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    農 林 水 産 省 メ ー ル マ ガ ジ ン

                      21・1・1 新春号

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   年頭所感

                  農林水産大臣 石破 茂

 明けましておめでとうございます。
 平成二十一年の輝かしい新春を迎え、皆様の御健勝をお祈りいた
しますとともに、農林水産行政の責任者として、所感の一端を申し
述べ、年頭の御挨拶とさせていただきます。

 私は、これまで農林水産政務次官、農林水産総括政務次官などの
職を務めてまいりましたが、昨年九月に農林水産大臣を拝命し、八
年振りに、農林水産政策に携わることとなりました。新年に当たり、
任務の重大さを改めて認識し、初心に戻って、懸命に職務にまい進
しようと、決意を新たにしているところであります。

 率直に申し上げて、まさしく我が国の農林水産業は存亡の危機に
あると感じております。生産額は減少の一途を辿り、就業者の高齢
化は極めて深刻な状況にあります。農地や山林の荒廃、漁業資源の
深刻な状況、そして農山漁村の疲弊は目を覆うばかりと言う他はあ
りません。私はその場凌ぎの対症療法的政策に堕することなく、人
気取りに走ることなく、政策を根本から総点検し、過てる点があれ
ばそれを正す勇気と、消費者を含めた国民全体に真実を語る誠意を
持って職責を果たしたいと決意しております。我々は次の時代に責
任を持たなくてはなりません。残された時間は極めて短く、選択の
幅は決して広くないと考えております。

 世界の金融資本市場の危機に伴い、我が国経済は雇用情勢が急速
に悪化しつつあります。
 こうした中、昨年末に「生活防衛のための緊急対策」が取りまと
められ、雇用機会の確保のための各般の対策が盛り込まれたところ
ですが、農林水産省としても、農林漁業の各分野において就業希望
者に対する相談会の開催や技術取得等のための研修を実施して、農
林漁業への新規就業を強力に促進するほか、公共事業の実施を通じ
た雇用機会の確保や厚生労働省が実施する「ふるさと雇用再生特別
交付金」や「緊急雇用創出事業」の農林漁業分野における活用等に
取り組むこととしております。
こうした取組を円滑に進める観点から、本省、地方農政局、地方
農政事務所等の各段階で、「農山漁村雇用相談窓口」を設置したと
ころであり、雇用に不安を抱える方々に早く安心していただけるよ
うに農林水産省あげてサポートをして参りたいと考えております。

 また、昨年十二月、新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向
けた検討の開始を発表致しました。国民に安心を、農業者に希望を
もたらす新しい農政を展開するため、新たな視点から現行基本計画
を見直していきたいと考えております。見直しの開始に当たっては、
国民の皆様から御意見・御要望を募集するほか、農林水産省の幹部
や担当者が現場に出向くなど、消費者や生産者の生の声を聞いた上
で、検討すべき項目を整理し、今月末を目途に食料・農業・農村政
策審議会に諮問を行うこととしております。
 以上のように、本年は、省をあげて基本計画の見直しに取り組ん
でいくこととなりますが、当面する農林水産行政の主な課題と取組
の方針を大きく八点に分けて申し述べます。

 第一に、事故米穀の不正規流通問題です。
 昨年十一月、内閣府に設置された「事故米穀の不正規流通問題に
関する有識者会議」における調査結果報告書の取りまとめを受け、
今回の問題に責任のある関係職員に対する厳正な処分を行ったとこ
ろであります。一方、既に、事故米穀を今後二度と流通させること
のないよう、輸入検疫で食品衛生法上の問題があるとされた場合は
輸出国等への返送・廃棄を行うなどの再発防止策を講じるとともに、
流通米ルートについて解明できるものはすべて解明を終えたところ
であり、消費者の方々に御心配をおかけする状況はなくなったもの
と考えております。
 また、今般の事故米穀の問題を契機として、消費者の食の安全の
確保に資する観点から、米のトレーサビリティや米関連商品の原料
原産地情報伝達を含めた米流通システムを見直すこととしており、
昨年十一月末に「米流通システム検討会」において取りまとめられ
た骨格に沿って、通常国会に関連法案等を提出できるよう準備を進
めてまいります。
 昨年十一月末には、省内課長クラスを中心とした農林水産省改革
チームによる「農林水産省改革のための緊急提言」が取りまとめら
れ、政策決定プロセスの改革、リスク管理及び危機管理の改革、人
事改革を含む国民視点での組織運営やそれらを実現するために必要
となる機構改革などについて提言されました。国民の皆様の信頼を
回復するため、本提言に基づき、農林水産省の業務・組織について
自ら痛みを伴う改革を進めて参る決意です。

 第二に、食品の安全と消費者の信頼の確保です。
 「食」は「いのち」を支える源であり、生活の基本です。食の安
全をゆるがす事案が相次ぎ、国民の不安が高まっていることから、
食の安全を最優先に、農場から食卓まで、その確保に努めてまいり
ます。
 また、食品表示Gメンによる不適正表示の監視・取締りや、食品
の製造・流通等に携わる企業の法令遵守を徹底するなど、消費者の
視点を大切にして、関係省庁と連携を図りながら消費者の信頼確保
に努めてまいります。

 第三に、我が国の食料自給力の強化です。
 食料の多くを海外に依存している我が国において、将来にわたっ
て国民への食料の安定供給を確保するためには、食料自給力を強化
し、現在カロリーベースで四十パーセントである食料自給率を向上
させることが必要であります。この際特に強く留意すべきなのは、
農地・農業用水、農業者、技術といった食料自給力を構成する個々
の要素につき現状を分析し、実効ある対策を講じることにより我が
国の食料自給力を強化することであり、その結果として自給率の向
上が図られるものと考えております。
 最も基礎的な生産基盤である農地については、農地面積の減少や
耕作放棄地の増加等の深刻な課題に対応して、転用規制の強化によ
る優良農地の確保、貸借を通じた農地の有効利用や意欲ある者への
面的集積の促進など、「平成の農地改革」の具体化に取り組んでま
いります。また、農村の資源の保全向上に関する地域全体での共同
活動への支援や農業用用排水施設の計画的かつ効率的な整備による
安定的な用水供給機能の確保により、農業水利を中心とする農業を
支える基盤の保全に取り組んでまいります。
 戦後我が国農業を支えてきた昭和一桁世代の方々が今後リタイア
されることを考えれば、地域農業の先頭に立つ熱意のある農業経営
者の育成が急務であります。このため、水田・畑作経営所得安定対
策を始めとした担い手支援策を着実に推進するとともに、農業法人
等が農業技術・経営ノウハウを習得させるための実践研修を推進す
ることにより、農業分野への新規就農を促進してまいります。
 また、本年を「水田フル活用」への転換元年と位置付け、連作障
害がなく半永久的に使い続けることが可能な、我が国の貴重な食料
生産装置である水田をフル活用し、自給率の低い麦・大豆や飼料作
物の生産拡大を図るとともに、米粉用、飼料用等の新規需要米の本
格生産に取り組みます。
 これらの対策に加え、我が国の食料自給力の向上を目指すに当た
っては、国民全体で食料問題に関する認識を共有し、消費者、生産
者、企業、行政等が一体となって国産農産物の消費拡大等に取り組
むことが必要であり、食料自給力向上に向けた国民運動「フードア
クション・ニッポン」を積極的に支援してまいります。

 第四に、地域の再生に向けた農山漁村活性化対策の展開です。
 地域格差の問題が深刻化している中、農山漁村を活性化し、疲弊
した地域を再生していくことが喫緊の課題であります。
 農山漁村の活性化を図るに当たっては、地域経済の中核である農
林水産業と食品産業等が産業の壁を超えて連携し、新たな雇用を創
出することが重要です。「農商工連携」を旗印に、それぞれの貴重
なノウハウや技術を持ち寄り、戦略的にマーケットを開拓するチャ
レンジを支援するほか、農山漁村における創意工夫を活かした事業
の展開による雇用創出を図ってまいります。更に、地域のリーダー
となる「人材の育成」、地域資源の保全・活用を通じた「農山漁村
集落の再生」、街中商店街を始めとする農産物直売所の設置への支
援等による「地域経済の活性化」などを通じ、農山漁村の活性化を
図ってまいります。

 第五に、国際交渉等への戦略的な対応です。
 現下の厳しい経済状況下において、保護主義に抗していくため、
輸出制限を含む貿易・投資面での新たな障壁の自粛について各国に
呼びかけてまいります。また、今後のWTO交渉においては、引き
続き、「多様な農業の共存」を理念として、議論に積極的に参画し、
将来の我が国の農業のために何が必要かを十分踏まえながら、食料
輸入国としての我が国の主張ができる限り反映されるよう、戦略的
に交渉に取り組んでまいります。一方、日豪を始めとしたEPA交
渉については、我が国全体としての経済上・外交上の利益を考慮し、
「守るべきものはしっかりと守る」との方針の下、食料安全保障や
国内農業の構造改革の進捗状況にも留意しつつ、政府一体となって
取り組んでまいります。
 おいしくて安全な日本食材の輸出の拡大は、「攻めの農林水産業
」の一環として農林漁業者の経営安定や地域経済の活性化ばかりで
なく、日本の豊かな食文化の海外発信にも寄与するものです。我が

の農林水産物・食品の輸出額を平成二十五年までに一兆円規模に倍
増することを目指し、輸出環境の整備や農林漁業者等の輸出への「
意欲」を「実際の輸出」に結びつけられるような支援を行ってまい
ります

 第六に、地球環境保全に対する積極的な貢献です。 
 地球温暖化の進行により農業生産への影響が懸念されるなど、地
球環境問題は農林水産業にも密接に関連しており、農林水産業の持
続的発展を図るに当たっては、その自然循環機能の維持増進を図り、
環境との調和や生物多様性の保全に十分配慮することが必要です。
 京都議定書に基づく温室効果ガスの六%削減約束の達成に向け、
「美しい森林づくり」を国民的な運動として展開し、間伐等の森林
の整備・保全による森林吸収源対策を着実に推進するとともに、農
地土壌の温室効果ガスの吸収源としての機能の向上など新たな削減
策に取り組んでまいります。
 また、稲わらや間伐材などを活用し、食料供給と両立できる持続
可能なバイオ燃料の生産に取り組みます。
 
 第七に、森林・林業政策の推進です。
 安定供給可能な資源としての国産材への期待の高まりや低炭素社
会実現の要請など、森林・林業をめぐる情勢が大きく変化しており
ます。森林の恩恵を将来にわたって享受できるよう、国民のニーズ
を捉えた多様で健全な森林づくり、国民の安全・安心の確保のため
の治山対策を推進するとともに、林業の担い手の育成・確保を図り
ます。さらに、「長期優良住宅」いわゆる「二百年住宅」への国産
材利用を進め、国産材住宅に関するワンストップ相談窓口の創設な
どによる国産材生産と家づくりのマッチングや、川上と川下の連携
を図り、林業・木材産業を再生させます。

 第八に、水産政策の展開です。
 我が国の水産業は、資源の深刻な状況、漁業生産量の低下や、漁
業者の減少・高齢化や漁船の老朽化等による漁業生産構造の脆弱化
などにより、大変厳しい状況に置かれております。
 水産資源の回復・管理を推進し、我が国の魚食文化を支える豊か
な海を取り戻すとともに、安くて新鮮な水産物の消費者への直接販
売による漁業者の手取りの向上、将来にわたる漁業の担い手の育成
等に取り組むことにより、国民に対する水産物の安定供給、力強い
水産業と豊かで活力ある漁村の確立を図ります。

 以上、年頭に当たり、今後の政策展開を中心に私の所感の一端を
申し述べました。
 農林水産業は、国の「基」であり、「いのち」の源であります。
冒頭に申し上げたとおり、我が国農林水産業は存亡の危機にありま
すが、同時に、限りない潜在力を秘めた我が国に残された数少ない
成長産業でもあります。この発展は、日本のみならず、世界に向け
て我が国が果たすべき責任でもあると信じます。政策の展開に当た
っては、国民の納得感とスピード感を大切にして取り組むことによ
り、一人一人の消費者、生産者、国民から評価され、世界にも通用
する農林水産政策の樹立に向けた端緒を開きたいと決意しておりま
す。
 最後になりますが、今般の事故米穀の不正規流通問題を契機に、
農林水産省は、国民からの負託に応え、果たすべき役割を実現でき
る組織へ変わらなければならないとの想いを強く抱いております。
真に、国民・消費者の視点に立った農林水産行政を展開できるよう
全力で農林水産省改革にまい進していく所存ですので、御支援と御
協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 平成二十一年一月

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