「そろそろ日本に帰るんだよね...?」

「はいっ。今回のクールは撮り終えたので来週帰ります。

いくつかお仕事の依頼もあるみたいで、帰ってからも忙しくなりそうでありがたいです。」

「そうか。それは良かったね。」

蓮のアメリカでの仕事はまだ3週間も残っている。

こちらでは週に2~3回は定期的に会っていたので2週間も会えないのかと蓮は内心がっかりしていた。

しかも、蓮が帰国したからといって今のように定期的にゆっくりと会えるわけではない。

残された時間をどうやって過ごそうかと考えていたが、キョーコが喜ぶのはやっぱり『レディ』かと思い乗馬に誘った。


キョーコの帰国前の最後の日曜日には朝早くからレディに会いに行った。

レディもキョーコのことを覚えてくれていて、キョーコが近づくと鼻先を寄せてくる。

「随分、なついたみたいだね。」

「ふふ。犬とかも飼ったことないのに、まさか馬と仲よくなれるなんて思ってもいませんでした。

レディに会わせていただいてありがとうございました。」

「キョーコもよく世話したからね。レディにもキョーコの優しさがわかるんだよ。」


その日はレディの世話をして遠乗りとまではいかないが牧場の割と遠くまででかけた。

馬房にレディを戻し、キョーコが別れを惜しんでいると着替えるようにと紙袋を渡された。

母屋の一室を借り、シャワーを浴びて着替えさせてもらう。

ブルーデニムのシャツ、ミニ丈のプリーツスカート、ダークブラウンのフリンジ付きベスト、同じ色のブーツにカウボーイハット。

キョーコは着替え終わると、蓮の待つ車に向かう。見ると、蓮も着替えたらしく、さっぱりとしていた。

「あの...。もう帰るんですよね?」

「ちょっと行ったところでお祭りがあるらしいよ。せっかくだから寄っていこうかと思って。」


車で30分ほど走ると一際明るい場所が見えてきた。臨時の駐車場らしきところに車を停めて明りの方へ歩いて行く。

いきなり蓮に手をとられたキョーコがビックリして蓮を見上げた。

「えっと。これは...?」

「そんなに広くないと思うけどはぐれないようにね?」

神々スマイルをむけられ、何も言えずにそのまま手をつないで歩いて行く。

キョーコは暖かくて大きな手にくすぐったいような気分になったけれど嫌ではなかった。


明りに近づくとカウボーイやカウガールがたくさんいた。

通路には出店もでており人があふれかえっている。

「日本のお祭りみたいですね。提灯もあるし。さすがにたこ焼きや飴細工とかはないみたいですけど。

この雰囲気で食べると美味しいんですよね。なんだかワクワクします。」

瞳を輝かせ満面の笑みで話すキョーコを見て蓮まで楽しくなる。

「お腹すいたろ?何かたべようか。」

一通り見て回り、ターキーサンドとアップルパイを買って二人でわけて食べた。日本では考えられないサイズだったので二人にはそれで十分だった。

広場ではステージでバーベキューの大食い競争が行われており、いかついカウボーイたちが飲み込むように食べている。さっきの量だけで満足した二人は顔を見合わせて同時に笑ってしまった。

「あれは...。ちょっと...。」

「だよね?あっちに移動遊園地があるみたいだから行ってみようか?」

出店のほうも賑やかだったが、移動遊園地の方は赤青黄緑の電飾で彩られ闇の中でキラキラしていた。小さいながらもコーヒーカップや観覧車、お化け屋敷のようなものまである。

「何か乗ってみる?」

「大人も乗って大丈夫なんですか?」

「みんな乗ってるよ。ほら。」

「なら、コーヒーカップ!」

小さいながらも回転スピードはなかなかのものでしっかりと掴まっていないと振り落とされそうになる。

「蓮~!やめておちるぅ~!」

やめてと言いながらも笑顔のキョーコに蓮は更にカップを回転させる。勢いで本当に落ちそうになったキョーコを蓮は肩を抱いて押さえた。キョーコは「えっ」っと小さく声をあげたものの、そのまま蓮にしがみついていた。

(今日はお祭りだしいいよね?)

自分でもよくわからない言い訳をしてカップがとまっても肩を抱かれたままで降りた。