「待ってよ!京子!」
帰ろうとしていたキョーコを追いかけてきたのはブレイクだった。
声をかけられてキョーコは立ち止り振り向く。
「どうかしたの?」
「ちょっと話があるんだ。」
ブレイクは辺りを見回すとキョーコの腕をつかみスタジオの外の他からは死角になる所へ連れて行った。
話があるというわりには中々話しださないブレイクにキョーコから口を開いた。
「なに?話って...。」
「うん...。あのさ、こないだのパーティーで一緒にいた人...。彼って...。」
「久遠さん?だから、恩人の息子さんよ。それが?」
「あっ、そうなんだってね。」
何故、今ではみんなが知っていることをまた聞いてくるのかキョーコにはさっぱり分からなかった。
「俺が聞きたいのは、そうじゃなくて京子の何かってことなんだけど...。」
「何って?」
「だから、彼は京子の恋人なの?」
「! ちっ、ちがうわ!」
目に見えてうろたえるキョーコに疑いの眼差しをむけて再度問いかける。
「本当に?随分仲が良さそうだったから。てっきりそうなのかと...。」
「そんなわけないじゃない!久遠さんと私なんかが...。あるわけないでしょ?」
「そう?そんなことないと思うけど...。違うならいいんだ。
ならっていうのもヘンだけど俺とつきあってくれないかな?」
「?だって、アンバーが...。」
「よく勘違いされるんだけど別に恋人じゃないんだ。幼馴染だから一緒にいることが多いってだけで。それより俺は京子のこと...。
前からかわいくって素直でいい子だと思ってたけど、この間のパーティーではビックリした。かわいいだけじゃなくてあんなに綺麗だったなんて...。
他の男どももそう思ってるよ。だから、ちょっと焦っちゃって...。
どう、俺とつきあってくれないかな?」
「えっと...。」
「パーティーの彼とは何でもないんでしょ?それとも誰か他に恋人がいるの?」
「いないけど...。」
キョーコの表情がどうすれば断れるかを考えているようにみえてブレイクはなおも言い募った。
「いないなら考えてみてくれないかな?」
「恋人はいないけど...。」
キョーコの答えにブレイクは言いたいことを察し後を続ける。
「けど、好きな人がいる...ってこと?日本にいる人?」
「...。」
肯定も否定もしないキョーコにブレイクは仕方ないなぁという顔をして苦笑した。
「わかったよ。俺は振られちゃったみたいだね。これからも共演者としてよろしく。」
そう言って去って行った。
茂みの後ろの道路に久遠がいたことにキョーコは気付いていなかった。