式も終わり、オルガンが再び鳴ると二人は扉に向かって並んで歩き出した。ベールをあげた未緒は参列者席に美月と嘉月の顔を見つけニコリと笑みをむけた。~実際にはいなかったがあとで違う角度から撮った映像を差し込むことになっている~ジェフはいまだに傷の消えた謎に囚われていた。


式が終わり屋敷に戻る車の中でジェフは未緒に尋ねた。今日はジェフの運転ではなくリムジンでの送り迎えだ。参列者は別の車で戻ることになっている。


「未緒、その傷はどうしたんだ?」

「消したの。」

未緒はさも何でもないように笑って答えた。

「昨日はあったよな?」

「えぇ。今もあるわ。」

「なんだって?」

「そんなに難しいことじゃないの。特殊メイクよ。」

「特殊メイク?」

「そう、映画とかで見るでしょ?生々しい傷とか。その逆に傷を消すこともできるのよ。女性陣みんながこの傷は花嫁にふさわしくないって言ってどうにかして消せないかと考えてくれたの。」

「そんな...。僕はその傷があっても花嫁は君しか考えられないよ。」

ジェフが親戚に未緒を否定されたかと思って慌てて言った。

「あぁ、そういう意味ではないのよ。『傷物』の花嫁があなたにふさわしくないとか、そういう意味ではないの。ただ、もう単純にできるだけ美しくしてくれようとしただけなのよ?」

「君はそれで良かったの?あんなに治療を拒否していたのに。」

ジェフが気遣ってくれるのが未緒は嬉しかった。

「えぇ。もういいの...。」

突然、未緒の頬が赤くなったのを見てジェフは首をかしげる。未緒は自分でも赤くなっていることがわかって気恥ずかしくなった。

「もういいって?」

「...。」

「未緒?」

未緒は窓の外に顔を向けてボソボソと答えた。

「あなたがたくさん...キスしてくれたからもういいの。」

未緒の答えの意味するところがジェフにはわからない。

「僕がキスしたことと関係があるの?」

「だから、あなたがキスしてくれたから傷がなくなったの。表に見える傷なんてどうでもよくなったのよ。」

ジェフは未緒の言葉をようやく理解すると未緒を引き寄せてこめかみにキスをした。そして唇にも長く甘いキスをすると未緒の目を見て嬉しそうに言った。

「だから言ったろう?王子様のキスでお姫様の呪いはとけるんだ!」

「あなたが王子様で私がお姫様?」

未緒はジェフの胸にもたれながら言った。

「何?僕では力不足?」

「そんなことないわ。どちらかというと私が力不足ね。お姫様には程遠いわ。」

ジェフは未緒の顎を持ち上げ目を合わせるとキスをした。

「僕は最初から女王のような気品があると思っていたよ。それにお姫様のキスも王子の呪いを解く効力があるんだよ。」

ジェフはさらにキスをする。

「僕の心の傷を治してジェーンと和解させてくれたのは君だ。」

「本当に?本当なら嬉しいわ。」

未緒はうっとりとジェフのキスを受けている。

「本当だよ。愛してる。」

ジェフは心の中で『闇の女王』と思ったことは言わないでおこうと決めた。未緒が美しく気高いことにはかわりない。このくらいの秘密なら夫婦の間にあってもいいだろう。車が着いたことを運転手が知らせたので仕方なくジェフはキスをやめて車から降りた。


パーティーは和やかに進んだ。誰もが心からお祝いを言ってくれた。皆に花嫁の美しさを褒め称えられ、ジェフは改めて未緒を見て息をのんだ。美しいなんてものじゃない。光り輝いている。


「うん。本当に美しい...。」

ぼそりと言ったジェフを未緒はどうしたのかと見上げた。

「ごめん。君が本当に誓いを言ってくれるか不安で気づけなかった。車の中では傷が気になってしまって...。人に言われて気づくなんて僕は本当に馬鹿だ。未緒、綺麗だよ。そのシンプルなドレスもよく似合っている。協力してくれたオバサマたちに感謝だな。僕は君を誇らしく思うよ。」

ジェフがまるで女神を見るように賛辞を並べ立てるので未緒は恥ずかしくて話題を変えた。褒められるのは苦手だ、どうしていいかわからなくなる。

「このドレスに見覚えはない?ジェーンのものよ。」

ジェフは記憶をたぐりよせる。そういえば、こんなドレスだった気もするがあまりにもサイズがぴったりでまるであつらえたようだ。

「でも、君には大きいんじゃないか?」

ジェーンは未緒よりも10cmは高い。それに未緒もスタイルはいいがスレンダーなほうだ。ジェーンとは違う。

「さすがに丈は少し縮めてもらったけれど、他は大丈夫だったの。今はその...胸も腰も...。」

「あぁ、そうか。」

未緒はまだお腹は目立っていないが妊娠したために胸も腰もふっくらとしていた。それがなんとも艶っぽくてジェフにはたまらない。さっきまで忘れていたのに思い出してしまいジェフは未緒にこっそり耳打ちした。

「抜け出そうか?」

「えっ?」

ジェフは未緒を少しずつドアの方に導いていった。

「でも、私たちのためのパーティーなのよ?」

「だから、僕たちが好きにしていいんだ。ねっ?」

まるでいたずらを思いついた子どものように目を輝かせ、未緒も共犯者にしようとしている。ついにドアから出ることに成功したジェフは未緒を抱え上げると一目散に寝室を目指した。列席者は愛しあう二人のことを今日は大目に見てあげようと気づかない振りをしてそのままパーティーを続けた。



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ドラマはここで終了です!あとは美月と嘉月のシーンを撮って終わりです。




追記


『役不足』 本来の意味とは逆ですね。

私が意味したようなら『力不足』のようです。

すみません、知識が足りなくて...。

というわけで訂正しました (/ω\)