「キョーコちゃん!次の仕事が決まったよ。」
社が瞳を輝かせて控室に入ってきた。
「そうなんですか?」
「うん。ドラマなんだけど、『未緒』だよ!」
「えっ?『未緒』ですか?」
「そう、『未緒』!でも、今度は主役だから!」
ダークムーンの撮影が終わってから、緒方はずっと『京子の未緒』を主役にドラマを撮りたいと思っていた。もちろん、原作にはない話である。新しい風を送ってくれた『未緒』にも新しい人生を作ってやりたかったのだ。少しずつ脚本を書き、このほど完成したのである。脚本を持ち込むとダークムーンの時のスポンサーがまたついてくれることになった。もちろん、京子が未緒になることを条件にした。今、注目の実力派女優なのだからスポンサーにも異論があるはずがない。緒方が脚本を持ち込んでからあれよあれよと言う間に話は進んだのである。
マネージャーである社は今更また『未緒』を演じるのはどうかと思ったが、緒方の脚本を見て、絶対に受けるべきだと思った。この仕事は京子の分岐点になる、そう思えた。いつもなら、キョーコの意見を聞いてから仕事を受けるのだが、今回は聞く前に決めてしまった。
「この仕事は絶対に『京子』のためになるから、意見も聞かずに決めちゃったんだ。ごめんね?」
「いえ...。そんなこといいんです。社さんのこと信頼してますから。」
「ありがとう。撮影は来月から...。海外ロケもあるから、その分この1カ月忙しくなるけどがんばろうね。」
「はい!」