未緒はそうっとジェフの寝室のドアを開けた。ベッドには静かに眠るジェフの姿があった。


昼間、買い物に出かけて帰ってきた未緒の様子がどこかおかしくてジェフはいろいろと聞いてきたが『何でもない』で通した。ジェフは納得していない様子だったが未緒が話す気がないのをみてとると話題を変えた。話題が安全なものへうつると未緒はいつもの未緒に戻った。ジェフは疲れているんだろうといって今日は早めに切り上げてくれた。帰宅後はアガサの作った夕食をとり、リビングでワインを飲んだ。いつもはコーヒーだが、珍しく未緒が飲みたいと言ったのでとっておきのワインを開けた。楽しくおしゃべりをして別々の寝室に戻る。未緒の気のせいでなければジェフは名残惜しそうな瞳をしていた。そのジェフの瞳を見てなけなしの勇気を振り絞ってドアを開けたのだ。


未緒は音をたてないようにしてベッドに近づいた。近づいておきながらも、まだ迷っている。ジェフに拒絶されたらどうしよう。さっきの別れ際の瞳は未緒の勘違いだと言われたら?未緒なんかほしくないと言われたら?あぁ、せめて何の変哲もないパジャマなんかじゃなくセクシーなネグリジェを持っていたらよかったのに。それとも下着でくればよかった?ううん、どっちにしてもセクシーなものなんて持ってない。それにどうすれば始められるの?キスをすればいいの?それだけで伝わるかしら?そのあとは?ジェフは経験豊富だ。万が一上手くいっても未緒にがっかりするかもしれない。いや、この際ジェフの感想はどうでもいい。ジェフは優しいからがっかりしてもそれを未緒に直接言うことはないだろう。とにかく、今夜だけでいいからジェフが欲しい。


ベッドのかたわらに立ち、逡巡していると人の気配にジェフが目を開けた。

「どうした?何かあった?」

未緒は言葉が出せずにただ、首を左右に振った。

ジェフは重たい空気に耐えられず、冗談を言った...つもりだった。

「じゃあ、夜這いにでもきたのかい?いつでも歓迎だよ。」

ジェフは上掛けをめくると自分の横をポンポンとたたいた。ジェフはいつもの習慣なのだろう上半身裸で寝ていた。見事な裸体に未緒は息をのむ。

未緒は少し、ほんの少しだけ考えた後、意を決したようにベッドに入った。

ジェフは驚いて後ずさる。

「いったい、どうしたんだ?」

「いいから。お願い。」

「でも...。」

そのあとの言葉は未緒が押し付けた唇に飲み込まれた。


ジェフは混乱していた。これは夢か?ワインは飲んだが幻覚を見るほど酔っぱらてはいないはずだ。それに未緒の唇の甘さが現実だと言っている。ジェフは未緒を引きはがしたが、その瞳に哀願といえるほど切なげな色が浮かんでいるのを見て増々混乱した。

「お願い。」

もう一度、そう言って未緒が唇を重ねてきた。ジェフはこのまま先に進んではいけないという自分と、妻を抱いて何が悪いという自分の間で葛藤していたが未緒の瞳と甘い唇にすぐに後者が勝ってしまった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




朝の日差しにジェフは幸せな気持ちで目を覚ました。こんなにも幸せなのは何故なのだろうと起き抜けの頭で考える。そうだ、未緒だ。僕の妻はどこにいるんだろう。できれば、この明るい日差しの中でまた愛を交わしたい。重たい瞼はそのままにベッドの中を探ったが未緒はいなかった。いないことが信じられなくて今度はしっかりと目を開けるが、やはり未緒はいなかった。

もう一度愛し合えないのは残念だが、まぁいい。これからいくらでも機会はあるだろう。まずは寝室を一緒にして...。

きっと恥ずかしくて僕が寝ているうちに自分の部屋に戻ったのだろう。未緒は初めてだった。まさかとは思ったが恐らく間違いはないだろう。今まで、処女性にはなんの関心もなかったが、未緒を知っている男が地球上で自分だけだと思うと原始的な喜びが湧いてくる。未緒は僕だけのものなのだ。メインストリートで声高に叫びたいくらいだ。


...。


僕は初めての未緒に無理をさせてしまっただろうか?だから今朝はベッドにいないのか?思い当たることがありすぎて苦笑する。ここは謝るべきだろうか?

「昨夜は素晴らしかった、素晴らしすぎて夢中になってしまったんだ。体は大丈夫かい?」そう言いながら、再びキスをして、ベッドへ...。そんな夢想をしている自分に気づいて再び苦笑がもれる。僕は盛りのついたネコか?あまり褒められたことではない考えは横においておいてジェフは微笑みながらベッドを出た。



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削除されたらどうしましょう?

『兄さんのためなら』がいけるならこれもいけるかと...。

だめなら、すんごい省略して書き直します。

読めたらラッキーってことで (゚ー゚;