キョーコは一晩だけのつもりだったが、結局3日も泊めてもらってしまった。
いよいよ、明日から撮影再開という日になりお暇することにした。
久遠が送ってくれることになった。
「こっちにはどの位いるの?」
「いつも3カ月くらい。でも、1週間お休みだったから少し伸びるかも...」
「そうか。休みは何してるの?」
「う~ん。お掃除とかお洗濯とか...。乗馬...とか...」
久遠は何も言わずにハンドルを握ったまま視線をキョーコに向け続きを促す。
その視線に何か話さなければと思い、慌てて付け足す。
(私が乗馬っておかしいわよね?)
「あっ、私の日本での先輩がこちらでもお仕事をされていて...。
こっちでの仕事の時期が一緒になったときに連れて行ってくれたの。
もう、それはそれはその子がかわいくて。『一人で行っても大丈夫だよっ』て言ってくださって...。
それからは一人でも牧場に行かせてもらって...。」
そこで急に声を落として黙ってしまった。
「どうかした?」
「べっ別に...。あぁ、その子「レディ」って言うんだけど、どうしてるかなと思って...。」
(本当は、敦賀さんのことを思い出したんだけど...)
「そんなにかわいいなら今度会いに行く?」
「えっ、えぇ、そのうちに...」
(今はレディには会いたくないかな。敦賀さんのこと思い出しちゃうから...。)
「そう?じゃあ、そのうちにね。」
その後は、乗馬もいいけど、マリンスポーツやトレッキングもいい場所があるし
興味があるならスカイダイビングもできるよなんて話で盛り上がっているうちに家に着いた。
家に入るまで何があるか分からないからと車から降りてついてきてくれた。
ズキッツ
(こんなところは敦賀さんに似てる...。久遠さんもフェミニストなんだ。)
玄関の鍵を開けるキョーコの背中越しに久遠が尋ねる。
「明日は何時あがり?」
「明日?多分、20時かな。未成年が多いからあんまり遅くまでやらないみたい...。」
「スタジオはどこ?」
「○×スタジオの17番だけど?どうして?」
「じゃぁ、20時に門で待ってるよ。お休み。」
チュッ
「???」
頬にキスをすると、固まってしまったキョーコの背中を押し家の中へ入れると
ドアを閉めて「ほら、鍵をかけて。」と声をかける。
キョーコは思考停止状態で言われたままに鍵をかける。
鍵のかかる音を確認した久遠は「また明日ね。」と車へ戻って行った。
キョーコは玄関に突っ立ったままでいたが
暫くしてキスされたことを理解すると真っ赤になった。
(また、キスされた!!)
※馬の「レディ」は私のオリジナルで、蓮が連れて行ってくれた牧場の馬という設定です。