キョーコと社が室内に戻るとすぐに久遠が傍にやってきた。なかなか戻らないキョーコを心配していたのは社だけではない。
「大丈夫?具合でも?」
「いいえ、そんなことはないです。」
キョーコは無意識に久遠の前で両手を左右に振った。それは『大丈夫、心配ない』というボディランゲージだったのだが...。久遠の視線はキョーコの左の薬指で止まり、みるみるうちにどんなに遠くからでも誰の目から見てもわかるくらい不機嫌になった。
「キョーコちゃん、手...。」
一気に不機嫌になった久遠を見て社が男らしくキョーコを逃がしてやった。まさに、命をかけて。
「キョ、キョーコちゃん、あっちで女優さんが呼んでるみたい!行ってきたら!」
久遠の不穏さを感じたキョーコは一瞬ためらったものの、本当に他の女優に呼ばれてしまい急いでそちらに足をむけた。
「...怒るなよ。外させたのは俺だ。彼女は渋ったんだ。」
腹をくくったのか、キョーコのマネージャーとして正しいことをしているという自信からか社は冷静に答えた。一方の久遠は子どもっぽく口をとがらせてふてくされて言う。
「なぜです?」
「俺は彼女のマネージャーだ。プライベートに口を出すつもりはないが、仕事に影響するならそういうわけにはいかない。わかるだろう?彼女に契約を守らないわがまま女優のレッテルをはりたいのか?」
「...。何か、面倒な契約でもあるんですか?」
「日本での仕事に俺の把握している限りはない。それでも、CMスポンサーへのあらかじめの根回しは必要だろう。あとは、こっちのドラマだな。ぶあつい契約書をもう一度精査しないとなんとも言えないな。」
「そう...ですか。」
「そんな顔するなよ。マネージャーとしても俺個人としても喜んではいるんだ。ただ、少し待ってほしいだけだ。」
「はい。すみませんでした。」
久遠は今度は目に見えて肩を落とししゅんとなった。久遠にだって業界の常識はわかっている。キョーコにはいい環境で思う存分仕事をしてほしい。それでも...それでも、せめて今日ぐらいはと思ってしまう。そんなことを思ってしまう自分が情けない。そんな久遠を見て社は目尻を下げて温かい目をする。
「だから。少し待ってほしいだけだよ。嬉しくて仕方なかったんだろう?長かったもんなぁ。うんうん。良かった、良かった。ところで...社長には自分で言うか?」
久遠が息をのむと、社は憐みの目を向けた。
「...避けては通れないだろう?」
「はい...。自分で言います。」
「そうか、わかった。でも早くしろ。日本に帰ったらすぐに新しいドラマの契約がある。契約前にきちんとしたいだろう?一旦契約すると、次のチャンスは3か月後だ。それも別の仕事が入らなければの話だ。仕事の調整には社長の許可が絶対必要だから言わないわけにはいかない。公にするのが遅くなればなるほど社長に遊ばれる期間が長くなるからな?」
「わかってます...。」
二人はお互いのスケジュールを確認した。明日、久遠はアルマンディのコレクションのためパリへ出発する。渡仏後すぐに打ち合わせがいくつかあるが、3日後に2日間の予備日兼休みがある。そこを逃すと2週間休みがない。強行軍になるが、キョーコのためなら久遠には何でもないことだろう。実際、蓮の時にはもっと厳しいスケジュールをこなしてきてもいた。
一方、キョーコと社は明日の帰国後1日だけ休んだ後、仕事がつまっている。それでも社はどうにかして時間をひねり出すことにした。かわいい弟と妹のために...。
「ところで社さん、どこか具合でも悪いんですか?」
社が先ほどからしきりに胸に手をやるので久遠は気になって仕方がない。
「えっ?!なんともないけど?」
社はなぜ久遠がそんなことを言うのかわからずに不思議そうに聞いた。
「いえ、さっきから胸に手を当てるのでどこか具合でも悪いのかと。」
「あぁ、これは...。俺も命が大事だからな。今は許せ。」
社の答えを聞いても久遠にはまだ意味がわからなかった。
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下記はちょっとしたACT.195の感想
たいしたことないけど、少しでもネタバレNGなヒトは読んじゃダメで~す。
本誌読みました~!!!
キャー(≧▽≦)
ぜひ、その跡を尚に見つけて欲しいぃ!
あっ、でもBJとセツだから無理かしら?