女友達を押さえろと貴島は宣った。

「京子ちゃんの友達って誰かわかる?」

「琴南さんだね。」

「へぇ~、黒髪美人の?話したこと無いけどツンな感じであぁいうのもいいよねぇ。でも、意外な気もするなぁ。へぇ~。」

貴島の感想なんてどうでもいい。先を続けろと目で促すと小さく咳払いをして続けた。

「まぁ、女友達を知っていたことは及第点をあげよう。」

「それぐらいわかるだろう、普通。」

「いやいや、結構知らないもんだよ。趣味とかを通じて知り合ったんならともかく、それぞれの生活範囲が違うと全然だね。で、どの程度の仲良しかまでわかるかい?」

「程度?」

「そう、程度。たまにでかけるだけとか。悩みを打ち明けられるとか。生涯に渡ってつきあいが続きそうかどうか。」

「悩みねぇ。それはわかんないけど、生涯に渡ってっていうのはありえると思うよ。」

蓮はいつかのキョーコの誕生日に駆け込みプレゼントに敗北したことを思いだし苦い顔をした。貴島はその表情をとらえてニヤリとする。

「ダメダメ。生涯に渡ってつきあいが続きそうな女友達は邪険にしたら絶対にダメだから。扱い方によっては味方にも敵にもなる。敵にするとこれほど厄介な相手はいないよ。」

「敵って…。彼女の友人なら味方だろ?」

チッチッチッと人差し指を振りながら、貴島はわかってないなぁという顔をした。

「そう、味方だよ。でも、彼女の味方であって敦賀君の味方じゃない。そこは肝に命じておかないと痛い目をみるよ。例えば、敦賀君が浮気をしたとする。」

『浮気』の一言にそんなことあるわけないと貴島を睨み付けた。

「睨むなよ、例えばの話だろ。」

「例えでもイヤだ。するわけない。」

子どもぽっく拗ねる蓮に貴島は呆れ顔で続ける。全く、温厚紳士って誰のことだ?

「とにかく、何か敦賀君がヘマをしたとする。京子ちゃんが琴南さんに愚痴をこぼす。このとき、敦賀君が良く思われていないと『そんな男なら別れてしまえ』となるわけだ。行動力もありそうだから、いざとなったら別れる段取りまでつけてくれそうだし。京子ちゃんのためにならないと判断したらテコでも動かなそうじゃないか。」

なんで、話したこともないのにそんなことがわかるのか。蓮だってたいして話したことはないけれど貴島の言う通りの気がしてならない。俺から彼女を奪うならいないほうがいいか…なんて黒い考えが浮かぶ。

「今、なんか黒いこと考えたろ?ダメだって言ったろ。仮に敦賀君が全くヘマをしなかったとしても長く一緒にいると不満はでてくるんだよ。女子はねそれを誰かに言うだけでストレス発散になるんだから、口の堅そうな彼女の友達は大事にしなきゃ。いわゆるガス抜きだね。敦賀君と琴南さんが上手くいってれば、『こんなことを不満に思ってるから気をつけなさい』みたいなアドバイスもしてくれるかもしれないし、曲解思考を正してくれるかもしれない。不満の芽は小さいうちに摘んどかないとね。」

「不満があるなら直接俺に言ってくれればいいんだ。」

「直接、言えないこともでてくるんだよ。京子ちゃんって何でも我慢しちゃいそうじゃないか。我慢できるうちはいいけど、キャパ越えたら心が壊れちゃうよ。そうなってもいいの?」

そこまでなる前に言ってほしい。

「俺じゃダメなのか?」

「友達みたいな恋人もいるけどね。でも、男はどんなに頑張っても『女友達』
の代わりにはなれない。」

半信半疑だが、初めてできた彼女の友達を大切にしてあげたいのは本当だ。

「で、どうやって『押さえる』のさ。」

「そうだなぁ。京子ちゃんと琴南さんの時間を奪わないことだね。二人で出掛けたり電話したりしてるのを邪魔しないこと。それから、時々敦賀君も同じ時間を共有すること。」

「一緒に出掛けるってこと?」

「何もそこまでしなくていいんだよ。二人が会っているときに迎えに行ったついでに琴南さんも送ってあげるとか、少しお茶するとか、その程度でいいんだ。下手に馴れ合いすぎると浮気?とか思われるしね。理想は琴南さんの彼氏ごとお近づきになることだね。」

「ふ~ん。」

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<奏江、押さえられる?>

最近、敦賀さんがヘン、だ。

前は私がいても全神経をキョーコにだけ向けていたのに、今は私にまで話を振ってくる。この間なんてつい芝居について話し込んでしまった。役を掴みかねていた私はその言葉で救われた。キョーコに対しては『ヘタレ』の一言だけど、役者としてはやっぱりすごいと思う。何かあったらメールしてなんてメアドまで渡された。いったい、何なの?!まぁ、役にたちそうだからありがたくもらっといたけど。

本当にヘン、だと思うわ。