火曜日は蓮のアパートで夕食をともにし、1週間分の食事の準備。
木曜日はキョーコの家でジュリ時々プラスボブで食事をする。
日曜日はショッピング、ドライブ、レディに会いに行くなどして出かけるのがキョーコの予定になった。
ロケやアルマンディの撮影などで泊まりがけや深夜にならない限り、蓮もこのスケジュールをきっちり守っていた。
アルマンディの撮影を終えた木曜日。
キョーコの家にやってきた蓮はボブの車が停まっていたので、いつもより遠くに車を停めた。
玄関のドアが開き、ボブが出てきた。その後からジュリも顔を出し熱烈な見送りのキスをする。
いつみても仲がいいな、いつになったらあんな風になれるのだろうなんて思いながら蓮は近づいていった。
いつのまにか、ジュリの後ろからキョーコも顔を出している。
さよならの挨拶をしているのだろうキョーコの頬にボブがキスをしたと思うと車で走り去って行った。
キョーコは真っ赤になって抗議しているようだが、怒っているというよりも恥ずかしいのが先にたっているようだった。
そのキスはアメリカ人なら普通にする挨拶のキスだったが、いかんせんキスを受けたのが大魔王の想い人
そのヒトである。大魔王は黒いオーラを出しながら玄関に近づいて行った。
そのオーラを感知したキョーコとジュリが蓮の方を向く。
(なっ、なんか久しぶりなんですけど...。このオーラ。
まだ挨拶さえしていないのに、何故???)
(あ~あ見ちゃったのね?今のキス。だから、やめなさいって言ってあったのに。
下心はないんだけど、ボブったら...。どうしたものかしら?)
「あら、蓮。いらっしゃい。食事の用意はしてあるわよ。
私は急用を思い出したからでかけるわね。」
(えっ?用事?用事ってなに?聞いてない!
ジュリったらズルイ!!こんな魔王様を置いて一人で逃げるなんて!)
大魔王状態の蓮を置いて一人で逃げ出そうとするジュリに
キョーコは『いかないで』と必死にアイコンタクトを送るが
ジュリはそれを無視してそそくさと出かけてしまった。
出がけに小さく「幸運を祈るわ」とキョーコの耳元で囁いて。
「さて、入ってもいいのかな?
食事、用意してくれているんだろう?」
ぎこちないまま食事を終え食後のコーヒーを出しながら
キョーコは恐る恐る尋ねた。
「あのぉ、何をお怒りなんでしょうか...?」
「怒ってるわけではないよ。君には怒られる心当たりがあるのかな?
ただ、いつもいうように君は無防備すぎるから気をつけないとと思っていただけだよ。」
何を無防備だといわれているのかわからないキョーコは眉を寄せる。
疑問符を浮かべるキョーコに蓮は益々憤りを隠せなかった。
「さっきのキスだよ。
ボブはジュリの恋人だからいいようなものの、中には不埒な輩もいるって自覚しないと。」
「あのぅ、お言葉を返すようですが、ここはアメリカですし、あれは挨拶かと...。
それに、私目などにそのようなことを考えるモノ好きはいないかと...。」
暫く無言でキョーコをみていたが、
「挨拶ね~。まぁ隙をみせないようにね。」と不意に表情を緩めた。
「はいっ!気をつけます!!」
敬礼しながら割と早めにお許しが出て、キョーコは安堵した。
そこへ買い物袋を抱えたジュリが帰ってきた。
「ただいま~。掘り出し物があったのぉ!」
「お帰りなさい。」
「それはよかったですね。俺はそろそろ帰ります。」
玄関へ向かう蓮を見送りにキョーコもついていく。
「お休みなさい。運転気をつけてくださいね。」
「あぁ、ありがとう。お休み。」
蓮は口許に笑みを浮かべると、キョーコの肩に手を置き首を傾げて頬にキスをした。
チュッ
(???)
瞳を見開いて固まるキョーコに、膝を屈め視線を合わせると
「ここねっ」と自分の頬を指さす。
暫くしてようやくキスされたことを理解し始めたのかキョーコはみるみる赤くなっていった。
「ここって?」
「ん?だからお返しのキス。」
ニコリと笑む蓮にキョーコは後ずさりしながら答える。
「何をいってるんですか?!」
「ここはアメリカだからね。お返しのキス。ここね。」
キョーコが後ずさりしたぶん、歩を前へ進め再び頬を指す。
「だから、何言ってるんですか。日本人はそんなことしないんです!」
「さっきボブとはしてたじゃないか。」
「あっあれは、したんじゃなくてされたんです。」
「俺からじゃいやなんだ...。」
蓮はこれみよがしに肩をガックリと落としてみせる。
「そんな...。つる、...蓮がイヤとかじゃなくて...。」
「じゃあ、お返し!」
似非紳士スマイルで頬を更に寄せて脅しをかける。
キョーコが意を決して蓮の頬にキスをすると、
蓮は「お休み」と言ってキョーコの額にキスをして出て行った。
残されたキョーコは思考停止状態で玄関に立ったままでいたため
ジュリに促されリビングのソファーに座らされた。
(この二人ってコント?小学生だってもっと進んでるわよ?)
固まったままのキョーコを見ながらジュリはため息をついていた。