『WOUNDED MOON』の放送はまだ始まっていなかった。『DARK MOON』のスピンオフというだけで話題になっていたのに、未緒の相手役の久遠がクーの息子であることが分かってからは連日ワイドショーで取り上げられていた。もともと『DARK MOON』は『WOUNDED MOON』の放送前に再放送される予定ではあったが、急きょ『月籠り』までもが再放送されている。

さらに、それはアメリカでも放送されることに決まった。クーの主演した『月籠り』、アメリカで最優秀助演男優賞を受賞した敦賀蓮主演の『DARK MOON』、そしてクーの息子久遠、妻ジュリエナの出演する『WOUNDED MOON』はアメリカでも話題に事欠かず、注目されていた。


「蓮はどうするのかな...。」

キョーコの控室でネットで日本の情報をチェックしていた社が呟いた。

「どうしたんですか。」

キョーコが『蓮』という言葉に反応して口を開く。

「これなんだけどね...。」

社は持っていたPCをキョーコが見やすいように向きを変えた。

「日本で、このドラマがすごく話題になっていてね。それはいいんだけど、『DARK MOON』の再放送で『蓮』の失踪疑惑も再燃しちゃったみたいで...。」


キョーコは瞳を曇らせた。

「本当に大丈夫なんでしょうか...。」

キョーコの呟きで社はキョーコの心配が久遠の闇の再燃だと分かるとフワリと微笑んで言った。

「久遠は大丈夫だよ。もう大丈夫なんだ。」

キョーコだってそう思いたい。でも、久遠の闇の深さを知っているキョーコは社の言葉を素直に受け入れられない。瞳を曇らせたままのキョーコに社は言葉を続ける。


「俺ね、久遠に過去の話を聞いたときに思ったんだけど...。『蓮』って隠れラブミー部員だったんだと思うんだよね。『久遠』に戻れたから卒業できたんだと思うんだ。キョーコちゃんがいなかったら、今も『久遠』には戻れてなかったよ?」
「そんな?!敦賀さんがラブミー部員なんてことあるわけないじゃないですか?!それに...それに私は何もしてません。」

「『蓮』ってさ、幸せになることを拒否していただろう?それって『愛したくも、愛されたくもない』っていうのと同じじゃないかな。だけどアイツはキョーコちゃんに出会って幸せになりたいって思えたんだよ。だからキョーコちゃんが何かしたとかしないとかは関係ないんだ。『蓮』が『久遠』がキョーコちゃんと幸せになりたいって思えたことが大事なんだよ。」

「でも...。なんで私なんでしょう?そこが信じられないんです。敦賀さんの周りにも久遠さんの周りにも、もっと綺麗で性格もいい人がたくさんいるじゃないですか?」

「綺麗かどうかっていうことなら、キョーコちゃんは十分綺麗だよ。でもこれは見る人の価値観だからね。久遠のことを格好いいという人は多いけどそうじゃないっていう人もいるわけだし?性格がいいっていうのも同じだよね?俺はキョーコちゃんみたいに優しくて思いやりがあって気の利く性格のいい子は他に知らないけど、何に重点をおくかで変わってくるよね。」

「でも...。」

「ふふ。キョーコちゃんてさ、何にでも一生懸命でいいけど、時々『やりすぎ!』って思うこともあるし、根性があるといえば聞こえはいいけど『執念深い』って思えることもあるし...。でもね、久遠はそんなこともひっくるめて『キョーコちゃん』が好きなんだよ。『どうして』って理由は必要ないんじゃないかな。まぁ、久遠にキョーコちゃんの好きなところをあげろって言ったら際限なくあげるとは思うけどそれはほんの一部であって100%ではないんだ。久遠はキョーコちゃんが『キョーコちゃん』だから好きなんだから。俺の言いたいこと分かる?」

「...えっと、そのままの私でいい...ということでしょうか?」

社は目を細めて笑う。

「そう、よくできました。だからね、『蓮』を卒業した久遠は大丈夫なんだよ。」

「?」

「久遠が自分を許すことができて幸せになりたいって思ってるんだから。久遠もそのままの自分でいいんだって思えたってことだよ。なんだか二人ともよく似てるよね?」

「...。」

「とにかく、もう久遠は大丈夫なんだよ。信じてあげて。」

「...はい...。」

キョーコは俯いたままで小さく返事をした。


「でも、ホント『蓮』のことどうするんだろうね...。」

最後に社がポソリとつぶやいた。




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私も聞きたいです。

いつ蓮=久遠って公表するのか...。