「ジェフ、起きて。起きてください。」

何度か肩を揺すられて、やっと眠りについたばかりのジェフは煩わしそうに目を開けた。


「もう9時ですよ。朝食を準備してくださったそうです。それとも、もう少し寝ていますか?」

「ん~ん。もうそんな時間かい?」

見ると未緒はもう、着替え終わっている。

「えぇ、随分ゆっくりでしたね。」

「シャワーくらい浴びてもいいかな?」

「大丈夫だと思いますけど。」

ジェフは、のそりと起き上がり着替えを持ってバスルームへ行った。目を覚ますために熱めのシャワーを浴びる。昨夜は未緒に八つ当たりのようなことをしてしまい、そのことを考えるとなかなか寝付けなかった。いや、それだけではない。手を少しのばせばそこに未緒がいるのだ。眠れるはずがない。未緒もしばらくは寝付けなかったようだが、いつのまにか規則正しい寝息が聞こえてきたから僕よりは先に寝たのだろう。ジェフは朝の身支度をしながら、昨夜のことを謝るべきかどうか考えていた。答えの出ないうちに身支度が済んでしまい、自分を待っている未緒をそう待たせるわけにもいかずバスルームを出る。


「まだ、眠そうですね。大丈夫ですか?」

「あっ、あぁ大丈夫だよ。行こうか。」

二人は庭に面したバルコニーに案内され席に着く。ウィルとジェーンはすでに食べ終わっているらしく、テーブルにはコーヒーしかなかった。


「おはよう。よく眠れたかい?」

「おはようございます。おかげさまで。」

「...おはようございます。」

「おや、ジェフはなんだかご機嫌斜めだ。眠れなかったのか?寝なかったのか?」

ニヤリと笑うウィルにジェフは仏頂面で答える。

「どちらでもありません。おかげさまでよく眠れました。」

「そうかい?なら、寝起きが悪いんだな。これじゃ、未緒、君も大変だ。」

「そんなことはないですよ。大抵は一人で起きてくれますから。」

ウィルの皮肉を笑顔でかわす未緒はいつもの彼女だ。昨夜のことは、僕の思うほど未緒は気にしていないのかもしれない。


「私は準備があるから先に失礼するわ。」

ジェーンが席を立つ。

「あぁ、よろしく頼むよ。」

ウィルがジェフに向き直って説明する。

「急いで帰ることもないんだろう?昼はバーベキューだ。スマイリーたちも来る。朝食を食べたらゆっくりするといい。庭を散歩してもいいし、プールやジムを使ってもかまわないよ。もちろん、部屋でのんびりしても良いけれどね?」

最後の一言は含みのあるものだが、ジェフはかまわず「ありがとう」とだけ答えた。ウィルは残っていたコーヒーを飲み干すと片付けなければいけない仕事があるからと先に出て行った。


「朝食を食べたら帰ろうと思っていたのに、そうもいかなくなったな。」

「えぇ、スマイリーがいらっしゃるのでは帰るわけにもいきませんね。」

「君はどうする?」

「そうですね。お庭でもみてこようかしら。」

「そうか...。僕はジムでも使わせてもらうよ。」

二人は昼食までそれぞれに過ごすことにした。


お昼近くになって、庭の一角が賑やかになってきた。庭で本を読んでいた未緒が近づいてみるとスマイリーがバーベキューの横の台で魚をさばいていた。その周りでは何人かのスタッフがテーブルをセッティングするためにせわしなく働いている。

「こんにちは。昨夜はありがとうございました。」

屋敷ではなく、庭のほうから現れた未緒に一瞬驚いたもののすぐにスマイリーは笑顔になった。

「やぁ。昨夜は挨拶しかできなくて済まなかったね。」

「いえ、とても美味しくて。例のワインもよかったですわ。」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。今日も楽しんでもらえると思うよ。」

「あなたがお料理をするんですか?」

「そりゃあ、バーベキューは男の仕事だからね。マデリンは中でサラダやらを準備しているよ。」

「では、そちらを覗いてみます。」

未緒が立ち去るとスマイリーは魚との格闘を再開した。


バーベキューの焼台が備え付けられているわきにちょっとしたコテージがあり、そこのキッチンにマデリンがいた。

「こんにちは。昨夜はごちそうさまでした。何かお手伝いできることはありますか。といってもお料理は苦手なので大したことはできませんけど。」

「あら。こんにちは。手伝ってくださるの?だったら、レタスを水につけてくださる?」

「半分くらいでいいですか?」

「やーね。全部よ。」

「全部って...。このレタス全部ですか。3個ありますけど。」

「私の子どもが孫を連れてくるのよ。だから、全部使って大丈夫よ。」

「スマイリーがお料理するんですね?てっきり家政婦さんか誰かがしてくれるんだと思ってました。」

「まぁ、普段はそうね。だけど、あの人おかしいのよ。いつも自分はイタリア人だって言うくせにバーベキューのときだけはアメリカ人になっちゃうのよ。バーベキューは男の仕事だってね。イタリア人はそんなこと言わないと思うわ。」

「まぁ。いいとこどりですね。」

「結局、楽しければなんでもいいのよ。」

マデリンは笑いながら野菜を細かく刻んでいく。

「お料理、お上手なんですね。私は全然...。アガサに頼りきりです。」

「アガサの料理は絶品ですものね。覚えたいなら教えてもらえば?きっと喜んで教えてくれるわよ。」

「今からでも間に合いますか?」

「大丈夫よ。私も料理は結婚してから覚えたの。それまではやったことなかったわ。」

「そうなんですか?!」

「えぇ。スマイリーに教わったの。レストラン経営者の妻が料理のひとつもできないなんて恥ずかしいって言われて。」

「さぞ、丁寧に教えてくださったんでしょうね。」

「ぜ~んぜん!しょっちゅう喧嘩してたわ。物覚えが悪い!教え方が悪い!って感じでね。」

クスクスと笑うマデリンは幸せそうに見える。

「でも、だからこそ分かりあえたこともあるのよ。」

そんなものなのかと思うが、未緒は誰かと言い争いをしたことはなかった。悪意を向けたことはあっても、相手の意向は考えたことはなかったし、逆に向けられたときは無視した。だから『言い争い』のようにお互いの意見をぶつける(?)ことはしたことがない。どこまでも一方通行だ。


「あなたたち、もう喧嘩はした?」

「ジェフと私ですか?いえ、ないと思います。アシスタントの時に意見を言ったことはありますけど、最終的に決めるのはボスであるジェフでしたから。」

「まぁ!ブルームに仕事で意見したの?!それだけでも立派なものよ。でも、仕事となるとちょっと違うわね。まだ、新婚さんですもの。そのうち嫌でもそういう機会がくるわよ。」

「なんだか喧嘩を推奨しているみたいですね。」

「あら、そうね。でも私が言いたいのは、喧嘩した後により絆が深まるってことよ。まだ、わからなくてもいいわ。こういうことは実感しないとわからないのよ。」



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


いま、ノートPCをベランダに出してパチパチしてます。

我が家はリビングにエアコンないんです。

扇風機はあるんですけどね。

ベランダが一番涼しい!!!

実はお昼もベランダで食べました。

エコっていうより、苦肉の策です σ(^_^;)