「...。」

「ごめん...。調子にのりすぎた。」

シュンとなって俯いた久遠にキョーコは何と言ってよいか分からなかった。

久遠が過去の話をしてくれて嬉しかったし様々な疑問は解けた。

では、キョーコ自身はどうしたいのか...。

敦賀さんと久遠さん、コーンは同一人物だった。そして自分を好きだと言ってくれている。

私も3人とも好きだ。多分、間違いないと思う...。


「ごめん...なさい...。」

キョーコが絞り出した声に久遠が顔をあげた。

「そう...だよね。ごめん、気にしないで。デリートされないだけ良かったんだ...。」

「あっ、そうじゃなくて...。上手く話せるかわからないんだけど...。

私も好き...だと思うの。でも、ごめんなさい。信用できない。」

「それは仕方ないかな。あんなことをしたのは俺だから。虫がよすぎたよね...。」

「違うの。信用できないのは私なの。

久遠さんの横に並ぶ自信がないの。

こんな私でいいのかなって。」

「そんなことない!俺はキョーコちゃんがいい。他にはいらない...。」


「今は、そういってくれてもいつかまたいなくなるかもと思うと怖いの。

空っぽの自分のままじゃ、だめなの。」

「空っぽなんて...。もう、そんなことないじゃないか!」

「うん。そう...かもしれない。お芝居の楽しさを知って、まがりなりにも色々な役を演らせてもらって。前よりは空っぽじゃなくなったかも。でもね、私の目標は『敦賀蓮』をお芝居でぎゃふんと言わせることだったの。『敦賀蓮』という役者に追い付きたいの。

ねぇ、久遠さん。なぜ、受賞するまで『久遠』さんに戻ろうと思わなかったの?B.Jで闇をコントロールできるようになったのに...。それはきっとケジメでしょう。日本にきて『敦賀蓮』になったときに自分に課した課題。私もケジメをつけたいの。そうでないと、また「私なんか」って思ってしまう。久遠さんの隣にいられる自信が欲しいの。わかってくれる?」

久遠は過去を振り返ると自分もそうだったと思った。キョーコに群がる男どもを牽制しつつも何も行動できなかったのは目標を達成するまでは自分を許せなかったから。

「わかる...。わかるよ...。なら、待ってる。キョーコちゃんが自信をつけるのを。最上キョーコが満たされるのを。」

キョーコは首を振る。

「待たないで。何時になるか分からないのに、待たせるなんてできるわけない。それに私が甘えてしまうから。」

「そんな!それすら許されないなんて...。」

キョーコは沈痛な面持ちで眉をよせ、涙をこらえる。

「...わかった。待たないけど好きでいるのは自由だよね?それぐらいは俺の自由にさせてもらう。」

「...。」

「それと、これ貰ってもらえないかな。」

久遠はポケットから青い石のついたネックレスを出した。

これ以上の緊張に堪えられそうもなかったキョーコは話がそれたことに安堵した。

そうでなければ、あと一言でも久遠が懇願したら頷いてしまっていたかもしれない。

「これって?」

「うん。コーンで作ったんだ。勇気と自信はあげられないかもしれないけど、悲しみは吸い取れるよ?」

コーンはプリンセスローザと全く同じデザインのネックレスになっていた。

「でも、久遠さんのお守り...。」

「大丈夫、コーンの分身があるから...。」

そう言って、蓮の時にプライベートでよくつけていたペンダントトップを見せた。トップの先に小さな青い石が埋め込まれている。

「ありがとう...。コーンとプリンセスローザ。これで無敵かな?」

キョーコは涙をたたえた瞳で懸命に笑顔を作った。

「えっ?!もう一つのお守りってプリンセスローザ?」

「そうだけど...。知ってたでしょ?」

「そう...だったね。忘れてたよ。」

(俺、そこまで自分に嫉妬してたなんて。ほんと、間抜けだな。)

久遠は自分の間抜けぶりに肩の力が抜けた気がした。


久遠はキョーコに手をさしだす。

キョーコは不思議そうにその手を見た。

「早く追いついておいで?といっても、『久遠』も再デビューしたばっかりの新人だしライバルかな。」

「ふふふ。わかりました。きっと、ぎゃふんと言わせて見せます!!!。」

キョーコは久遠の手をとって強く握り返した。