ジェフはあげかけた手を下げて未緒の腰にやると声の主のほうへ振り向かせた。腰の手は離さずにそのまま口を開く。
「ご紹介しますよ。僕の花嫁の未緒です。」
その女性は金髪で深い碧い瞳の持ち主だった。40歳くらいだろうか、驚くほどの美貌の持ち主だった。未緒はその声でギャラリーでジェフと言い争っていた女性だとすぐにわかった。そして、ジェフの態度が固くなったことにも...。
「はじめまして。未緒と申します。」
女性は未緒を値踏みするように上から下まで繁々と見た。ぶしつけな視線に未緒は気分を害したが自分を『傷物』と言った女性だ。このくらいは仕方ないだろうとジェフに「どなた?」と視線を送った。
「さっき後で紹介するって言ったろう?養父『ジェフリー』の一人息子『ジェファーソン』の娘でジェーンだよ。僕の後見人でもある。」
「あなたの後見人?」
「そう。彼女の両親が事故で亡くなったので先代のジェフリー、ジェーンにとっては祖父だね...のもとに引き取られたんだよ。そこへ僕が養子になったものだから、姉弟みたいな関係なんだ。もっとも、彼女は僕が引き取られた時には寄宿舎にいたし、僕が寄宿舎に入った時には海外に留学していたからほとんど一緒に過ごしたことはないけどね。」
ジェーンの表情が強張ってみえたのは気のせいだろうか。それに、ジェフの説明が今までより長くとげとげしい気がする。
「そうでしたの...。」
「ジェーン・コンラッドよ。よろしく...。」
ジェーンが手を出したので未緒も手をだし握手をした。
「ジェーン、今日はウィリアムは?」
「ウィルは...夫は今日はどうしても外せない商談があって。せっかくのお祝いに行けなくてすまないと言われたわ。」
「そう。」
ジェフはすぐに嘘だと思った。自分を嫌っているウィリアムがそんなことをいう訳がない。
「...本当にこの娘と結婚したのね。どんな契約なの?」
「契約って...。」
珍しくジェフが口ごもっていると未緒が答えた。
「一般的な契約ですわ。『病める時も健やかなる時も』です。」
ジェーンは口角をあげまなざし鋭く言った。
「そう?では『愛』のためにというわけね。」
「えぇ。そうは見えませんか?」
ジェーンは未緒の答えに暫くジェフと未緒を見比べていたが自嘲的な笑みを見せた。
「わからないわ。ごめんなさい。私はあまりジェフのことはわからなくて...。あなたが『愛』のためにというならそうなんでしょう。お幸せに。」
ジェーンはそれだけを言うと他の客のところへ行ってしまった。ジェフが詰めていた息を吐き出す。その様子に未緒は違和感を感じたがひ孫集団がボールルームに戻ってきて未緒は取り囲まれてしまった。口々に未緒の演奏を褒め称えたのでジェフも一緒になって褒めた。そこにはもう、さっきまでのピリピリとした空気はなくいつものスマートなジェフが戻ってきていた。
パーティーは日付の変わるころにお開きになった。泊まらない予定の者は早々に帰宅したし、泊まる予定の者で年配者は先に部屋に引き上げてしまい残ったのは元気なひ孫たちだけだった。さすがに新婚夫婦を遅くまで引き留めておくのも気が引けたようでジェフたちはからかわれながら部屋に引き上げさせられた。
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30話くらいで終わるつもりでしたのに、50話になってしまいました。
しかも、終わりが見えない...。