ふと、カラフルな秋の味覚と書いた幟が目に入って、あの時、この場所で別れ際に自分が言い放ったセリフが脳裏に甦った。
 安未果の頬に涙が溢れ、人混みの中で思わず立ちすくんで、一歩も前に進むことが出来なかった。 
 「やっぱり来てたのか」
 目の前には、あの淋しげな褐色の瞳をした別れた男が立っていた。