未緒の返事にスレイドは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐにわざとらしい笑顔を見せた。

「はは。これは、一本とられたな。こうでないとブルームの妻は務まらないか。でも、未緒?私は君のボスじゃあない。あくまで今のは結婚披露宴でのお決まりの文句だよ。不快にさせたのなら謝るが、そう目くじらをたてることでもないだろう?」

「えぇ、もちろん。分かっております。『トンプソン』の家の心配をしてくださったのですよね。これだけの家柄ですもの、仕方ありませんわ。」

「わかってくれるかい?ところで今時の若者は伝統とか家柄とか軽視しがちだが君はそうじゃなさそうだ。君の家は何をしていたのかな?先祖は侍かい?」

未緒のほうから話の糸口を提供してくれ、ここぞとばかりにスレイドは質問を浴びせた。どこかに結婚をなかったことにする理由がみつかればいい。

ジェフは話の流れにどうしたものかと考えていたが、先に未緒が口を開いた。

「残念ですが、侍ではありませんね。父は会社を経営していましたが、今はゆっくりしたいみたいで人に譲ってしまいましたわ。」


「スレイド、今日の主役を独り占めかい?」

別の男性から声をかけられ、ジェフは安堵した。スレイドにこれ以上の情報は与えたくない。振り向くとスレイドより幾分若いが、打って変わって人のよさそうな男性が立っていた。

「ブルーム、おめでとう!」

「ありがとうございます。」

ジェフは笑顔で握手をかわした。

「はじめまして、未緒。」

「はじめまして。」

誰なの?と未緒はジェフに視線を送る。

「彼は養父の次女の夫、スマイリーだよ。」

「『笑顔』ですの?とてもお似合いですのね。」

未緒はスマイリーの人懐こい笑顔につられて微笑み返した。

「そう、この年になるとどうかと思うけど親からもらった名前だからね。スマイル・カーペンターだ。よろしく。」

「未緒です。よろしくお願いします。」

「今日はマデリンは?」

「一緒に来たかったんだが、一番下の娘が出産しそうでね。付き添っているよ、君たちによろしく伝えてくれって言っていた。あぁ、マデリンは妻だよ。」

大人しく聞いている未緒にスマイリーは補足する。

「そうでしたか。おめでとうございます。」

「これで孫は8人目だよ。」

スレイドはスマイリーの孫自慢が始まる前に退散していった。スレイドが十分に離れたのを見てスマイリーがジェフに近づき小声で忠告する。スマイリーは笑顔だが目は笑っておらず真剣だ。

「ブルーム、スレイドには気をつけろよ。今、会社の中がゴタゴタしているらしい。例の件は聞いたが俺もマデリンもお前が継げばいいと思っている。先代のジェフリーも何を考えてたんだか...。」

「...。ありがとうございます。気を付けますよ。」

スマイリーはそれだけ言うと離れていった。未緒はジェフに聞きたいことがたくさんあったが、ここで話すことは危険だと思い黙っていた。


宴はすすみ、杯も重ねたころ楽団が演奏をBGMからダンス音楽に変えた。とりあえず、どの年代でも踊れそうな無難な曲から始まった。今日の主役がファーストダンスをと言われたが未緒は着物なので踊れないと断ると曲調がスローなものに変えられた。

「これなら大丈夫だろう?揺れてるだけでいい。僕たちが踊らないと誰も踊ることができないよ。」

未緒は仕方なくジェフの手をとりフロアの中央へ出た。ジェフは優しく未緒を引き寄せると曲に合わせて揺れ始めた。

「そう、上手だ。あとは恋しているように僕を見て...。」

ジェフは傍から見れば愛を囁いているかのように未緒の耳元で言った。未緒はジェフの左手が帯のために腰ではなくヒップの上にあるだけでも気になって仕方なかったのに、更に甘い声で囁かれてどうしようもなく鼓動が跳ねる。その上、『恋してるように僕を見ろ』ですって?!私は女優じゃないのよ。未緒は内心で毒づいた。

未緒は睨みつけようとジェフを見上げたが上気し潤んだ瞳は得も言われず色っぽい。ジェフは一瞬息をとめたが、誤魔化すようにまた、未緒の耳元で囁いた。

「すごくそそられるけど、『恋してるように』見てほしいな。」



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パーティーが終わりません~!