久遠はニューヨークに来ていた。
アルマンディの本契約と撮影、ニューヨークコレクションへの出演である。
本当ならこんな時にキョーコの側を離れたくはなかったのだが、これも仕事だから仕方ない。アルマンディとの契約を敦賀蓮として打ち切る時に、ぜひとも本人に会いたいと言われ仕方なくアールと会った。
久遠の姿で出向いたので彼はひどく驚いたが詳しい事情は一切聞かないでくれ、その上で久遠と契約したいと言ってくれた。彼は自分のメインコレクションには本当に気にいったモデルしか使わない。そのためにあまりモデルが変わることはなかったのだが今回は諸々の事情が重なり8人中、5人が一度に入れ替わるという彼にしては珍しいことが起きている。お披露目を兼ねたこのニューヨークコレクションはいつもより派手なものになっていた。
「ねぇ、キョーコ?これって久遠じゃない?」
「えっ?」
夕食の片づけをしながらつけっぱなしになっていたテレビに目をむけるとテレビはいつの間にかファッション番組になっていた。ニューヨークコレクションの様子が流れていたのだが、そこに映っていたのは確かに久遠だった。
「へぇ、アルマンディですって...。そういえばこれって『蓮』がやってたわよね?」
テレビでは、モデルが大幅に変わったことを天変地異でもおきたように大袈裟に伝えている。メインモデル8人が映し出されたがそこにあるはずの蓮の姿はなかった。
「久遠としか名前は出てないわね。『ヒズリ』の名前は出さないのかしら...。」
ジュリのつぶやきには反応せず、キョーコは画面を見ながら、蓮はもう帰ってこないんだなと根拠もないのに確信していた。