クーとジュリに婚約の報告をした3日後に日米各マスコミに久遠と京子の連名で婚約を知らせるファクシミリが送られた。突然の知らせにマスコミ各社は真偽のほどを確かめようと躍起になった。各事務所に問い合わせると『間違いありません。入籍、式の日取りについては詳細が決定次第お知らせします。』とのコメントのみが発表された。
アメリカでは『クーの息子が結婚。お相手はオルティス学園のナオミ役の日本人。ジュリも出演した日本ドラマがきっかけ』程度の報道だった。ネームバリューの上でアメリカではまだまだの久遠やキョーコよりもクーとジュリのほうに取材陣は集中した。二人とも息子と嫁を絶賛しすぎるのでまたしてもマスコミは親バカと報道したのだが...。
日本ではアメリカよりも報道が白熱していた。今まで熱愛報道が全くなかった京子に交際をすっ飛ばして婚約、しかも相手はクーの息子で世間的には出会って数か月のスピード婚約とくれば騒ぎがおきないわけがない。当然のように妊娠説や玉の輿狙いなどと書きたてられた。本人に取材したくても京子自身は『オルティス学園』の翌シーズンの撮影のために日本にはいない。とりあえずすぐにコメントがとれそうな『WOUNDED MOON』のスタッフに取材陣が殺到した。婚約について緒方をはじめ誰もが驚かないことにマスコミは驚いた。それほど仲良く過ごしていたと誰もが証言したのだ。
オルティス学園の撮影現場でキョーコは祝福を受けた。京子の婚約者の正体が、よく撮影所に迎えにきていてアンバーのバースデイパーティーでは独占欲むき出しにしていた久遠であることは皆「やっぱりね」という感想を漏らしていた。ただ、『恩人の息子』としか聞いていなかったのでまさかその『恩人』がクーであることに驚きを隠せない。この業界でクーと懇意にしていれば(特にペーペーならなおさら)自慢したくもなるものをただの『恩人』で済ませてしまうあたり、流石というか無頓着というか、いかにも京子らしいと話題になった。
婚約発表から2日後、キョーコが撮影所をでようとするとゲートのあたりが騒がしい。見ると久遠が数人に囲まれている。頭1つ分周囲よりも突出しているのでキョーコにはすぐにわかった。今日もジュリアンが迎えにくるものと思っていたキョーコは思いがけず久遠に会えた喜びで駆け寄った。
「久遠さんですよね?!京子さんとのご婚約おめでとうございます!お話を伺いたいのですが!!!」
久遠は日本人記者に取り囲まれていた。京子の取材にきてまさか久遠が現れるとは思っていなかった記者たちは興奮気味だ。そんな記者たちに久遠は少しならいいですよと余裕の笑みを返す。そこに京子が駆け寄ってきたものだからますますヒートアップする。京子は久遠とともにあっという間に記者たちに取り囲まれた。
「京子さん、久遠さんご婚約おめでとうございます!早速ですがお話を伺わせてください!急な婚約のように思われますが何か急ぐ理由があったのでしょうか?」
キョーコはまさか自分たちの取材のために日本から記者がやってくるとは思っていなかったことと、記者たちの勢いに面食らってしまい久遠が答えた。
「えぇ、そうですね。」
「ということは、やはり妊娠されているのですか?!」
「いえいえ、それはありません。急ぐ理由は1日も早く1秒でも長く一緒に過ごしたいからです。」
「まだ一緒に住まわれてはいないのですか?」
「えぇ。その辺りはきちんとケジメをつけたいので結婚するまでは一緒に住むつもりはありません。」
「お住まいはどちらにする予定ですか?」
「アメリカに住まいを探す予定です。」
「というと、京子さんは引退ですか?」
「いえ。彼女は仕事を続けます。俺もやめてほしいとは思いません。ただ、その時その時で働き方は変化するかもしれませんね。」
「やはり、お子さんが...。」
「クスッ。だから、いませんって。そんなこと嘘ついてもすぐにバレるでしょう。いつかは欲しいとは思いますけど、授かりものですから。」
「ではお子さんの話が出たところで、何人くらいほしいです?性別は?」
「人数は...。授かりものですから何とも言えませんが、俺は一人っ子だったので兄弟がいるといいなとは思います。とりあえず彼女に似たかわいい女の子が欲しいですね。」
「京子さんは?」
饒舌にしゃべる久遠から突然自分に話をふられ、キョーコはとりあえず無難な答えをかえす。
「えっ?元気でいてくれればどちらでも...。」
「話がお子さんの話になってしまいましたが、ご結婚の話に戻していいでしょうか。結婚しようと思ったのはどうしてですか?どんなところに惹かれたのでしょう?」
「運命です。彼女以外には考えられません!惹かれたのは...たくさんありますけど、彼女は俺の光なんですよ。」
「『光』...ですか?京子さんは料理上手で有名でお嫁さんにしたい芸能人NO.1ですけどそのあたりはいかがですか?」
「彼女が料理上手で家事全般完璧にこなすのは知ってます。でもそれは俺にとっては『おまけ』みたいなものですね。家事全般不得意だったとしても気にしませんよ。俺にとっては彼女が彼女であることが一番大事なんです。とはいえ、彼女の料理以外食べたいと思わないので説得力ないかも知れませんが(笑)」
「ゴホン。ごちそうさまです。」
そして記者は取材の本命のキョーコに話をむける。
「京子さんは結婚しようと思ったのはどうしてですか?惹かれたところは?」
「ずっと一緒にいたかったので...。彼といるとありのままの私でいられるんです。それに勇気と自信をくれるんですよ。」
「『勇気と自信』...ですか?ええっと、プロポーズの言葉は?」
「ひっ秘密です。」
「久遠さんも教えてはいただけませんか?」
「せっかくもらった大事な言葉なので秘密です。」
「えっ?プロポーズは京子さんからなんですか?」
「ちっ違います!あれはプロポーズのつもりじゃないって言ったでしょう?!久遠ったら、もう!」
記者の前で甘々なムードを作り始めると、そこへジュリアンが迎えにやってきた。
「迎えが来たみたいなので、これで失礼します。」
久遠がキョーコの肩を抱いて場を後にしようとすると記者が食い下がる。
「あぁ!待ってください!最後に指輪を見せていただけませんか?」
記者の言葉に久遠とキョーコが顔を見合わせ、ついでジュリアンをみるとジュリアンが頷いたので立ち止まってキョーコはロケットを開けた。久遠がロケットから指輪をとりだしキョーコの左手に嵌めてみせる。記者たちはそんなところから指輪が出てくるとは思わず『おぉ!』と感嘆の声があがった。
「そんなところに入っていたんですか?」
「えぇ。撮影ではつけておけないのでこうして肌身離さずもっています。」
キョーコが説明すると久遠が「もういいですよね」と歩き始めた。何か考えていた記者が去ってゆく二人に声をかけた。
「WOUNDED MOONの記者会見ですでにつけてましたよね!?」
キョーコが振り返って微笑みだけで返事をした。記者たちが見えなくなると久遠はキョーコからそっと離れた。
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プロポーズから婚約発表まで1か月と3か月の2通りの記載があったので1か月に統一しました。
間が開くと自分でもわからなくなりますね (^▽^;)