朝の日差しに未緒はうっすらと意識が浮上しつつあった。
あたたかい...。
この包むような温もりは何かしら?
明るい。あぁ、太陽の日差しがあたたかいのね。
未緒は瞳を閉じたまま微笑んだ。
この温もりに包まれた幸せな眠りを手放したくない...。
もう一度眠りにつこうとした未緒の体をあたたかい物がなでている。
?
これは何?
それは未緒の体のラインをなぞるように動いた。
優しく...。壊れ物に触れるように優しく。
そして、素肌に触れると途端にあたたかだった物が熱くなった。
触れているところから、熱が未緒の身の内にもこもりはじめる。
息が苦しくなり、熱が全身に広がる。
体に熱をほどこす物とは別の湿った熱が首筋に触れたかと思うと襟元が広げられる。
素肌に触れる外気が熱のこもった体に気持ちいい...。
湿った熱が肩に移ると軽く痛みが走った。
???
そこで、やっと未緒は目を開けた。
熱の正体を見つけようと自身の体を見下ろすと、そこには大きな手があった。
その手は大きく開いたローブの襟元から素肌に触れている。首筋に戻った熱は唇?!
未緒は背後から抱きしめられていたが、気付いた途端に心臓が激しく鼓動を打ち始めた。
「ぅうん...やめ...。」
未緒は自分の手を大きな手に重ねるが、それでも動きは止まらない。
離れようと体をねじるが背中からすっぽりと抱きかかえられているためそれもままならない。
「...なぜ?ハニー...。」
耳元で艶っぽくささやかれ新たな熱の波が広がる。
「わ、私はあなたのハニーではありません!未緒です!」
未緒の体をなでていた手と首筋を這っていた唇はピタリと止まった。
「...未...緒?」
「はい。だから、離してくださいませんか?」
「ご...ごめん。」
ジェフはベッドの縁のぎりぎりまでさがり、未緒から可能な限り離れた。未緒は慌ててローブの襟を合わせる。
「すっ、すまない。本当にこんなことするつもりはなかったんだ。そっその寝ぼけてたみたいで...。」
ジェフはまるで女の子のように首元までシーツをあげ上半身裸の体を隠した。
ジェフの慌てた姿などみたことがなかった未緒は思わず笑ってしまった。
本当に寝ぼけていたのだろう、きっとガールフレンドと勘違いしたのだ。『私』だからではない。昨夜は私のために一緒に寝てくれたのだ。ここでジェフを責めるのはかわいそうだ。
「大丈夫です。わかってますから。」
「本当に?わかってくれる?」
すまなそうな顔でしおらしく未緒を見るジェフが叱られた子どものようで可愛く見える。
「くす。えぇ、わかってます。二人とも目が覚めましたから朝食でもどうです?」
「あぁ、そうだね...。」
「よかったら、お先にバスルームをどうぞ?」
「あっ、いや...。女性は化粧とかあるだろう?先に使っていいよ。」
「そんなにかかりませんけど...。ではお言葉に甘えて。」
未緒が着替えを持ってバスルームに行ってしまうとジェフは深く息を吐いた。
(こんなんでベッドからでられるわけがないだろう!僕はティーンエイジャーかっ?!)
ジェフはいつもの習慣で裸で寝ていた。さすがに下着は穿いてはいたが...。
咄嗟にシーツをかけたのは体が反応していたから。
昨夜は未緒を抱いて寝ることが名案だと思えたのだ。
本当に邪な気持ちはなかった。
うなされて震える未緒を見て守ってやりたいと思っただけだった。
なのに...。
寝ぼけていたとはいえ、なんてことをしてしまったのだろう。
あたたかくて柔らかくて...。
つい、触りたくなったんだ。
触ったらなめらかで、『もっと』って思ってしまった。
甘い匂いがして...。
味わいたいと思って、口に含んだら本当に甘くて...。
やっぱり『もっと』欲しくなって...。
そこで未緒にとめられて、目が覚めた。
あのまま未緒がとめなかったら...。
女性を『甘い』と表現するのは知っていたけれど、過去の経験で本当に『甘い』女性はいなかった。
本当に『甘い』女性がいるなんて思いもしなかった。
今まで未緒に女性としての魅力を感じたことはなかったのに。
未だ鎮まらない自分がわからなくなった。
2012-7-31 一部修正