蓮は、キョーコを丸め込む言い訳を思いつけないまま会えない日々が続いていた。


最上さんが好きだから不破に嫉妬したんだ。

本当だけど言えるわけない...。


社さんが勘違いしてるんだよ。外国人には挨拶のキスをしてるよ。

いつも一緒にいるのに社さんが勘違いするわけないだろう?それに社さんが嘘をつく必要がない。


あのモデルは日本人なんだ。だから、挨拶のキスはしなかったんだ。

んな訳あるかぁ!どこからどうみても日本人には見えなかっただろう?


あのモデルは男性だったんだよ。

なんつう、突拍子もない...。


あの時は最上さんが外国人に見えたんだよ。

俺は宇宙人に何か埋め込まれたのか?


あの時は突然、最上さんにキスしたくなったんだよ。

俺は変態か。(いや、いつもしたいと思ってるけど。)


あの時は最上さんにキスするように神の啓示があったんだ。

...。


最上さんが不破に脳内汚染されてたから現実に戻そうと思って、俺って後輩思いだからさ。(キュラリッ)

この当たりが無難か?でも、それって俺がやたら軽い男に見える。『遊び人』確定?



は~~。一体どうすりゃいいんだ?!



それにここのところ、最上さんの影さえ見ていない。これは、もしかしなくても避けられている。どうにか彼女に会おうと社さんがスケジュール調整しているが、もう少しのところでかわされてしまっている。とにかく会って誤解(?)をときたいと思う気持ちと、丸め込む言い訳が思いつかないまま会ってどうするんだという気持ちで揺れている。


そんなジレンマを抱えたままの俺の目の端にどピンクつなぎが横切っていくのが見えた。


!!!


きっと、俺の急なスケジュール変更を知らなかった彼女がラブミー部の仕事で事務所にいたのだろう。とにかく今捕まえなければと焦り言い訳が思いついていないにも関わらず、彼女の後をついていった。最上さんが資料室に入っていくのを確認した俺は静かにドアを開け身体を滑り込ませた。彼女は、何かブツブツと言いながら棚を一つずつ確認している。探し物をしているらしい。


「キス...キス...口づけ、接吻...」


なんだ?一体何を探しているんだ?


最上さんはAVコーナーでDVDを見ている。手にとっては後ろの説明を読み籠に入れたり戻したりしている。

「は~。割と『キス』ってたくさんあるのね。これならすぐに片付きそうだわ。それにしても世の中の恋人同士はこんなにしょっちゅうキスしてるのかしら?そんなにいいものなの?思考回路がショートしちゃうのよ?!」

そういうとキョーコは動きを止めた。暫くすると何かを振り払うように首を大きく左右に振り、「さっ、仕事、仕事!早く片付けないと!」と言って、また手を動かし始めた。


どうやら『キス』に関するものを探しているらしい。動きを止めていたということは『キス』を思い出していたのだろう。でも、どちらの?『お礼』それとも『アリクイ』?それに『思考回路がショート』ってどういう意味だ?『幸せ』?『嫌悪』?単に『ビックリ』か?

『アリクイ』が『嫌悪』ならいい。でも『お礼』が『嫌悪』だったら...。そもそも、『お礼』はキスとしてカウントされたのかどうかも怪しい。


蓮がネガティブな思考に浸っていると、キョーコが黒いオーラに気づき「ヒィッ!」と恐怖の悲鳴をあげた。恐怖の色を滲ませたキョーコの悲鳴にますます蓮はオーラを黒くしてキョーコに近づいて行った。


「何してるの?」

「それはこちらのセリフです。敦賀さんこそ、こんなところで何をしてるんですか?!」

「俺?俺は最上さんが見えたからついてきたんだ。」

「ついてきたって...。お忙しいでしょうに。」

「だって、最上さんが俺から逃げるから...。」

「にっ、逃げてなんかいません。」

「そう?逃げてないなら避けてるんだ。」

「そっそんなことありません!」

「ほら。動揺してる。嘘つくの下手だよね。」

「蓮はおもむろに籠の中からDVDを一つとるとパッケージを見る。次にキョーコに顔を向けたときは夜の帝王になっていた。

「キス...。興味あるの?」

いつもよりワントーン低い声に色気が滲みでていて、キョーコは一歩後ずさったが、キョーコが引いた分よりさらに蓮は半歩前に出た。結果的には最初よりも蓮とキョーコの距離は縮まってしまう。

「きょっ、興味なんてありません!こっ、これは、ある歌手の方が今度の曲作りの参考にしたいからって集めてただけです。」

「ふ~ん。でも、さっき『キスっていいものなの?』って言ってた。それって興味ありってことでしょ?」

じりじりと下がり続けるキョーコを追って蓮も前に詰める。すぐにキョーコは壁際に追い詰められた。

「ききき、聞いていたんですか?!ヒドイです!!」

慌てるキョーコに蓮は悪びれもせず、ニコリとして頷いた。


「うん。そうだね。俺ってヒドイ男かも...。ねぇ、『キス』教えてあげるよ。『思考回路がショート』しちゃうようなやつ。俺以外とはもうキスしたくなくなるような...。」


蓮がキョーコの両頬に手をあてゆっくりと顔を近づける。キョーコは蓮の胸に手を置いてどうにか離そうとするのだがビクともしない。

「何か、悪いものでも召し上がられたんですか?それとも熱でも?とにかく離してください!!!」

「嫌だ。離したら逃げるだろう?それに、俺のことデリートするだろう?それなら、いっそのこと...。」


蓮がさらに顔を近づけ、キョーコの唇に触れそうになった瞬間キョーコの目から大粒の涙がこぼれた。蓮が我に返り近づけた顔を離す。


「『キス』なんてあの1回きりで十分です。私があの後どうなったか知ってるくせに...。仕事にならなかったんですよ!」

「『キス』ってどの『キス』を言ってるの?」

「わかってるでしょう?『お礼』のキスです!」

「あれがキスなの?『アリクイ』じゃなくて?」

「あれは、キスじゃありません!不幸な事故です!『アリクイ』のあとはお芝居はできました。でも...。とっ、とにかく離してください。新手のイジメですかぁ!」

「イジメなんて...。イジメられてるのは俺だよ。君はどんどん綺麗になって、馬の骨を量産して...。俺を煽っておいて素知らぬ振りをしているんだ。」

「なんのことかさっぱりわかりません。馬の骨?煽る?」

涙のたまった瞳で見上げられ、蓮はどうにも止まらなかった。

「ほら、そうやって...。もういい。黙って...。好きだよ、キョーコちゃん...。」


再び、ゆっくりと顔を近づける蓮の唇をキョーコは自身の手で塞ぐ。蓮はキョーコの手首を掴み壁に押し付けると、キョーコは最後の抵抗とばかりに俯き顔を左右に振る。


「...好きって...。どっ、どうして私のことからかうんです?そんなに嫌いなら放っておいてくれればいいのに!ヒドイです。一生懸命蓋をしてるのに、どうしてこじ開けようとするんです?もう誰も好きにならないって決めたのに!」

「それって...。俺のこと...?」

キョーコは泣きじゃくり、それ以上は声にならなかった。蓮は跪き、キョーコの顔をのぞきこむ。

「からかってなんかいない。本当に好きなんだ。こんな気持ちになったのは初めてでどうしていいのかわからない。嘘だと思うなら聞いてみて、俺の気持ちはダダ漏れらしいから。社さんでも、琴南さんでも...。社長も知ってるし、なんなら不破だっていい。」

「!」

「ねぇ?俺のこと好き?」

期待した目で見上げられ、キョーコはどうしていいかわからない。敦賀さんが私なんかを好き?夢でも見てる?

「ねぇ?好き?」

「...。」

「キライ?」

キョーコはぶんぶんと顔を左右に振る。

「なら、好き?」

「...。」

「沈黙は肯定...。」

蓮は膝をついたまま、首を伸ばしキョーコの頬にキスをした。
「ねぇ、好きだと言って?」

懇願する蓮にキョーコはとうとう思い蓋を開けた。

「...す...きです...。」

キョーコが言い終わるやいなや、蓮はキョーコを抱きしめてキスをした。今度は本当に唇に。


「嬉しい。もう離さないよ...。」




☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


すごーくヘタレですよね。こんなんで終わっていいのかと思いつつせっかく書いたのであげてみます。

前半と後半で雰囲気が違うのは、途中まで書いて放置していたからです...。

 

「はじまり」はですねぇ、暑くて進まないのです。

暑い → ビール → 寝る

明日、続きを書けるといいなと思っていますが...。