「キョーコちゃん、テレビつけて!」
社が慌てて控室にやってきた。
「どうしたんです?そんなに慌てて...。」
「いいからとにかくつけて!」
社はリモコンを手に取るとチャンネルをいくつかかえ、お目当ての番組をみつけた。
大勢の人がクーを囲み、マイクをむけている。
「芸能界イチのおしどり夫婦で有名でしたが、やはりそれは演技ということだったのですか?」
「演技?そんなわけないだろう。私とジュリは心の底から愛し合っているよ。それは海よりも深く...。」
そこで別のレポーターが割って入る。
「でもジュリは今回、クー、あなたの留守中に男性と親しげに腰に手を回してアパートに入るところを撮影されていますよね?しかもしばらくその男性はアパートから出てこなかったとか...。これはジュリの浮気では?」
「ジュリが浮気するなんてあるわけないだろう!!」
「では本気だと?すでに心はあなたではなくこの男性にあると?」
クーは深くため息をついた。
「確かに、ジュリは彼を愛しているよ。私もそれはよくわかっている...。」
あっさりと認めたクーにレポーター陣は驚きを隠せない。
「相手の男性をご存じなのですか?!なんでもスゴイ美形でジュリとは親子ほど年が離れているそうですが...。」
「あぁ、よく知っているよ。彼は確かに美しいし若いね...。私は彼が羨ましい。」
(なんで、私だけのけものなんだ!私だってみんなで会いたかった!)
「では、離婚もありえると?」
「なぜ、そういう話になるんだ?」
「では、今回の件は許すと?」
「許す?許すも何も仕方ないと思っているよ。」
(だって、ロケで海外に行っていて一緒に行けなかったんだから仕方ないだろう。今度は絶対に家族一緒に食事にいくんだ!)
そこでクーの映像は途切れ、スタジオの司会者が後を引き継いだ。
「社さん、これって...。」
「うん、こないだの時だね。久遠が酔っぱらったジュリエナを送っていっただろう?」
「久遠さんがジュリママの浮気相手ですか?!」
「そういうことだね。」
「だって、親子なのに...。」
「まぁ、俺たちは知ってるけど、世間は知らないからね。しかも、クーがこんな思わせぶりなコメントをするから、大騒ぎになってるよ。」
「久遠さんの身元は知られてないんですか?」
「今のところは...。でも、割と鮮明に撮られてるし、久遠の姿でモデルもしてるから時間の問題じゃないかな?」
クーとジュリエナの息子であることで辛い思いをしてきたのに、こんな形で世間に知れてしまって久遠は大丈夫なのだろうか。キョーコはまた久遠が傷つきはしないかと心配になった。
コンコン
ノックの音に返事をするとドアが開いた。
「あっ、見たんですね。」
久遠が控室に入ってくるとつけっ放しになっているテレビに目をむけた。
「あぁ、今見てたところだ。どうするんだ?」
「どうもこうも。浮気なんてありえないのは社さんもわかってるでしょう?」
「俺たちはわかってるけど...。」
「いま、監督と話してきました。せっかくだから宣伝にしようかと...。」
「宣伝?」
「えぇ、せっかくだからもう少し話をひっぱて親子役で親子初共演!って宣伝してもらおうかと。」
久遠は何でもない事のように笑顔で続ける。
「でも、ゴシップで話題になるのは...。」
「その点は監督とも相談したんですけど、きっかけはゴシップでもドラマを見てもらえさえすれば、そんなこと感じさせない自信はあるっておっしゃっていただけて。それに今はゴシップになってしまっていますけど、実際はゴシップでも何でもありませんからね。デュリスさんもテレビ局に手を回したみたいでアメリカでも放送するって言ってました。しかもダークムーンから。」
話の方向がとんでもないところへ向かったので社は一服いれようとお茶をとりにいった。
残されたキョーコは久遠におずおずと聞いた。
「あの。大丈夫ですか?」
「ん?何が?」
「その、こんな形でご両親のことが知れてしまって...。」
「あぁ。大丈夫だよ。もう、そんなことでつぶされない自信がついたから。あの二人の子供であることを誇りに思えるようになったし。まぁ、ちょっと暑苦しいときもあるけどね。心配してくれたの?」
「だって...。」
「本当に大丈夫だよ。今はあの時と違うから。それに...今はお守りがいてくれるからね。」
久遠に神々しい笑顔で見つめられ見る見る間にキョーコは赤くなった。
「そんなお守りなんて...。」
「俺の大事なお守りだよ...。」
久遠はキョーコを抱きしめたいのを必死に我慢していた。
その後、大衆紙は連日ジュリの浮気疑惑を報道していた。
『ジュリ、浮気相手は金髪碧眼の超美形モデル!』
『クー、沈黙を守る!やはり離婚か?!』
『ジュリとの出会いは日本のドラマ共演!』
そして事の真相がクーによって暴露された。
「クー、離婚の話し合いにむけて弁護士をたてているというのは本当ですか?」
「だから、離婚はないと言っているだろう?」
「しかし、ジュリはもうL・Aの自宅を出ているという噂ですが...。」
「しばらく、ロケで留守にしているだけだ。」
「ロケとは例の日本のドラマですか?」
「そうだ。」
「彼がジュリと一緒にいることについて何とも思わないんですか?」
「思わないわけないだろう?!ジュリだけずるいじゃないか!」
レポーターの頭の上に?が浮かぶ。『ジュリだけ』?『久遠』の言い間違いじゃないか。
「だって、そうだろう?私だって一緒に共演したかったのに!しかも親子役なんて!」
「それはどういう意味ですか?あなたは彼がジュリと一緒にいることではなく、ジュリが彼といることに憤りを感じているってことですか?」
「そうだ!私だって愛しているのに!私だって久遠と共演したかった!!!」
「私たちはジュリをクーと彼が取り合っているのかと思っていましたが、ジュリとクーが彼の取り合いをしているように聞こえますが?!」
「そうだ!私とジュリは愛し合っているが、それとこれとは話が別だ!愛する息子との初共演をジュリだけがしたんだ。嫉妬するってもんだろう?!」
!!!
「愛する息子...です...か?」
「そうだ。愛する私の息子、久遠。私だって共演したかった...。」
しばらくは大衆紙をにぎわせたが、ただクーの親ばかぶりを露呈しただけで話題はすぐに他の有名人のゴシップに移っていった。