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最近観た映画のこと

シャーロット・ウェルズ監督の長編デビュー作。

2022年に良かった映画として挙げる人もいて気になっていた作品。

主演のポール・メスカルが、なんとアカデミー賞主演男優賞にノミネートされるという快挙。

ポール・メスカルはアイルランドが舞台のドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクした

若手俳優さんで、最近色々な映画で見かけます。

彼が演じる30歳の父親と、フランキー・コリオ演じる11歳の娘ソフィーが、

トルコで過ごした休暇のお話。監督の自伝的作品だそうです。

 

ウィキによれば、この監督さんは、スコットランドのエジンバラで育ち、

ロンドン大学とオックスフォード大で学んだ後、金融の世界で働いていたようです。

その後、ニューヨーク大で映画の勉強をしているという、なかなか面白い経歴の人。

監督はこの作品の前に3本の短編を撮っています。

その中の1本「TUESDAY」を観たところ、それも父親との関係について撮られたものでした。

 

この映画、地味だけど、とても良かったです。最後のほうはウルッときてしまいました。

2人の演技が良くないと成り立たない映画でもあるので、

ポール・メスカルが評価される理由は分かります。

ほぼ説明がないので、よく分からなかったと言う人もいるかも知れません。

特に驚くような展開がある映画ではないので、

ゆっくりと父の感情、娘の感情に寄り添う、ある意味贅沢な映画体験と言えるかもしれません。

この映画で描かれていない2人の過去や未来に思いを馳せてしまいます。

 

音楽の使い方が絶妙で、映像とリンクする歌詞なので、是非聞き取ってください。

 

北米の配給権はA24だそうです。

製作は「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス監督等が名を連ねており、

幸先のいい長編デビュー。

今回は、とても私的な映画ですが、次回はどんな作品になるのか楽しみです。

日本公開は2023年5月26日。

 

 


****ここからはネタバレです。鑑賞後にお読みください****

 

たぶん監督さんにとっては、お父さんの事が、

今だ解決されていない問題なのではないでしょうか。

この映画だけでは、お父さんがどんな人だったのかは分かりません。

太極拳や瞑想の本が映っているので、

哲学や宗教、東洋文化が好きな繊細な人だったのかもしれません。

若くして父になったり、精神を病んでしまったり、

故郷を離れなければ生きていけなかったりする人生。

当然、子供には大人の気持ちなど分かりようもないわけです。

それでも、ひどく落ち込む何か暗い、語られていない過去が、

まだまだあるようで、とてもツライです。

映画を撮ることが、彼女の痛みを昇華するセラピーであったとしても、

こんなにも評価されるという事は、多くの人に何かが届いているわけなので、

今後も父親のことを撮り続ければいいと思います。

それと同時に、早く別のテーマで、

明るく楽しい映画を作れる時が来るといいなとも思うのです。