「うん、努力してね。」

こんなときに見せる久遠の笑顔はカイン丸をさらに甘くした笑顔で、本当にカワイイと思ってしまう。セツカではなくキョーコが久遠をカワイイと素直に思えることが嬉しい。以前だったら、そんな気持ちも否定していたから...。ポワンと胸の奥がくすぐったくなるのが何とも心地よくぼーっとしてしまう。


久遠は、なにやらトリップしているキョーコの胸元にある少し大きめのペンダントを指差した。

「ねぇ、それどうしたの?すごく似合ってる。真ん中はプリンセスローザ?」

薔薇のモチーフが浮きあがった円形のペンダントはアンティーク調の鈍色で薔薇の中心には小さめの石が埋め込まれている。

「これ?マルコさんが作ってくれたの。エンゲージリングをしばらくつけられないから長めのチェーンが欲しいって言ったら、それだとリングが傷つくよって。ほら、こうやって開けると中にリングが入っているの。石は...多分、プリンセスローザなんでしょうねぇ。」

「へぇ、それだといつも一緒にいられるみたいでいいね。マルコにお礼をいわなくちゃ。」

「本当に、これだと肌身離さずいられてすごくいいの。でも、お礼はいいかも。私たちの婚約を発表したら商品化するって言ってたから...。」

「はは。さすがマルコ。商魂たくましいね。」

「ふふ、本当に。」


急に久遠が真顔になるとキョーコの手に自分の手を重ねた。

「俺たちの結婚のことなんだけど、きちんと報告しないとと思ってキョーコのお母さんに今日会ってきたんだ。」

キョーコの顔から一気に血の気が引き表情が無くなる。久遠はキョーコの手を強く握った。

「それで、母はなんて?」

「おめでとうと...。式には...。」

「...来ない...でしょう?」

「あぁ。申し訳ないけど出られないと。」

「...そう。」


ジェフが未緒の母に結婚の報告に行った時さながらに冷たい返事をされた。まるで緒方監督が今日の様子を予知して先にドラマで再現したのではと思わせるくらい同じだった。いや、リアルなだけに後味が悪い。本当は『おめでとう』の一言もなかった。20歳過ぎているのだから好きにすればいいと言われただけだ。最初はキョーコと一緒に行こうと思っていたが、二人で挨拶に行く時間はしばらくとれそうもない。キョーコとは何かありそうなのは知っていたが、それでもキョーコの親に変わりはない。会見を見て知るのは問題だろうと思って一足先に挨拶にいったのだが、今となっては一人で良かったと思う。いったい、どうすれば娘にあれほど無関心でいられるのか暑苦しい親の愛しかしらない久遠には理解できない。いつかキョーコから理由を話してくれるだろう。

心配顔でのぞく久遠にキョーコはどうにか笑みをみせた。

「大丈夫、わかってるから。心配しないで。それより挨拶に行ってくれてありがとう。」

「いいんだ。ちゃんと言っておきたかったんだ。『御嬢さんを僕にください』ってね。許可はもらったから、返せって言われてももう絶対に返さないよ。」

茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせる久遠に、今度は本当の笑みをキョーコは返した。母のことはもうとっくに諦めている。今は久遠がいてくれる。それに、久遠の両親が本当の娘のように接してくれている...。


「あっ、挨拶って言ったら私もお伺いしなきゃ。先生方、反対じゃないかしら?」

「そんなわけないだろう?前にも言ったけど、早くプロポーズしないと養女にする!って言ってたくらいなんだから。良かったよ、キョーコがプロポーズしてくれて。でなきゃ兄妹になっているところだった。」

「ん?私がプロポーズ?やだ、あれはそんなつもりじゃなかったって言ってるのに!」

「本当に?あれは誰がどう聞いてもプロポーズだよ?キョーコがそういうつもりじゃなくても他の誰にもあんなこと絶対に言わないでね。あんなこと言われたら勘違いするよ。」

「もー!そんなこと言うわけないでしょう?他の人にあんな風に思うわけないもの。」


そのあとは、やっぱり離れがたくて近くのバーに移り朝まで語り明かした。久遠のホテルもそんなに遠くはなかったが、あと1か月も会えないと思うと二人きりの部屋で理性を保つ自信がない。


「じゃあ、行くね。電話もメールもするから...。」

「うん。今度会う時は、『WOUNDED MOON』のプロモーションね。」

「なるべく早く戻ってこられるようにするから...。」

「ダメ。お仕事がんばってしてください。」

「俺が手を抜くと思ってるの?」

「ふふ。分かってます。そうだ、先生にプロモが終わったらご挨拶に伺いますって伝えておいてね。」

「う~ん。言ったら、こっちに飛んできちゃうんじゃないかな。だから、キョーコが来る間際に伝えるよ。」


もう行かなくてはいけない時間になっていたが、二人ともさきほどから同じ話を繰り返して動けずにいる。本当に、時間ぎりぎりになってようやく二人は「せーの」で歩き出すことにした。









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前にも書きましたが、どうしてもキョーコと母の確執(というよりは母からの一方的拒絶にしかみえませんが)の原因が想像できません。

和解させてあげたい気もしますが、原因が想像できないのでそうもいきません。

ただ、娘が未成年で家出しても芸能活動しても気にかけない母だから和解はできないんじゃないかと思ってしまうのです。それぐらい根深いのかなって。でも、その分クー夫妻がたっぷり愛してくれるので癒されるかと...。0か100かの対極ですけど (^▽^;)


あっ、でも本誌でそろそろ触れるのかしら?ぜひ、和解させてあげてほしいものです。