ピンポーン
地方での撮影のために今晩はホテルに泊まりだ。どこかに雲隠れしたかったが明日も撮影がある。この日を逃がす訳があるわけもなく、チャイムが鳴った。
憂鬱な気分でドアを開ける。開けたくない気持ちが強いものだからドアまでのわずかな距離を必要以上に時間をかけた。ドアノブを回す段になっても往生際悪くマネージャーでありますようになんて思ってしまう。
ドアを細く開けて相手をうかがうが、やはりマネージャーではなかった。ドアスコープから覗いて誰だかわかっているのに、それでも実物をみてガックリとする。
「もう、早く開けてよ。一応、俺も芸能人なんだからさ。誰かに見られでもしたら面倒くさいだろう。」
「別に無理しなくていいのに。女の子たちに誘われてたじゃないか。」
「う~ん、あの子たちもいいんだけどね。目先の数人より、将来のたくさんの女の子のほうが大事じゃない?」
貴島は当たり前のように自分が通れるようにドアを開けて蓮より先に部屋の奥へと進んでいく。手にしたレジ袋からビールやつまみを勝手にテーブルに並べる。
「ほら、早く。」
貴島は蓮が座るのも待たずにビールのプルタブを開けて口にした。いつまでも出入り口にいる蓮に目で合図をする。ここまできてはどうにもならない。諦めて貴島の向かいに腰をおろした。
「で、こないだはどこまで話したっけ?あぁ、そうそう。家でメシだけ食べて帰るって話しだった。なんでそんなオイシイシチュエーションなのにバカ真面目にメシだけなの?」
前置きもなく、直球で痛いところをついてくる。本当に勘弁してほしい。蓮が黙りこんでいると貴島が愉しそうに目を細める。
「京子ちゃんはすごいなぁ。抱かれたい男が抱きたい女は超天然鈍感娘なんて!」
「彼女は天然かもしれないけど、鈍感なんかじゃない。他人の心の機微には普通の人より敏感だよ。ただ、自分に好意を向けられるはずがないと思いこんでるだけで。」
「あぁ、なるほど。だから、誰に誘われても社交辞令だと思うんだな。本気でそう思ってるから断られても『受け流されてる』感じじゃなくて『本気で相手にされてない』感じしかなくて男は玉砕感を味わうんだな…。」
貴島はそこまで言ってフフフと笑う。
「敦賀君も素直になったね。『抱きたい』部分は否定しないんだ?」
蓮はごまかすようにビールを手に取り口に含む。
「京子ちゃん、綺麗になったもんな。色気が出てきた。それも聖女がもつようなね。不可侵の女神っていうの?あれじゃ、男が放っておかな…。」
キョーコの美しさを褒められのは嬉しくもあるが男の目線で褒められるのは許せない。それこそそんな目で見られただけで不可侵のキョーコが侵された気がする。ついつい睨み付けると貴島はそこで話の方向を変えた。
「じゃあ、最初からだな。どうやって京子ちゃんを食事によぶの?」
「どうって?普通に食事の誘いをするけど。」
「そんなわけないだろ?あの京子ちゃんが独り暮らしの男のところに一人で来るわけない。何か敦賀君だけが使える手があるはずだ。」
蓮はジトリと貴島を見る。イタズラをみつかってふて腐れた少年のようだ。
「俺…食べないだろ。彼女は食事は健康の基本だと思ってるから、俺が食べないと怒るんだよ。それに一番初めはラブミー部への依頼っだったし。」
「なにそれ。京子ちゃんは仕事のつもりでメシ作りにいくの?」
「はじめの初めは代理マネージャーの時だし、そのあとは俺のマネージャーが食べさせてくれって依頼してたからね。」
「さすが、LME。マネージャーも協力的だ。で、まさか今もマネージャー経由?」
「…そういうときもあるけど、俺からお願いするほうが多いよ。」
「お願いって…。それじゃ、仕事の依頼だと思っちゃうじゃないか。」
「…。」
ふて腐れる蓮に一応、慰め(?)の言葉らしきものをかける。
「まぁ、京子ちゃんを食べたいとは言えないもんなぁ。でも、なんかこうそういう雰囲気になったりしないの?」
「…。」
何も答えられずに、蓮はただひたすらビールを口に運ぶ。その姿に貴島は眉をひそめる。
「ホントに?ただのちょっとも?敦賀君が熱い視線をむけるだけで普通なら腰砕けだよ?!」
「…。そんなことしようものなら、固まるか蒼い顔して子リスのように震えるかだね。」
「はい?!震えるなんて、どんだけ餓えた顔したの?」
「そんなことないと思うけど…。彼女も落ち着いたら『嘉月が美月を見るような目』って言ってたし。」
「なら、わかってるんじゃないか。敦賀君が京子ちゃんをスキだってさ。なんで、そこから進まないんだよ。」
蓮はビール缶を手にしたままうなだれると深いため息をはく。うつむいたままボソボソと答えた。
「演技だと思ってるんだよ。」
「なに。?聞こえない。」
二度も言わされるのは屈辱だと言いたげに視線だけ貴島に向ける。
「だ か ら 演技だと思ってるんだよ。」
地方での撮影のために今晩はホテルに泊まりだ。どこかに雲隠れしたかったが明日も撮影がある。この日を逃がす訳があるわけもなく、チャイムが鳴った。
憂鬱な気分でドアを開ける。開けたくない気持ちが強いものだからドアまでのわずかな距離を必要以上に時間をかけた。ドアノブを回す段になっても往生際悪くマネージャーでありますようになんて思ってしまう。
ドアを細く開けて相手をうかがうが、やはりマネージャーではなかった。ドアスコープから覗いて誰だかわかっているのに、それでも実物をみてガックリとする。
「もう、早く開けてよ。一応、俺も芸能人なんだからさ。誰かに見られでもしたら面倒くさいだろう。」
「別に無理しなくていいのに。女の子たちに誘われてたじゃないか。」
「う~ん、あの子たちもいいんだけどね。目先の数人より、将来のたくさんの女の子のほうが大事じゃない?」
貴島は当たり前のように自分が通れるようにドアを開けて蓮より先に部屋の奥へと進んでいく。手にしたレジ袋からビールやつまみを勝手にテーブルに並べる。
「ほら、早く。」
貴島は蓮が座るのも待たずにビールのプルタブを開けて口にした。いつまでも出入り口にいる蓮に目で合図をする。ここまできてはどうにもならない。諦めて貴島の向かいに腰をおろした。
「で、こないだはどこまで話したっけ?あぁ、そうそう。家でメシだけ食べて帰るって話しだった。なんでそんなオイシイシチュエーションなのにバカ真面目にメシだけなの?」
前置きもなく、直球で痛いところをついてくる。本当に勘弁してほしい。蓮が黙りこんでいると貴島が愉しそうに目を細める。
「京子ちゃんはすごいなぁ。抱かれたい男が抱きたい女は超天然鈍感娘なんて!」
「彼女は天然かもしれないけど、鈍感なんかじゃない。他人の心の機微には普通の人より敏感だよ。ただ、自分に好意を向けられるはずがないと思いこんでるだけで。」
「あぁ、なるほど。だから、誰に誘われても社交辞令だと思うんだな。本気でそう思ってるから断られても『受け流されてる』感じじゃなくて『本気で相手にされてない』感じしかなくて男は玉砕感を味わうんだな…。」
貴島はそこまで言ってフフフと笑う。
「敦賀君も素直になったね。『抱きたい』部分は否定しないんだ?」
蓮はごまかすようにビールを手に取り口に含む。
「京子ちゃん、綺麗になったもんな。色気が出てきた。それも聖女がもつようなね。不可侵の女神っていうの?あれじゃ、男が放っておかな…。」
キョーコの美しさを褒められのは嬉しくもあるが男の目線で褒められるのは許せない。それこそそんな目で見られただけで不可侵のキョーコが侵された気がする。ついつい睨み付けると貴島はそこで話の方向を変えた。
「じゃあ、最初からだな。どうやって京子ちゃんを食事によぶの?」
「どうって?普通に食事の誘いをするけど。」
「そんなわけないだろ?あの京子ちゃんが独り暮らしの男のところに一人で来るわけない。何か敦賀君だけが使える手があるはずだ。」
蓮はジトリと貴島を見る。イタズラをみつかってふて腐れた少年のようだ。
「俺…食べないだろ。彼女は食事は健康の基本だと思ってるから、俺が食べないと怒るんだよ。それに一番初めはラブミー部への依頼っだったし。」
「なにそれ。京子ちゃんは仕事のつもりでメシ作りにいくの?」
「はじめの初めは代理マネージャーの時だし、そのあとは俺のマネージャーが食べさせてくれって依頼してたからね。」
「さすが、LME。マネージャーも協力的だ。で、まさか今もマネージャー経由?」
「…そういうときもあるけど、俺からお願いするほうが多いよ。」
「お願いって…。それじゃ、仕事の依頼だと思っちゃうじゃないか。」
「…。」
ふて腐れる蓮に一応、慰め(?)の言葉らしきものをかける。
「まぁ、京子ちゃんを食べたいとは言えないもんなぁ。でも、なんかこうそういう雰囲気になったりしないの?」
「…。」
何も答えられずに、蓮はただひたすらビールを口に運ぶ。その姿に貴島は眉をひそめる。
「ホントに?ただのちょっとも?敦賀君が熱い視線をむけるだけで普通なら腰砕けだよ?!」
「…。そんなことしようものなら、固まるか蒼い顔して子リスのように震えるかだね。」
「はい?!震えるなんて、どんだけ餓えた顔したの?」
「そんなことないと思うけど…。彼女も落ち着いたら『嘉月が美月を見るような目』って言ってたし。」
「なら、わかってるんじゃないか。敦賀君が京子ちゃんをスキだってさ。なんで、そこから進まないんだよ。」
蓮はビール缶を手にしたままうなだれると深いため息をはく。うつむいたままボソボソと答えた。
「演技だと思ってるんだよ。」
「なに。?聞こえない。」
二度も言わされるのは屈辱だと言いたげに視線だけ貴島に向ける。
「だ か ら 演技だと思ってるんだよ。」