MICの緊急役員会が召集された。もちろんスレイドも来ていたが、終始苦虫を噛み潰した顔をしていた。ウィル側が51%の株を手にしていることで旧役員陣はだんまりを決め込んでいる。


「そういうわけで、経営陣の刷新をはかりますので、皆様方には撤退を願います。」

ザワザワとした雰囲気が会議室内に広がった。

「撤退って...。我々はクビということか?!」

役員の一人が怒鳴り声をあげた。

「そういう言い方もできるかもしれませんね。」

ウィルがこともなげに言うのに彼は怒りを込めて言い返した。

「ここまで、頑張って会社を盛り立ててきた我々を放り出すというのか!」

「そう、盛り立てて、盛り下げた。最近の業績不振では、近いうちに会社がなくなるのは目に見えていたでしょう?」

そこで一同は黙ってしまった。やがて、一人、二人と会議室を出ていき残されたのはウィルとジェフ、スレイドの3人になった。


「...会社はどうなるんだ?」

スレイドが重い口を開いたがその瞳はうつろでどこを見ているのかはわからない。

「どうにか残そうかと思いましたが、難しそうなので解体します。」

ウィルがきっぱりと言った。

「そうか...。で、社員は?」

「希望退職を募ると同時に残りたい者は残します。それが各部署を切り売りする最重要事項です。そのためなら多少買い値が安くてもいいと思っています。会社を存続させるより社員の雇用をとりましたが、異存はありますか?」

「いや。それでいい。礼を言うよ。」

重い腰をあげて会議室を出ていこうとしたスレイドにジェフが話しかけた。

「あなたが社員をないがしろにする発言をしなくてほっとしましたよ。それから礼なら未緒にお願いします。彼女が社員が不当な扱いを受けるのを嫌がったので...。それとは別に僕はあなたの仕打ちを忘れませんよ?」

ジェフの言葉にスレイドの目の焦点がやっと合った。

「ジェファーソンが亡くなった後に、僕が『トンプソン』の跡を継ぎたいって言ったら先代ジェフに言われたんだ。跡はブルームに継がせるからダメだってね。どこの馬の骨かもわからない、まだ子どもに継がせるって言うんだ。だから、先代を見返してやるつもりで会社を大きくしてきたのに、このザマだ。まぁ、結局、お前が正当な後継ぎだったなんて笑えるけどな。未緒には謝っておいてくれ。お前と結婚したというだけで彼女に非はないんだから。」


スレイドが会議室を出ていくとウィルがジェフに聞いた。

「あれで、謝ったことにするのか?」

「そうですね。物足りませんが、そうするしかないでしょう。でないと未緒に文句をいわれそうだ。」

「ふむ。やっぱり、尻に敷かれてるんだな?」

「何か?」

「イヤ、なんでもない。気にするな。」

「えぇ、今のは聞かなかったことにします。」

男二人は誰もいなくなった会議室でお互いの顔を見て笑った。


ジェフの携帯が鳴った。

発信元は未緒につけていたSPからだった。未緒に何かあったのだろうか。嫌な予感がしてジェフは慌てて電話に出た。青くなったジェフを見てウィルもただ事ではないことを悟る。


「未緒がいなくなった...。」




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うちの未緒はよくいなくなりますね...。