翌日、キョーコが撮影を終えてスタジオから出てくると久遠は同じ場所にいた。

久遠の姿を確認すると、小さくため息をついてから声をかける。


「久遠さん。こんばんは。」

「こんばんは。キョーコちゃん。」

「なんで、毎日迎えにくるの?」

「迷惑?」

「そういうことじゃなくて!」

「こっちは物騒だからね。まぁ、要は俺が迎えに来たいからなんだけど。」

「この間から、久遠さんの『要は』は全然訳になってません!!」

「まっ、いいから。今日は何を食べる?」

「ふぅ。もういいです。今日は私が作るから。家で食べましょ?」

「ホント?作ってくれるの?」


久遠の運転でキョーコの家まで行った。

家には明かりがついており、玄関の鍵を開けるとキョーコは「ただいま」と奥へ声をかける。

奥からは「お帰り~」と低い声が聞こえた。キョーコは久遠をリビングへ案内するとソファに座るジュリを紹介した。

「久遠さん、こちらはルームメイトのジュリ。

ジュリ、こちらは久遠さん。お世話になった先生の息子さんなの。」

「どうも。こちらが『妖精』さんね?」

ジュリが右手を出したので久遠も右手を出し握手をした。

「クス。すみません。翅はないんですけど。」

「も~!そういう風にみえたんだからしょうがないでしょ。

今は『ヒト』だって、ちゃんとわかってます!ホントの『妖精』さんはそんな意地悪じゃないから!

夕飯の支度してきますっ!」

キョーコは「!」を連発してジュリと久遠をリビングに残しキッチンへと消えた。

残されたジュリにじっと見られ、久遠は嫌な汗が背中を伝うのを感じたが表面は冷静を装う。

「まぁ、座ったら?」

ジュリに勧められてソファーに座った。

「すみません。突然押し掛けてしまって...。ご迷惑ではなかったですか?」

「大丈夫よ。気にしないで。『妖精』さんには会ってみたかったの。

なるほどねぇ。で、『手順』を踏む気になったのかしら?」

「それはどういう?」

「いいのよ。隠さなくても。」

「は~。わかりますか?」

「そりゃあ...ね?これでもヒトを見る目はあるのよ。」

「そうみたいですね。クス。」

「で?」

「えぇ。自分なりにケジメもつきましたから、もう待ってられません。

まずは、本当の自分を知ってもらおうかと思っています。」

決意を込めた強い目で言われ、ジュリはそれまでの険しい表情を緩めて笑った。

「そう。ならいいわ。私は何も言わない。でも、何度も言うけど泣かせたらタダじゃおかないわよ?」

「もちろんです。」


「できたよ~。」

キョーコの声がして、二人はダイニングに移動した。

その日は3人で楽しく食事をした。