「たった1週間で調べたんですか?」
「あぁ。でも前に少し調べてあったから意外と簡単だったよ。」
二人は家への帰り道、車の中で話していた。
「前に?」
「日本で襲われただろう?あの時、バーテンダーのことを調べたんだ。君が教えてくれないから...。」
「気づいていたんですか?」
「そりゃあ、気づくだろう?あのバーテンが酒を出してくれたんだから。こう見えても周囲に目を配ってるんだ。」
「はぁ。でもあの男とは関係ないでしょう?」
「バーテンを調べてもらったら、あの男と会ってたんだ。それに『本郷』の記事も報告の中にあった。その中にあの男の書いたものもあったからね。あんなんでも一応ジャーナリストだったんだな。」
「それで父のことも知っていたんですね。」
「まぁね。」
「知っていたのに、私と結婚したんですか?」
「何か問題が?」
ジェフはチラリと未緒を見たがすぐに視線を道路へ戻した。
「普通、そういう女性とは結婚しようとは思わないものですよ。」
「そう?じゃあ僕は普通じゃないんだろう...。」
「えぇ、本当に...。」
未緒はやれやれというように首を振った。
「これで終わったと思います?」
「どうかな?まだ『ご令嬢』がいるしね。」
「本当に思い当たらないんですか?」
「過去につきあった女性に思い当たる女性はいないよ。」
「あなたが忘れているだけでは?」
「失礼だな?つきあった女性を忘れるほどヒドイ男じゃないよ。」
「あなたがそう思ってなくても彼女のほうは恋人だと思っていたかもしれませんよ。」
「なんだかしつこいな?嫉妬?」
ジェフは面白そうに目を細めた。
「そっ、そんなことあるわけないじゃないですか。私はプロジェクトの心配をしているんです。」
「相手の正体がわからないんだ。今はどうにもしようがないよ。プロジェクトは順調に進んでいるから大丈夫だ。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
スレイドは繋がらない電話を乱暴に置いた。きっと何か失敗したのだろう。そうでなければあの手の男が金を受け取らずに行方をくらますはずがない。
未緒の素性はあの男から買った。結婚披露パーティーで、もうダメかとも思っていたのにまさかあんな便利な男に会えるとは思わなかった。まだツキに見放されてはいないと思えたのに...。
ブルームの妻があんな面白い生い立ちだとは思いもしなかった。上手くいけば、それを利用して離婚させられると思ったのに、どうやら失敗したらしい。明日はブルームの誕生日だ。それまでに離婚させられればどうにか手を打てたものを...。スレイドは歯噛みしながら開きっぱなしのPCに映る株式市場を見た。