キョーコは多忙を極めていた。
渡米し結婚を控えたたった2か月の間にドラマが2本、CMが4本、バラエティが数本、雑誌やメディアへの取材は数えられない。その間にもできるだけだるまやに顔を出すようにしている。もう以前のように店の手伝いはできないが二人が寝る前に帰れる時間であれば一緒に遅い夕食をとるようにしている。久遠が一緒に行けるときは久遠も一緒だ。とはいえ、終わり時間がまちまちで一緒に行けることは少ない。久遠とは朝食を一緒にとるように心がけている。油断するとコーヒーで終わらせてしまうので久遠の食生活改善と一緒の時間を確保するのにはいい案だった。
キョーコのマンションは引き払ってしまった。どちらにしろ、もうすぐアメリカで暮らすことになるし、できるだけだるまやの二人と過ごしたい。あんまり遅いときは社長宅に泊まっている。久遠も社長宅に滞在しているがもちろん部屋は別だ。始め、社長は同じ部屋を用意してくれていた。久遠が別室をと言うと怪訝な顔をされ、結局理由を白状させられた。このことでは一生からかわれ続けるんだろうと思うと頭が痛い。
久遠もキョーコほどではないがそこそこ仕事が入っていた。当初の目的どおり東京コレクションへの参加に雑誌の撮影、CMが2本。それに蓮としても単発ドラマが2本にCMが2本、雑誌などの取材が数本。それでも以前の蓮に比べればかなり緩やかなスケジュールだ。
久遠はいけるときは一人でもだるまやに顔を出している。嫁の実家と仲良くしておくにこしたことはない。今ではキョーコの料理の次に舌に馴染んだ味になっている。相変わらず口数は少ないが最近は大将も打ち解けてくれている気がする。小食の久遠のためにあっさりしたものを少しずつ出してくれるようになった。
ただ、帰国した時に空港で撮られた(撮らせた)キス写真はお気に召さなかったようで包丁がとんでくるかと思ったほどだった。謝罪に謝罪を重ねてやっと許してもらえた。大将は約束が破られたかもしれないと危惧したようだったが久遠とキョーコが一緒に尋ねた時の二人の様子でそうではないことがわかったらしく、約束は有効のままだ。
クーとジュリが結婚報告を聞いて数日後にスケジュールの合間を縫ってだるまやに挨拶にきていたことを聞いて驚いたが、それで安心してくれたようだ。特に女将さんは嫁姑関係を気にしていたようだがジュリに会ってほっとしたらしい。ただ、クーの食事量と久遠の食事量の違いには呆れかえってしまったらしいが。
「キョーコ、今日の終わりは?」
社長宅の朝食の席で顔を合わせ今日のスケジュールを確認する。昨夜は遅くに帰ってきたので顔を見ることができなかった。こんな日が数日続いている。あと少しだと思っていても寂しいものは寂しい。
「昨日よりは早いかな。」
「そう、なら一緒にだるまやにいかないか?」
「久遠は大丈夫なの?」
「あぁ、今日はCMだけだからそんなに遅くならないと思うよ。でも明日からは少し忙しいかな。ドラマが始まるから。」
「久しぶりですね。『敦賀さん』は。すごく話題になってますよ。大学生のせつない恋物語。」
「まさか本当にそんなオファーをされるなんて驚いたけど、面白そうだよ。で、なんで敬語?」
「あれ、そうでした?やっぱり『敦賀さん』だと敬語になっちゃうんですよ?」
「まだ、久遠だよ。からかってるだろう?」
久遠は金髪をいじりながら笑う。明日にはミスウッズに『敦賀蓮』にしてもらうことになっている。しばらくは『敦賀蓮』なので黒髪に染め金髪のウィッグを用意してもらうことにした。
「そんなことありません、よ?」
クスクスと笑うキョーコに久遠は微笑んでみせる。
「あっもう時間、いかなくちゃ。」
「うん、じゃあ、あとで。終わりが見えたら連絡して。迎えにいくよ。」
キョーコはピクリと眉をしかめた。
「なに?俺が迎えにいくの迷惑?」
「そうじゃなくて...。久遠がくるとすぐに囲まれちゃうんだもの。女の人に...。」
「ヤキモチ?嬉しいなぁ。」
「もう!!いってきます。」
「大丈夫、俺にはキョーコだけだから。気をつけてね。」
久遠も立って頬にキスをして送り出した。キスをする前から頬が赤かったから本当にヤキモチを焼いていたのだろう。こんなことが幸せで仕方がない。
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昨日がブログ開始2年でした。
確か去年は2本アップしたような気がしますが今年は忘れていたので無理そうです。
で、とりあえず気づいたところで一つでもアップしようかと...