手をつなぐのはスキ。今では自然に手がつなげるようになった。
久遠の手は男の人にしてはすごく綺麗だけれど、決して華奢ではなくて大きくてあったかくて手をつないでいると安心できるから。
腕を組むのも嫌いじゃないけれど、なんだかぶらさがってるみたいで『ついていきます』みたいな感じがしてしまって手をつなぐほうがスキ。なんとなく対等な感じがするから。ただ、単に久遠の手がスキなだけかもしれないけど。
肩を抱かれるのはこの1か月でやっと慣れてきた。久遠の温もりはダイスキだけどドキドキはとまらない。
この-半分ギュッ-は『俺のだ!触るな』的なときだとジュリ(アン)が教えてくれてからさらに気恥ずかしさが追加された。婚約だって発表したんだからそんな縄張りを主張するようなことしなくてもいいと思う。でも...それがなんでか嬉しいと思ってしまうのは乙女の複雑な恋心なのかしらなんて内心笑ってしまう。ただ、『俺のだ!触るな!見るのもダメだ!』の縄張り主張最上級の『腰を抱く』は今でも慣れない。だって人前で腰を軸にして上半身も下半身も全身ピッタリくっつくなんて破廉恥最上級でしょう!?いや、人前じゃなくても無理、ドキドキ通り越して不整脈バリバリで即入院ものってくらいキャパの範囲を超えている。
キスは...。頬へのキスは何とか慣れた。というか慣らされた。会っている時は何度も何度も繰り返されたから。おはよう、おやすみはもちろん。話していて歩いていてなんとなく目が合うとキスをする久遠。あれだけされたらさすがの私だって免疫がつくってものね。でも、唇へのキスは慣れない。軽く触れるだけならどうにか大丈夫。でも、久遠ってヒドすぎる。自制が保てるからって無茶苦茶な理由でわざと誰かが傍にいる時に限ってキスを深めるんだもの。ただでさえ頭が真っ白になるのにそれを他人様がそばにいるときになんて...。確かに私の膝に力が入らなくなるとやめてくれるんだけど、絶対に何をしていたのかバレてるからヤメテっていってるのに!婚約者なんだからいいんだなんて、私は奥床式日本人なんだから勘弁してほしい。キスは...嫌いじゃ...ないんだけど...。
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オルティス学園の撮影は無事終了した。
結婚式まではあと2か月、キョーコは日本での仕事を終えるため帰国することになっている。結婚が決まったころから仕事の調整はしてきたが今やキョーコも売れっ子で渡米する前にぜひと懇意の監督やプロデューサーにせがまれハードスケジュールが待っている。
久遠もアルマンディの東京コレクションのために一緒に帰れることになった。
どこで情報を聞きつけたのか二人が空港に降り立つと大勢の記者とファンが詰めかけていた。記者はあいかわらず、急すぎる婚約にどうしても理由をつけたいらしくいろいろな質問をとばすが久遠はいつも通り「一緒にいたいからです」とアマアマな笑顔で答えるだけだった。
「WOUNDED MOON」の放送はちょうど折り返し地点くらいに差し掛かっていたが高視聴率を保っている。久遠のメディアへの露出はこのドラマとアルマンディのモデルとしてしかないが、ファンがつくには十分だった。空港へつめかけたファンは久遠とキョーコでそれぞれ半分ずつといったところだった。ファンから「婚約おめでとう」の声がかかると二人はサングラスを外して笑顔で手を振った。やっかみ半分の「キョーコを返せ!」という声にはキョーコの肩を抱き唇にキスすることでNOの意思表示をする。なんともいえない歓声とフラッシュの嵐にただ驚くばかりだ。明日の一面は間違いなくこのキス写真になりそうだ。
「疲れた?」
やっと迎えの車に乗りこむと久遠はキョーコに尋ねた。
「少しね。あんなに大勢の人がいるなんて思わなかったから。それにしても...。」
キョーコは久遠を睨んで言った。
「あれはやりすぎ!」
「あれって?」
「キスのこと!」
「なんで?あれはキョーコは俺の物だからって返事なのに。」
「そんなこと必要ないでしょう?私たちは婚約しているんですから!」
「あのね、婚約していようが結婚していようが不埒なことを考えるヤツはいるんだよ。だから、先手を打っておかないとね?」
「考えすぎですよ。そんなこと思う人がいるわけないでしょう?」
「ヒドイなぁ。俺の愛した女性だよ。誰もが欲しがるに決まってるだろう?それに...。そんなことは絶対にないけど、もしキョーコが他の誰かの物だったとしても俺はどんなことをしても奪っただろうね。」
キョーコはみるみるうちに真っ赤になった。大将との約束がばれてしまってから久遠は恥ずかしげもなくこんなことを言うようになった。我慢はしているようだが時々はあの『夜の帝王』も顔を出す。今も茶化した風に言ってはいるが目は真剣だ。
「とっ、とにかくここは日本です。あんなことは人前でしないでください!」
真っ赤な顔で照れながら怒るキョーコはとにかくカワイイ。だから久遠はもっとイジメたくなる。
「人前じゃなきゃいいんだ...。」
久遠がキョーコのほうに身を寄せて腕をとらえるともう片方の手で顎を持ち上げた。キョーコが瞳を閉じようとした瞬間、運転手が目に入って慌てて久遠の胸を押した。
「だから、人前ではやめてって言ってるでしょう?!」
久遠は小さく舌打ちをする。ボスの下で働いている者は口が堅い。その中でも側近中の側近と言える彼はこんなことぐらいでは動じないだろう。まぁ、せいぜいボスに報告されてあとでからかわれるくらいか。そんなこと今の状況でキョーコの唇を堪能することに比べればなんでもない。誰かがいてギリギリのところでブレーキをかけつつ心ゆくまでキスできる最高のチャンスだったのに、当のキョーコに拒否されては仕方ない。
「今の舌打ちはなんなんですかぁ!!それにぃ!私は物ではありません!!!」
キョーコの敬語は怒っている証拠だ。それに『!』の数が多すぎる。これ以上怒らせると日本では頬へのキスもさせてもらえないかもしれない。愛し合いたいのをどうにか我慢している久遠にはそれまでやめさせられてはたまらない。まぁ、それ以上にすすみたくもなるから諸刃の剣でもあるけれど。
「ゴメンね。物だなんて思ってないよ。キョーコはキョーコだ。でもキョーコに触れていいのは俺だけだって思っている。そうだよね?」
ずるい。
久遠はずるすぎる。キョーコが久遠の子犬顔に弱いのを知っていてあの顔をする。確かにキョーコだって久遠以外の男性に触れられるのは想像もできない。
「それはそうだけど...。」
「嬉しい!」
久遠は満面の笑みでキョーコを抱きしめた。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
前半と後半で雰囲気が違うのは書くのに間があったからです。
そして、月1~2回更新になってしまいました (・Θ・;)
でも、でも絶対にちゃんと(自分なりに)終わらせます!
長い目で見守っていただけると嬉しいです。